米国との緊張高まりを覚悟したプーチン露大統領
2014年12月18日、ロシアのプーチン大統領は、3時間に及ぶ内外記者会見を行った。
〈ロシアは政治的意味で西側を攻撃してはおらず、自国の国益を守っているだけだ。プーチン大統領は18日、大記者会見でこう語った。大統領は、ロシアはいかなる攻撃的政策も行なっていないと述べている。/プーチン大統領は、ロシアがテロ上の危険対策として外国に有する軍事基地はキルギスとタジキスタンの事実上2カ所にすぎないと語り、ロシア空軍の戦略爆撃機については、飛行が開始されたのはわずか数年前であるのに対し、米軍機は警戒飛行をやめたことは一度もないと指摘した。/大統領は、米戦略爆撃機がロシアとの国境付近を飛行したため、ロシアはこれに対する報復として戦略爆撃機の飛行を再開したと語った。/プーチン大統領は、国防省予算は増大し、来年500億ドルになると強調する一方で、米国防総省予算は5750億ドルと指摘した。また、米国は東欧にミサイル防衛システムを展開し、ロシアに脅威をもたらしているとして、非難した。〉(14年12月18日、露国営ラジオ「ロシアの声」日本語版ウェブサイト)
西側を攻撃する意図はないと言いながら、米戦略爆撃機の飛行に対抗して、核兵器を搭載したロシアの戦略爆撃機を米国近くに飛ばすと宣言した。プーチンは、米国との緊張が強まることを覚悟している。
また、プーチンは、ロシア国内でディシデント(異論派、異分子)を弾圧しないと約束した。
〈ロシア政権は反体制者、政権の行動に同意しない者らの迫害を組織していない。プーチン大統領は18日、大記者会見でこう語った。/「公式的組織、(政権)組織の代表者の中でこれに従事する者は誰もいない。いかなる試みも指令も組織も決してなかったし、これからもない。いかなる迫害もいかなる人間に対しても一切行なわれていない。」/一方で大統領は、反体制派とは異なる世論の反応もありうるとして、次のように語っている。/「こうした立場に同意しない世論、市民らのなんらかの反応があるとすれば、今日、これと衝突する市民は、万人を非難する権利を手中に収めることはできないと理解せねばならない。そうした立場に賛同しない市民も存在し、彼らもまた非難の対象となりうる。」〉(同)
ディシデントの考えが、個人の内面にとどまる、ならば容認するが、ひとたび、デモや集会、さらに音楽のパフォーマンスなどになった場合には、関連法規を厳格に適用して厳しく対応するということだ。
プーチン露大統領は欧米との対決姿勢を鮮明に
さらにウクライナについても含みのあることを述べている。
〈プーチン大統領は、ウクライナ危機解決の方法は平和的調整以外ありえないと語った。大統領は18日、モスクワの大記者会見でこう語っている。/「われわれはウクライナにおける全体的政治空間も復元されることを念頭においている。それがどんなものになるかは、現時点では言い難い。」/大統領によれば、危機は「解決されねばならず、政治的手段を用い解決される。経済封鎖だろうが、軍事力行使だろうが、そういった圧力を講じてではない。」/大統領は、ロシアはウクライナ南部東部への支援を続けて行くと強調した。「しかしわれわれは国際法の基盤となる原則に依拠せねばならない。それは市民が自分自身の手で自身の運命を決めるという権利だ。私が平和復興は政治的手段で行なわねばならないといったのは、意味のない単なる文言ではない。」/プーチン大統領は、平和復興には「双方がこれに邁進せねばならず、ウクライナ南部東部に住む人々を敬わねばならない」と語った。〉(同)
さらにプーチン大統領は、ルーブル急落などロシア経済の悪化は、クリミア編入と関係ないことを強調した。
〈プーチン大統領は、ロシアの現在の困難な経済状況はクリミア編入への代償ではなく、民族、国家を守ろうとするロシアの希求への代価だとの見方を示した。大統領は18日、モスクワでの大記者会見でこう語った。/「これはクリミアへの報復ではない。われわれのごくふつうの願いである民族として文明として国家として自分を守ろうとすることへの代価だ。」/プーチン大統領はこれに関して、次のように強調している。/「ベルリンの壁崩壊、ソ連崩壊の後、われわれはパートナーらの前に完全に胸襟を開いた。」/「そして何を目にしただろうか? 北カフカスのテロリズムが直接的、大々的に支援されたではないか。パートナーはこんなことをするだろうか? この場で詳細につっこむ気はないが、これは事実であり、このことは万人が知っている。」〉(同)
米国、EUによる対露制裁は、クリミア併合を口実としただけで、ロシアを2度と超大国にしないようにする米国とEUが謀略を展開しているという見方を示している。この内外記者会見でプーチンは欧米との対決姿勢を鮮明にした。
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