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リニア新幹線を巡り問われる関西財界のリーダーシップ

ニュースレポート

 東京〜大阪間を67分で結ぶリニア中央新幹線の建設が今年10月に着工した。東京〜名古屋間は2027年、名古屋〜大阪間は45年開業という2段階方式。関西政財界はあくまで全線同時開業を要望するが、ルートをめぐり奈良県と京都府が熾烈な誘致競争を展開中だ。

リニア新幹線の経済効果は絶大 

 「名古屋までの開業と大阪までの同時開業の経済効果で比較すれば、約6兆円の差だとの調査結果が出ているが、実際はその2、3倍になる。さらに羽田〜伊丹間の空の利用者がリニア新幹線に移り、地方の活性化にもつながる」

 今年7月に開かれた、「リニア中央新幹線全線同時開業推進協議会」の設立総会と推進大会において、来賓として挨拶した自民党のリニア鉄道に関する特別委員会の竹本直一委員長の言葉だ。関西経済連合会は大阪府などと「あくまで同時開業」を主張することを確認した。

 関経連の辻卓史リニア担当委員長(鴻池運輸会長)も「早期整備の文言が〝アベノミクス〟の成長戦略に盛り込まれた。その意義は大きい。今後の決め手は地元の熱意だ。沿線自治体、地元住民に理解を深め気運を高めるため全力で臨みたい」と追い打ちをかける。

 また、同時開業のメリットとして、建設が進めば2020年の東京オリンピック後の国内投資が継続され新たな投資につながる。何よりも「開通によって約6千万人の人口を擁する新たなメガエリアが誕生し新たな投資が期待できる」との見方も多い。

 JR東海が着工に踏み切ったが、東京・品川〜名古屋間の開業は27年。その後10年間の空白期間を設定して環境アセスメントなどを行い、名古屋〜大阪間の着工は37年となる。それから8年後の45年に全線開業するという計画だ。

 総事業費は、約9兆300億円を見込み工事費が約8兆3千億円、車両費が約7300億円という内訳。JR東海は自前の調達資金で賄うというのが基本的な考えだ。借入金などの金利負担などを軽くするために、大阪までの工事に10年間の空白期間を置いているのは、名古屋まで開通後の収入や金利負担軽減などを考慮に入れての判断だ。

 東京〜大阪間のうち、名古屋〜大阪間の費用は約3・5兆円といわれ、全線同時開業となると、関西政財界が援助、負担するケースも当然、想定される。しかし、その場合「関西空港の前例からも明らかで、国から何らかの援助を受けるなどの仕組みが必要となってくる」と、ある財界人は話す。

 橋下徹・大阪市長は「同時開業が必要なことは明らか。資金については、国交省予算の範囲外から資金を用意すればよい。例えば、大阪市営地下鉄を民営化し市場価値を与えることで、これを担保に資金を創出することも方法だろう」と語る。

京都ルートを意識する関西財界

 現在、検討されているルートは京都府を経由していない。そこで、京都府、京都市は協議会などを作り、国とJR東海に再考を働き掛けることを発表し、関西の府県などが加盟している関西広域連合(連合長・井戸敏三兵庫県知事)でも議題となった。

 京都ルートによる経済波及効果、観光客などの乗客数は奈良ルートを上回ると京都府と京都市は主張する。それによると京都駅ルートでは年間810億円の経済波及に対して、奈良市付近ルートでは半分の420億円。首都圏からの乗客数では京都駅ルートが年間1200万人に対して奈良付近ルートでは同300万人だとしている。

 さらに、関西広域連合は「大阪までの早期開通、できれば同時開通」との中途半端な表現をしている。関西広域連合に唯一加盟していない奈良県と対立する京都を意識しての発言で、関西の複雑な一面を象徴している。

 一方、基本計画当初から経由地に挙げられていたのが「奈良市付近」。着工が発表されてから、奈良県北部に位置する奈良、生駒、大和郡山の各市で3市の誘致の駆け引きは激化。荒井正吾・奈良県知事は「まだ時間がある」と絞り込んではいないが、3市の中では荒井知事の出身地である大和郡山市に周辺市町村が同調の動きをみせる一方で、知事と肌合いのよくない奈良市や生駒市とは距離が遠のいている。

ルートに入った生駒市では「リニア新幹線誘致」の立て看板などが目立つ(高山地区)

ルートに入った生駒市では「リニア新幹線誘致」の立て看板などが目立つ(高山地区)

 全額自己資金で建設することや東京〜名古屋、名古屋〜大阪の2段階方式で建設するという内容をJR東海が発表したのが7年前の07年12月だ。これに対して、関西財界などが具体的に反応したのは昨年12月の「同時開業を求める決起大会」。そして今年7月の推進協議会の設立の流れをとるが、「最初の情報戦でやられた。その後の巻き返しもできなかったことは大きい」と元関経連の役員は言う。

 また、この件について、経済界を束ねている関経連の森詳介会長の出身企業が関西電力ということから、原発問題で経産省からの指導があり動きづらいということ、さらには関西経済界が、維新の会の松井一郎・大阪府知事、橋下大阪市長などと必ずしもしっくりいっておらず「行政と経済界の微妙な関係が影響している」との憶測が飛び交っている。〝談論風発〟を重んじる関西財界からすれば残念なことだ。

 20年の東京オリンピック開催の決定で、一段と関西の低迷が懸念される中、森関経連会長や佐藤茂雄・大阪商工会議所会頭のリーダーシップが問われている。こんな時期だからこそ、関西財界の存在価値を示す絶好の機会となるはずだが、果たしてどうなるか。

(文=ジャーナリスト/宮城健一)

 
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