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シャープの面目躍如、中小型液晶が回復を牽引

ニュースレポート

 経営再建の途上にあるシャープだが、髙橋興三社長就任以降の構造改革が着実に進展。2014年度上期の業績は期初予想を下回ったものの4年ぶりに最終黒字を達成した。その中でも液晶事業は構造転換に成功し、成長市場の波に乗る形で業績回復に大きく貢献している。

中小型液晶がシャープの営業利益の大半を叩き出す

 液晶のシャープは、やはり液晶のシャープだった。

 シャープは2014年度中間期の決算を発表。売り上げ、利益ともに期初の予想を下回ったが、経常利益が前年同期比で大幅に改善し、純損益は4年ぶりに黒字転換を果たした。

 収益面で特筆すべきは、上期の営業利益292億円のうち、液晶事業の営業利益は208億円で、そのほとんどを中小型液晶が叩き出していることだ。

髙橋興三・シャープ社長

髙橋興三・シャープ社長

 シャープの液晶事業と言うと、かつてはテレビ向けの大型液晶に傾倒し、堺工場(大阪府)の大型投資が失敗したことで経営状態を悪化させた。

 このため、13年度以降は中小型液晶事業を柱とした構造改革を推進してきた。上期の液晶事業の売上高の内訳は中小型液晶が70%、大型液晶が30%。下期は中小型液晶が75%にまで拡大するという。

 現在の中小型液晶の需要はスマートフォンやタブレットが牽引しているが、民生機器向け液晶への偏重は一見すると、テレビ向けの大型液晶の轍を踏むとの危惧がある。しかし、デバイスグループを統括する方志教和専務は「大型液晶と中小型液晶とは全く世界観が違う」とそうした見方を一蹴する。

 大型液晶ではパネル自体に付加価値が生まれにくく技術面で海外メーカーにキャッチアップされ価格勝負に陥り、収益が悪化した。中小型液晶でもスマホやタブレットの普及に伴い価格下落は起こっているが、大型液晶に比べて付加価値で勝負できる余地が大きく、単に同じ状況にはならないという。

 付加価値については、高精細のフルHDの中小型液晶を供給できるのは現在、シャープとジャパンディスプレイと韓国LG Displayの3社のみ。しばらくは3社の優位性が続く見込みだ。高精細以外の付加価値として、タッチパネル性能やデザイン性能の向上などで競争力を高めている。

 シャープでは、「フリードローイング」と称するタッチパネル技術を開発。また、狭額縁フレームレスパネルを自社のスマホ「AQUOS CRYSTAL」に搭載している。

 シャープでは今後も先行して開発を進め、中小型液晶の付加価値を高めていく構えだ。「IGZO」に加え、「MEMSディスプレイ」や「フリーフォームディスプレイ」など独自技術の開発を進めている。

中国市場の拡大がシャープの液晶事業の追い風に

 中小型液晶事業の成長には、追い風も吹いた。その1つが中国市場の拡大だ。

 シャープは大型液晶の失敗の1つに大手の顧客に偏重し過ぎ市場の変動性のリスクが高かったことを挙げる。このため、中小型液晶へシフトしていくに当たり、顧客ベースを増やし変動性を希釈させている。

 成長する中国市場への展開も顧客ベースを拡大し、スマホ用液晶の中国メーカーは14年度上期の8社から下期には15社に拡大する。さらに中国で15年に発売を予定している25機種への供給を交渉中で、交渉がまとまれば1〜3月期の売り上げに計上され、通期の業績を押し上げる可能性がある。

 中国メーカーの特徴として、新興メーカーは競争優位性を求めるため、高精細パネルやIGZOの導入にも積極的だという。

 シャープでは新興メーカーをターゲットの1つととらえ展開している。その中の1つ、小米科技(シャオミ)とは小さなメーカーの頃からアプローチし一緒に伸びてきた。中国市場にはさまざまなリスクが懸念されるが、今のところシャープは最先端デバイスを求める新興メーカーの成長の波にうまく乗っている。

 もう1つの成長要因が、シャープだけが量産化に成功しているIGZO技術だ。IGZOは従来の液晶パネルより消費電力を抑えることが長所。IGZOを搭載したスマホは低消費電力が強みとなっている。

 IGZOの量産化にあたり、シャープでは亀山第2工場(三重県)の製造ラインをテレビ用の大型液晶用から中小型液晶用に転換した。

 亀山第2工場はテレビ用に導入した第8世代の大型パネルで製造する。大型基板から中小型液晶パネルを作り込むことにシャープの技術力が生きるが、これがコストダウンにつながる。

 「亀山第2を中小型にしていったのは今までのところ正解だった」と髙橋興三社長は語る。さらにIGZOの生産は既存設備の改造で対応できるため、「1桁少ない投資で済む」(方志専務)という。

 さらにIGZOでは高精細化の技術開発が進んでいる。シャープは高精細用途は独自のLTPS(低温ポリシリコンパネル)の「CGシリコン」、低消費電力用途でボリュームゾーンに近い領域をIGZOと考えていた。  

 しかし今回IGZOがLTPSに匹敵する700ppi以上の高精細を実現。これにより、低コストのIGZOで高精細の需要を取り込むことができる。現在、中小型液晶に占めるIGZOの比率は50%で、まだまだ拡大の余地がある。

 IGZOはコスト・性能の両面でシャープの業績回復に大きく貢献している。シャープではIGZOの潜在能力を高く評価し期待を寄せる。IGZOをはじめ付加価値技術をいかに発展・実用化できるかが、今後のシャープの鍵を握っている。

(文=本誌/村田晋一郎)

 

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