媒体資料
経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「経済再生の道筋をしっかりつける年に」--榊原定征(経団連会長)

榊原定征氏

政治との連携を意識した半年間

榊原定征

榊原定征(さかきばら・さだゆき)
1943年生まれ。神奈川県出身。67年、名古屋大学大学院工学研究科応用化学専攻修士課程修了後、東洋レーヨン(現東レ)入社。94年経営企画室長、96年取締役、99年専務、2001年副社長、02年社長を経て、10年会長に就任。14年6月より経団連会長の職に就く。

 20年近く続いたデフレで国民の間にも閉そく感があったわけですが、アベノミクスが2年目に入り、将来に対して明るい展望が持てる時代になってきました。企業も長い間成長の確信が持てませんでしたが、将来に向けて自信が持てるようになってきました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックのような明るい話題もありますし、閉そく感から脱却できる糸口が見えてきたように思います。

 14年6月に、政府が打ち出した日本再興戦略の改訂版には、私自身も産業競争力会議のメンバーとして策定に加わりました。そこには、今までになかったような改革案が盛り込まれています。まさに、日本経済再生に向けて1つの大きな道筋がつけられたのではないかと思います。いくつかの岩盤規制の緩和に加え、法人実効税率についても5年間で20%まで引き下げるという、今まででは考えられない大きな方針が打ち出されることになり、非常に希望が持てる内容となっています。

 安倍政権の外交姿勢についても高く評価しています。首相は就任から2年弱で50カ国以上を歴訪されました。これにより、長い間低下していた日本の国際社会におけるプレゼンスが、高まっていることを実感しています。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についても、着実に議論は進展していますし、日豪や日EUで経済連携協定(EPA)が結ばれ、日中韓の自由貿易協定(FTA)も動き出すなど、企業がグローバルに活動するための基盤が整備されつつあります。

 これらの明るい話題がある一方で、デフレ脱却はまだ道半ばです。14年7〜9月のGDP成長率が年率マイナス1・9%だったことについては、在庫調整の影響が大きく実質的にはそれほど悪かったとは考えていません。それでも、最終消費支出の増加率が前期比1%以下でしたから、まだデフレ脱却には力強さが足りません。消費税の再増税が1年半延長されたことに関しては、デフレ脱却に向けた安倍首相の不退転の決意を示したものと受け止めています。

 14年は、人口減少と高齢化社会の本格的到来、財政の健全化、社会保障制度の持続可能性の問題、エネルギー問題、経常収支の赤字懸念など、非常に重要な政策課題が浮き彫りになった年でもありました。

 平時においては、われわれ経済界は政治とは一定の距離を置いて、お互い切磋琢磨しあうのが健全な姿ですが、今はデフレ脱却に向けた、いわば戦時でもありますから、経済と政治が一体となって、山積する課題を共同で解決することが必要です。

収益を上げた企業には賃上げを呼び掛ける

 14年がデフレ脱却の正念場だったとすれば、15年はまさに経済の好循環を引き起こし、消費を拡大して、経済再生の道筋をつける年だと思います。この目標に向けて、政府も日銀もわれわれも、相当思い切って行動していかなければなりません。

 日銀は14年10月に金融緩和の第2弾を実施しましたが、政府には思い切った消費刺激策を打ち出してほしいとお願いしています。低所得者や子育て世帯、中小企業や地方に手厚く、消費を拡大できるような施策を行ってほしいと思っています。

 経済界としても収益をしっかり上げて、その成果を雇用増加や賃金引き上げに向けていくことが大事です。賃上げは企業が独自の判断で決めることですし、業態や規模によって差はありますが、収益を上げた企業は、しっかり賃上げを行うべきということを、大きな方向性として呼び掛けていきたいと思います。

権限委譲と企業移転で地方の活性化を

 アベノミクス第1の矢である金融緩和と第2の矢である財政出動についてはきちんと実行できたと思いますが、第3の矢である成長戦略については、政策はきちんと立てたので、しっかりと実行することが重要です。

 規制緩和については、日本再興戦略の中に相当盛り込まれていますが、まだまだ足りません。例えば労働法制についても、これまでいろんな規制があって企業は本当に動けませんでした。われわれとしては、労働者の報酬を労働時間ではなく成果で評価する制度の導入をずっと主張し続けて、ようやく実現することになりました。細かい制度設計はこれからですが、状況が動き始めたことを実感しています。

 地方活性化については、14年9月に「首相官邸まち・ひと・しごと創生本部」ができて、11月に活動の基本理念である「まち・ひと・しごと創生法」がつくられました。地方経済の活性化は最優先課題と安倍首相も仰っているので、非常に期待しています。地方は中央に比べて経済再生が遅れていて、円安のマイナス影響も大きい。しかし、地方にしっかり目配りをして、財政やその他の政策的な権限を与えれば、いろんなことができると思います。

 現在、大企業の本社は東京に集中しているので、地方に移転してほしいという話が頻繁に出てきます。中央官庁に集中しているさまざまな権限を地方に委譲したり、地方に本社や拠点を置けば税制面で優遇されるといった政策を思い切って実行してほしいと考えています。(談)

(文=本誌編集長/吉田 浩 写真=森モーリー鷹博)

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る