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「自動車とインターネットの融合で新たなムーブメントを起こす」――中島 宏(ディー・エヌ・エー執行役員)

 将来的なIoTの応用例として考えられているのが、自動運転車だ。自動運転技術を駆使したサービスの実現を目指し、ディー・エヌ・エーが自動車事業に参入。ZMPとの合弁会社「ロボットタクシー」を立ち上げた。合弁会社社長であり、同社のオートモーティブ事業を統括する中島宏執行役員に今後の展望を聞いた。

自動車分野でユーザー体験の変革を促す

 ディー・エヌ・エー(DeNA)が自動車事業の参入を表明し、ロボットベンチャー企業・ZMPと合弁会社「ロボットタクシー」を立ち上げた。

 今、自動車業界で起こっている大きな変化は、ひとつは水素自動車などのエネルギー革命であり、もうひとつは自動運転である。自動運転はソフトウェアとインターネット領域の技術が融合して事業化が進むため、IT企業であるDeNAが、力を発揮できるとの判断だ。

 合弁会社では、自動車とインターネットの融合により自動運転車を実現し、新しいムーブメントを起こす。具体的には、ZMPが改造した自動運転車を合弁会社が購入し、あらゆるソフトウェアを組み込んで、自動運転技術を活用したサービスを展開していく。今は複数の地方自治体と協力して、実証実験を開始している。

中島宏・ディー・エヌ・エー執行役員

中島宏・ディー・エヌ・エー執行役員

 DeNAがかかわり、インターネットの発展形として実現する自動運転車は、IoTの究極例の1つと言える。中島宏・DeNA執行役員は、携帯電話の進化を引き合いに次のように語る。

 「今のスマートフォンはある意味でIoTだと思っています。電話とインターネットが高度に融合して、ユーザー体験そのものをドラスティックに変えた。インターネットにつながるデジタル端末が普及し、その上でコンテンツ産業が勃興し、小売り業やゲーム産業などで構造変化が起こった。われわれのロボットタクシーは、ユーザー体験の変革までを見据えて事業展開を考えています」

 ただし今の自動車は携帯電話に例えると、まだiモード前夜で、携帯電話がインターネットにつながりメールができるようになった時期に近しいという。現在のフェーズがiモード前夜であるとの認識に立って、今後10〜20年で、メールができる携帯電話がiPhoneになったような大きな変化が起こることを想定する。

 「クルマが高度なデジタルデバイスになっていくと、これをクルマと呼んでいいのかというものができてくると思う。今やiPhoneを手に取って電話ですという人はいない。それぐらいの変革が自動車においても起こるはず」

モータリゼーション2・0を牽引

 DeNAの自動車産業参入に当たって想定したのは「モータリゼーション2・0」だという。

 モータリゼーションは、自動車産業が技術的革新を遂げて発展することで、周辺産業が勃興する現象を指す。1960年代に起こった日本のモータリゼーションでは、自動車の普及により人々の活動領域を郊外に広げ住宅・不動産業界が発展したほか、小売り・物流業も進化した。そして、モータリゼーションによる新たなムーブメントが2020年前後にかけて再び起こると言われている。それがモータリゼーション2・0。そのキーコンセプトの1つが自動運転だ。

 自動運転が実現し、人が運転する必要がなくなれば、車内は搭乗者にとって自由空間になるため、エンターテイメント産業が盛り上がる可能性がある。また、今は運転しながら携帯電話の通話ができないが、運転をしなくなればコミュニケーションが活性化する可能性もある。さらには自動車そのものが居住空間になるかもしれない。

 「自動車産業が自動運転技術の革新でリニューアルされることによって、その周辺産業がポジティブな影響を受ける。そのときにどういう変化が起こるのかを想像しながら、いろんな産業の人たちと協調し、新しい動きをもたらしていく発想が重要になってくる」

 その一方で自動運転に関するグローバル全体の動きを見ると「待ったなし」の状況だという。実現に向けて、日本ではさまざまな法規制の問題をクリアしなければならないが、他国の動きは早い。例えば、シンガポールは国家戦略として自動運転産業の実現を目標に掲げている。また、国際免許のジュネーブ条約を中国は批准していないため、自動運転の導入が容易だと考えられている。韓国でも20年までにすべての道路で自動運転車が走れるようにするニーズがある。

 グローバルレベルで見ると、日本が自動運転導入を躊躇している間に、他国に先に行かれてしまう。もはや「自動運転が実現するのか」という議論よりは、「他国に負けないように自動運転の環境をいかに整えるのか」という議論が重要だという。

 日本が自動運転を産業として先行するためには、リスクをとって実証実験を繰り返し、実データを積み重ねていく会社が必要になってくる。

 「そこはわれわれが地方自治体と協力して、先行してリスクをとって実証実験をやっていく。データをフィードバックして、他国に先駆けて日本が早く環境を準備できるように貢献していきたい」と中島氏は今後の抱負を語った。

(文=本誌/村田晋一郎 写真=佐藤元樹)

 
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