媒体資料
経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

同性カップルの支援に動き出す自治体 保坂展人・世田谷区長に聞く

同性カップルの支援に動き出す自治体 保坂展人・世田谷区長に聞く

同性カップルを結婚に相当する関係として認めるパートナーシップ証明書の発行を条例で認めて話題となった渋谷区に続き、世田谷区でも同様の取り組みが進んでいる。世田谷区では性同一性障害であることを公表し、性的マイノリティーの支援を行っていることで有名な上川あや議員のほか、保坂展人区長も以前からこの問題には高い関心を持って取り組んできた。LGBTというテーマに対して自治体ができることは何か。保坂区長に聞いた。 聞き手=本誌編集長/吉田 浩 写真=佐藤元樹

 

区長としてできること、区としてできること

―― 世田谷区ではLGBTの問題に積極的に取り組んでいるようですね。

保坂 今年3月に世田谷区在住の16人のLGBTの方たちが区役所にいらして、「同性パートナーであることを行政として認めてほしい」という要望書を提出されました。その際、家を借りる時に苦労したり、パートナーの方が入院しても、家族ではないので病室に入るのが難しかった経験など、さまざまなことを伺いました。同性カップル証明書に法令上の力がないのはみなさん理解していますが、何らかの形で自分たちがカップルであることを受け止めてほしいという思いが非常に強く、区として何ができるか考えようということになったのです。

(ほさか・のぶと)1955年生まれ。宮城県出身。教育問題に取り組むジャーナリストとしての活動を経て、96年衆議院議員初当選。3期11年務めた後、2011年世田谷区長選に当選。いじめ問題に取り組んだ経験から性的マイノリティーの問題にかかわるようになり、区長として支援に積極的に取り組む姿勢を見せている。

(ほさか・のぶと)1955年生まれ。宮城県出身。教育問題に取り組むジャーナリストとしての活動を経て、96年衆議院議員初当選。3期11年務めた後、2011年世田谷区長選に当選。いじめ問題に取り組んだ経験から性的マイノリティーの問題にかかわるようになり、区長として支援に積極的に取り組む姿勢を見せている。

―― 具体的にはどのような対応を考えていますか。

保坂 3段階のアプローチを考えています。まずは区長の裁量でできること。例えば世田谷区では職員向けにセクハラ防止指針を定めていますが、そこに性的マイノリティーに対してのハラスメント防止についても明記しました。また、条例ではなくても、同性カップルからの申請に対して、確かに受理したと示すものを発行しましょうと。同性カップル証明書の一歩手前のようなものです。

 2つめは、区長の裁量ですぐに実現できなくても、区として取り組めること。専門家やLGBTの方々に委員になっていただき、世田谷区の男女共同参画プランの検討会の中に専門部会をつくって議論していくことを考えています。戸籍や年金制度など、国の法律で定められた制度は区の条例で変えられませんが、区の判断でLGBTのみなさんの権利を保障していくための議論をしたいと思います。

 3つめは国が行う法律の議論を把握して、区としての対応を考えること。私は3期11年、国会議員を務めましたが、超党派でLGBTの権利に関する議員立法に取り組んでいる自民党の馳浩衆議院議員とは今でも連絡を取り合っていて、議連とも接点を持ちたいと思います。

差別解消に70%の区民が同意

―― 同性カップル証明書、またはそれに準ずるものをいつごろ発行する予定ですか。

保坂 今年3月の時点で、半年をめどに発行したいと表明しました。それが同性カップル認定書なのか違う形になるのかはまだ未定ですが、いずれにせよ、今年中には何らかのものを出す準備をしています。世田谷区の男女3千人にアンケート調査を行ったところ、性的マイノリティーの差別解消に区は取り組むべきと答えた区民は70%に達し、否定的な意見は4・8%しかありませんでした。これは1つの民意ですから、比較的無理のないところから始めるつもりです。

―― 同性カップルの養子が、保育園へ入園する場合などに関しても一般的な家庭と同じ条件にするといったことは。

保坂 現行の制度は男女で世帯をつくること以外を想定していません。私が知る珍しいケースでは、お互い離婚経験がある女性同士のカップルで、それぞれの連れ子とともに世帯を形成している家庭がありました。そういう場合に世帯に準ずる形としてどこまで扱えるのか、区でコントロールしている制度については考えないといけません。ほかにも、区で自己完結にできるものとしては区営住宅への入居条件などもあります。それらをどう扱っていくかが、これからの課題でしょう。

 また、同性カップルのパートナーシップについては離別・解消の問題も付随してきます。証明書を出した場合、別れることになった際には取り消しの制度をつくるかどうかなども考える必要が出てきます。そこまで踏み込むと複雑な問題が増えてくるので、さらなる議論を重ねる必要があります。

―― 上川あや区議のように自身が性的マイノリティーだったり、保坂区長のように以前から関心を持っている方がいる自治体は取り組みが進むかもしれませんが、全国的なムーブメントにはなり得るのでしょうか。

保坂 実際には、有名な政治家や国会議員の中にも、性的マイノリティーはいると思います。ただ、日本では公職に就いている人間がそれを明らかにすることに対しては、まだ偏見が強いのが現実です。少なくとも一定の確率で性的マイノリティーがいるというのは事実なので、世田谷区では自分が区長になる前から学校で教職員への研修を行ったりしてきました。中には、LGBTの権利保障を行うと、少子化が加速するといった意見もあるようですが、社会的に承認されていなくても子育てしているLGBTの方々は既にいるわけですから、しっかり対応していくべきだと思います。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る