媒体資料
経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

人類の生命を救うエレクトロニクスが必要--佐々木 正(シャープ元副社長)

佐々木 正氏

 「電卓の生みの親」とされ、シャープが日本有数の家電メーカーとなる端緒を開いたのが、元副社長の佐々木正氏だ。液晶、太陽電池など先端電子技術の開発に携わり、半導体産業の礎を築いた。ソフトバンク社長の孫正義氏のメンターとしても知られ、100歳となる現在も、経営者や技術者へのアドバイスを送り続ける。その佐々木氏に現在のエレクトロニクス業界はどう映るのか。今後の展望について語ってもらった。

佐々木正氏が語る未来 酸化を防ぐ技術により人間を健康で長生きに

佐々木 正

佐々木 正(ささき・ただし)
1915年生まれ、島根県出身。38年京都大学工学部卒業、神戸工業(前身・川西機械製作所、現・富士通)取締役を経て、シャープ副社長、顧問を歴任。2001年にNPO法人・新共創産業技術支援機構を設立、理事長に就任し、現在に至る。

 これからはエレクトロニクス自体が大きく変化しないといけません。考えるべきことは2つあり、ひとつはどういう方向に向かわなければいけないのかということ、そしてもうひとつは、それを実現するための材料があるのかということです。

 まず方向性について、最近、生物絶滅の話や人のDNA研究の話を耳にしますが、このままの状態を放っておくと、われわれ人類ですら死滅するのではないかとの危惧を覚えます。そうなると、地球が死んだ星になってしまいます。

 地球は太陽系で唯一、人類が生きる星です。それを絶対に殺してはいけません。私の想いとしては、地球の生命を考え、「地球を救う会」を作りたいと思っています。そしてエレクトロニクスの大きな方向性は、地球を生きる星にすることが第一だと思います。そのためには、まず人間が死んでいっては駄目です。

 1つの考え方として、化学の酸化還元反応が人間にも当てはまります。人間は酸素を吸収し、行動の活力にしています。しかし酸素を取り込むことは酸化されることでもあります。そして酸化が進み過ぎると死を迎えます。代表的な例はがんで、がん細胞は酸素を取り込むことで活性化し、人間の寿命を縮めます。

 酸化は自然の摂理ですが、これを還元の方向に持っていく動きがあります。昔からある食材としては「すぐき漬け」がありますし、最近はカネカの「還元型コエンザイムQ10」など、酸化を防ぐ還元作用のあるサプリメントが出てきています。また、酸化を防ぎ、還元する作用は美容にも効果があるとされており、還元作用のある美容サプリメントも商品化されています。

 エレクトロニクスにおいても、人間を酸化させずに還元する技術がこれから出てくると思います。酸化とは電子を放出することで、還元は電子を取り込むことです。酸化により体外に放出された電子を体内に戻す技術をつくれば還元になります。そうすると人体の酸化を抑えられます。美容向けには、空気中の電子を増やす電子発生器が既に製品化されています。今は電子をいかにして体内に放り込むかということを考えています。

 人体で電子を出し入れする技術が出てくると人間が酸化しないので、がんにもならずに長生きできます。この仕組みを利用して、人間が健全に長生きしていくためのエレクトロニクス技術が出てくると思います。

 人間の生命に関するエレクトロニクスが多くなってくると、従来のエレクトロニクスではなく、人間の身体やDNAなどの研究を専門にしている人たちがやることになると思います。だから大学の研究もそういう方向に向くのではないでしょうか。例えば、物理にしても、物理という名前で、中身は変わっていきます。遺伝子研究の専門家が物理をやるようになるなど、格好と中身がそれぞれの部類で変わってきつつあります。

 一方、材料については非常に気にしています。材料で行き詰まってはいけないので、新しいエレクトロニクス材料を考えなければいけません。昔の話をすると、例えば半導体では、かつてpMOS、nMOSと呼ばれる回路の時代がありましたが、現在のCMOSに置き換わっていきました。これからも、どんどん新しいものに変わってくると思います。

 ただ人間の身体でも分からないことが多いです。例えば、霊感を持っている人の遺伝子にはそういう要素があるのではないかとか、そういうことを研究する余地はあります。科学には、まだまだやることがたくさんあります。だから学問に行き詰まりがあるとは思っていません。

共創ではお互いの立場を理解し合うことが重要と語る佐々木正氏

 これからは個人の「独創」ではなく、複数の英知を持ち寄って新しいものを創造する「共創」の時代ですが、共創をうまくやるためには、まずお互いをよく理解することが必要だと思います。そして、日本の共創を考えると、米国と絶えず交流しながらやるべきだと思います。

 例えば、生命に関するエレクトロニクスで電子だけを抜き取る技術は、米国のほうが優れています。放射線治療などに使われるリニアアクセラレータの技術ですが、あの技術が体に必要なものを選び出すので、まだまだ向こうに学ばなければいけないと思います。大型の本格的なものは米国でやりますが、逆に日本は撃ったら電子が出る小さなピストルのようなものを作れるのではないでしょうか。「大を見て小を作る」です。

 共創では、双方が同じ方向に進むのではなく、お互いの立場を理解し、お互いの良い点を交換し合っていく形で進むのが望ましいと思います。(談)

(文=本誌/村田晋一郎 写真=宇野良匠)

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る