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ルネサス反転攻勢へ 危機を脱し新体制の滑り出し順調

作田久男・前会長の下で構造改革を進めてきたルネサス エレクトロニクスだが、一頃の危機は脱した感がある。成長へのバトンを託された遠藤隆雄・新会長の下で新たなスタートを切ったが、2016年3月期の第1四半期の業績は良好。反転への兆しが出てきた。 文=本誌/村田晋一郎

奇妙な縁でつながったルネサス新会長の就任

作田久男氏(左)と遠藤隆雄氏

作田久男氏(左)と遠藤隆雄氏

ルネサス エレクトロニクスの業績が底をうちそうだ。構造改革による固定費の削減と製品ミックスの改善が目に見える形で表れてきている。

2016年3月期の第1四半期決算は、売上高が前期比2%減、前年同期比14%減の1793億円となったが、これは想定ライン。営業利益は324億円、営業利益率は18%で、前年同期比、前期比、予想比をすべて上回り、利益面の改善がうかがえた。

さらに第2四半期には売上高が1847億円となる見込みで、5四半期ぶりに前期比増となる。製品ラインの絞り込みで、ルネサスの売り上げは四半期ベースで減少傾向が続いているが、ようやく歯止めがかかる。いよいよ反転攻勢に向けた動きが始まるが、それを託されるのが6月末に新たに会長兼CEOに就任した遠藤隆雄氏だ。

遠藤氏は日本アイ・ビー・エム(IBM)常務や日本オラクル社長を歴任してきた。その経歴が買われてのルネサス会長就任だが、前任の作田久男氏とは旧知の間柄だという。

2人が初めて会ったのは10年以上前、作田氏がオムロン社長、遠藤氏が日本IBM常務の時で、ちょうどオムロンの情報システムを抜本的に入れ替えるタイミングだった。また、遠藤氏がオラクルに移る時期に、オムロンがオラクル製品を大量に採用したことがあったという。

今回の遠藤氏の会長就任は産業革新機構(INCJ)主導で決定されたもので、作田氏との関係は直接影響していないというが、「何らかの縁を感じる」と遠藤氏は語る。

また、会長就任の要請があった時に、遠藤氏は「すぐにやってみたい」と答えたという。

「INCJからは、『事業には口を出さない』と言われたことが大きい。69%株を持っていると口を出すと思うが、そこは『ルネサス側に任せる』という能見さんの言葉は決め手になった」

ルネサスの筆頭株主となるINCJにおいても6月末で、CEOが能見公一氏から志賀俊之・日産自動車副会長に交代。志賀氏と遠藤氏は同じ和歌山県出身で、遠藤氏自身はここでも縁を感じているようだ。

遠藤氏の会長就任は、時間軸と人の縁が交差した奇妙な巡り合わせなのかもしれない。

ルネサス新体制で注力するのはコア技術の強化と社員の士気向上

遠藤氏には作田氏が進めてきた構造改革を完遂するとともに、成長に向けたギアチェンジが求められている。では、遠藤氏はどのように成長軌道に乗せるのか。就任会見で遠藤氏は、自身のこれまでを振り返り、次のように語った。

「IBMの時に思ったのは、業界で勝ち抜くには、強いアセットを持たなければいけないということ。アセットとは、強いコアになる、競争力のあるもの、あるいは競合がまねできない、尖がったもの。これを武器にビジネスができることを学んだ」

また、オラクルに関しても、尖がったアセットを持っていた会社ということで転職したという。そして、ルネサスにも「勝ちパターンはある」と語る。

ルネサスでは、機能安全、セキュリティ、センシング、ローパワー、コネクティビティの5つの技術をコア技術と位置付けている。これらの技術の強い部分はさらに強化し、足りない部分はM&Aも視野に入れ、スピーディーかつ戦略的に大胆に強化していく方針だ。7月にはCTO(最高技術責任者)のポストを新設。三菱電機出身の日高秀人氏が就任し、技術の取りまとめを強化する。

また、就任会見では社員の士気についても言及した。ルネサスの前身である日立製作所、三菱電機、NECは、遠藤氏が日本IBMに在籍した当時は手ごわい競合だったという。それだけに、社内のマンパワーを評価している。その一方で、ここ数年の業績低迷やリストラなどによる社内のモチベーション低下を危惧している。

「社員のアグレッシブさがかなり失われていると感じている。そこは、私が気合いを入れて、楽しく組織を活性化することで改善していきたい。この数年間は会社が赤字やリストラなど引き算の世界をやってきた。引き算の世界から足し算の世界へと転換するのは、自動車のギアがRからDに変わるようなもので結構難しい。このマインドを変えるのはチャレンジだと思っている」と意気込みを語った。

社内の環境整備については、ルネサスは7月末に東京・豊洲に本社を移転したが、新オフィスでは新たに社員食堂を設置した。シリコンバレーの企業が行っているような自由闊達に意見を交わす場所を設ける狙いで、社員間のコミュニケーションを高めていく。また、「日本一野菜のおいしい社内カフェ」をコンセプトに、大地を守る会の協力の下、有機野菜を中心とした安全でおいしいメニューを提供。社員の健康面にも配慮する。

遠藤氏の就任以降、業績の改善に加え、こうした新たな動きも出てきている。半導体事業は投資から結果が出るまでに時間を要するビジネスだが、遠藤氏は自らを「せっかちで、ゆっくりしているのは嫌い」と語る。

具体的な経営計画は上期決算の時期に明らかにする予定で、新体制による反転を急ぐ。

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