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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

空前の大型上場が相次いだ1年

リクルートホールディングス社長 峰岸真澄氏

 2014年はアベノミクス第3の矢への期待感に始まり、成長戦略として女性活用や地方活性化、観光といった分野で進展が見られた。その一方で4月の消費税増税による需要の冷え込みが景気回復にブレーキを踏む形になり、再増税の判断を遅らせる事態となっている。本企画では7つの経済問題のキーワードに関して、本誌に登場した経営者の言葉を取り上げ、その言葉の背景と現在の動向を踏まえ、1年を振り返ってみる。

 西武ホールディングス、ジャパンディスプレイ、リクルートホールディングス、すかいらーくと、2014年の株式市場は大型上場ラッシュに沸いた。時価総額2兆円を達成したリクルートには注目が集まる一方で、LINEが上場直前で延期を発表するというハプニングも。10月末の日銀によるサプライズ金融緩和によって足下では株式市場が賑わっているが、来年以降は果たしてどうなるか。

上場後躍進した西武HD伸び悩むすかいらーく

 2014年の株式市場は、IPO件数の増加とともに、その内容においても投資家の関心を惹きつけるものだった。

 まずは、一度上場廃止した西武ホールディングス、すかいらーくといった復活組。西武については上場前の目論見書の記載価格2300円を大きく割る1600円の売り出し価格となったが、上場後は一度も公開価格を下回ることなく堅調に推移した。電鉄銘柄は収益性が低いと見られていたが、同社が保有する不動産資産が外国人投資家などの関心を惹きつけ、予想以上の伸びを見せた。

 すかいらーくに関しては、3期連続黒字と好調を維持する中での再上場となったが、将来に対する不透明感から、上場後もしばらく株価は伸び悩んだ。もともとは新規出店を拡大するビジネスモデルが行き詰まり、業績悪化で06年に上場を廃止、MBOによって再出発を果たした後は、既存店のリニューアルやメニューの絞り込みなどで地道に業績回復に取り組んできた。その成果が出て再上場までこぎ着けた格好だが、飲食業界を取り巻く環境の厳しさから、今後はどのような成長戦略を描くかが鍵と見られている。

 産業革新機構から出資を受け、日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶部門を統合して設立されたジャパンディスプレイも、今年前半の注目銘柄の1つだった。当初予定を前倒しして3月に上場したが、ディスプレー市場の急変の影響を受け、上場後の株価は低迷した。大塚周一社長は本誌のインタビューにおいて、「われわれもこんな状況になるとは夢にも思っていなかった」と苦しい心情を吐露。株主に対しては、少し長い目で見てほしいと語った。今後はタブレットPCの高精細化への対応や高感度のインセルタッチパネルなどに注力することで、競争力を高めていく考えだ。

大型株でも成長期待高いリクルート

 大型上場が相次いだ14年だが、最も注目されたのは、10月に東証1部上場を果たしたリクルートだろう。

峰岸真澄(リクルートホールディングス社長)

峰岸真澄(リクルートホールディングス社長)

 同社は10年以降、人材関連分野を中心に海外企業の買収を加速。上場はさらなるM&A戦略遂行に向けた財務の多様性確保や、グルーバル市場における信頼性の向上といった観点からも必要な決断だったようだ。

 上場当日は日経平均が大幅に下げる中で、公開価格3100円に対して初値は3170円、終値は3330円と順調なスタート。時価総額は約2兆円に達した。

 峰岸真澄社長が上場会見で述べたように、同社の目標は、「人材派遣業界でグローバルナンバーワンを目指す」こと。周辺事業の多さから、幅広い層の投資家が集まりやすい点や成長性の高さなどから、今後も躍進が期待される。

 そして、高い関心を集めながら、今年の上場延期を発表したのがLINEだ。その理由について同社は「資金調達に関しては現状特に問題がないため、タイミングを見直すことになった」とコメントを発表。アカウント乗っ取り事件などによってセキュリティー面での不安が露呈したり、グローバル市場におけるメッセンジャーアプリの競争激化が指摘される中での決定だけにさまざまな憶測を呼んでいるが、来年以降どのような動きを見せるか、注目されている。

日銀のサプライズ緩和で日経平均株価は1万7千円を超えた

日銀のサプライズ緩和で日経平均株価は1万7千円を超えた

 14年の話題を集めたこれら大型上場だが、発行株式数が多いため、初値が公開価格を下回るケースが多かった。13年は初値が公開価格を上回ったケースが全体の96%以上だったのに対し、14年は70%に落ち込んだ。いわゆる「IPO神話」が崩れたのは、大型上場が多かったことに加え、投資家による銘柄選別が厳しくなったことも理由だ。

 長い目で見れば、今後は大型上場が増える可能性がある。理由のひとつは、十分に売り上げ規模を拡大し、ベンチャーキャピタルなどから事業資金を確保しながらも、上場を先延ばしにする動きがIT企業などを中心に出始めたことだ。

2014年IPO企業一覧/出所:東京IPOの資料を基に本誌作成(2014年11月19日現在) 日本では特に、上場によるキャピタルゲイン確保や社会的信用性向上を目的に株式公開を急ぐ企業が多く、これが小粒な企業のIPOを数多く生む要因にもなっていた。

 しかし、有力な企業にとって資金調達環境は以前より良くなっており、必ずしも上場する必要がないケースや、経営の自由度維持に重きを置くシリコンバレー型の考え方を採る経営者が増えてきている。グローバル展開を果たした後で、満を持してIPOというケースもこれからは出てくるだろう。

 
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