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サイバーダインの次の一手 ロボット技術を用いて生産革命を起こす

事業提携を発表した山海嘉之・サイバーダイン社長(左)と山田義仁・オムロン社長

 ロボット分野の「成功例」として近年注目を集めるのがサイバーダインだ。同社のロボットスーツ「HAL」は生体電位信号で動作し、人の動きをサポートする。現在は医療・福祉分野向けに展開しているが、その技術はまだまだ大きな可能性を秘めている。今回のオムロンとの事業提携により、技術の応用展開をさらに加速させていく。

サイバーダインが下肢不自由者に希望を与え評価も高まる

 サイバーダインは2004年に筑波大学教授の山海嘉之氏が設立。山海氏が研究するサイバニクス技術を用いたロボットスーツ「HAL(ハル)」を開発・製品化している。山海氏は「科学技術は人の役に立ってこそ意味がある」と語る。HALはその想いを体現したものと言える。

HAL腰タイプの装着例

HAL腰タイプの装着例

 HALの動作原理は、人が動こうとする際に発する微弱な生体電位信号を読み取り、人の意志に応じた関節のパワーユニットを駆動させるもの。HALを装着することで、脚力が弱った人や下肢に障害を持った人の自立動作をアシストする。

 サイバーダインはまずは医療・福祉分野向けに下肢タイプの「HAL福祉用」を展開。08年に大和ハウス工業と販売代理店契約を締結し、09年より販売を開始した。医療・福祉施設において機能訓練のサポートツールとして活用され、歩くことを諦めていた人がHALによって歩く希望を見いだしている事例が報告されているという。

 この下肢タイプは14年11月に生活支援ロボットの安全性に関する唯一の国際規格「ISO 13482」に適合し認証を取得。また、EUでは医療機器に認証され、「HAL医療用」として、脊髄損傷、外傷性脳損傷、脳血管障害など、脳・神経系に疾患のある運動器不安定症患者の治療に用いられている。

 一方、日本では現在、医療機器として認定されておらず、「HAL福祉用」として展開。ただし14年12月に「希少疾病用医療機器」の指定は受けており、今後の薬事承認への期待が高まっている。日本でも医療機器として認定されれば、普及が加速すると期待されている。

 さらにサイバーダインでは14年9月に腰タイプの「HAL介護支援用」および「HAL作業支援用」を開発。腰タイプは介護や重量物を運搬する作業の際に腰部にかかる負荷を軽減し、健常者が腰痛を引き起こすリスクを低減している。このHAL介護支援用およびHAL作業支援用については、オムロンと事業提携し、オムロンが販売促進および保守サービスを行う。

サイバーダインがロボット技術を用いて生産革命を起こす一例とは

 サイバーダインとオムロンは、HAL腰タイプの事業提携だけでなく、包括的なロボット事業の基本合意書を締結した。その内容は、HAL腰タイプの販売・保守に加え、サイバーダインが開発製造した搬送用ロボットおよびクリーンロボットもオムロンが販売促進および保守サービスを行うというもの。そして、さらに含み込んで、サイバーダインのサイバニクス技術とオムロンのファクトリーオートメーション技術の知見を生かして、「生産革命」に関する事業促進を行うという。

事業提携を発表した山海嘉之・サイバーダイン社長(左)と山田義仁・オムロン社長

事業提携を発表した山海嘉之・サイバーダイン社長(左)と山田義仁・オムロン社長

 サイバーダインが目指す生産革命の一例として、山海氏が挙げたのが熟練技能者の技能の伝承だ。HALの動作原理に使われているサイバニクス技術は人の動作を生体電位信号から予測し機械を制御するものだが、生体電位信号を読み込む際に動作の情報を取得・蓄積できる。これを熟練技術者に用いると、熟練者の優れた知見や技術を社会資産として蓄積し、その技能情報を非熟練者に伝授したり、ロボットに転写したりすることで、優れた生産能力を容易に実現できるという。技能者が次の世代にノウハウを言葉だけではなく、1つのコツとして伝えていくことも可能になってくる。

 また、技能の蓄積・転写は、熟練者に「HALマスター」を装着し、技能情報を読み取り、それを「スレーブロボット」に転写するシステムを構築する。このシステムでは、HALマスターからスレーブロボットの遠隔操作も可能となる。単に熟練技術者の技能をロボットで体現できるだけでなく、人が立ち入ることのできない領域でロボットを作業させることもできるため、応用範囲はかなり広がる。

 山海氏によると、技能の蓄積・転写の基礎技術はある程度できているという。既にリハビリの現場では医者が装着したHALの動きを、患者が装着したHALに伝えて、患者の動作をサポートした事例もある。今後の事業化に向けて、この4〜5年の間に何段階かのマイルストーンを設定して開発を進めていく方針だ。

(文=本誌/村田晋一郎)

 
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