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「オワハラ」が横行する就職戦線 企業の採用基準に変化の兆しも

ニュースレポート

来春卒業予定者の就職活動は、1980年代後半のバブル期以来の売り手市場といわれる。例年以上に、優秀な学生の奪い合いが激しくなっており、学生の自由な職業選択の機会を阻むハラスメントがあらためて問題視されている。 文=ジャーナリスト/横山 渉

 

「オワハラ」が横行する就職戦線

 今年、経団連加盟企業による新卒の面接・採用選考開始は8月1日だった。昨年に比べて4カ月の後ろ倒しである。就職活動の長期化は学業に影響を及ぼすとして、政府が経済界に日程繰り下げを要請したからだ。

 ところが、春から夏にかけては「オワハラ」という言葉がクローズアップされてきた。これは「就活終われハラスメント」の略で、内定を出す条件として他社への就職活動を終わらすよう学生に圧力をかける行為だ。文部科学省の調査(7月)では5・9%の学生がハラスメント的な行為を受けたことがあると回答している。未回答の学生を除いて集計すると、7・8%になる。

 外資系や中小企業など非加盟企業にとって、経団連の就職協定など全く関係のない話。従来どおりのスケジュール、すなわち今春から採用活動を始めて、優秀な人材には早めに内定や内々定を出してきた。メディアでは、8月から選考する大企業に学生を取られたくないとして、オワハラが多発したという論調が多い。

 しかし、企業が他社選考を辞退させたり、内々定後に懇親会や研修と称して学生を拘束したりする行為は昔からあった。今年から見られる現象と考えては事の本質を見失ってしまう。

 こうした行為を「オワハラ」と命名・定義付けし、あらためて社会に問題提起したのは、就職活動の制度改善に取り組むNPO法人DSSだ。辻太一朗代表はこう話す。

 「ハラスメントは、優位な立場や権限を利用し、逆らいにくい立場にある人に不利益を与える行為。学生の自由な職業選択を高圧的に妨げるのはハラスメントだ。オワハラを放置していたら採用活動で企業の早い者勝ちが助長され、就活時期の早期化に歯止めがかからなくなる」

 オワハラにはいくつかのパターンがある。まず、1つめは「就職活動の終了を約束しなければ内定しない」と不安にさせるような言動。2つめは、就職活動の終了を言質や書類提供で強要し、他社の面接予定や内々定を辞退させるよう精神的な圧力をかけること。3つめは、選考期間や選考頻度を必要以上に多く設け、イベント等で拘束して他社の選考を阻害することだ。4つめはリクルーターなど先輩後輩の関係を利用し、内定承諾や就活の終了を強要する行為である。なお、辻氏によれば、最近は大学の推薦状を持ってくるよう求める企業が増えているという。大学は1人の学生に通常は推薦状を1枚しか出さないことを逆手に取った手口だ。

「オワハラ」企業には入社してはいけない理由

 オワハラを引き起こす採用活動の「早いもの勝ち」状態がなくならない根本原因は、企業が文系学部学生の学業や成績を信頼していないからだ。

 学生は、大学の成績よりも課外活動のほうが面接でアピールしやすく、就活には有利だと考えている。大学はサービス産業化しており、出席だけで評価を与える授業も多く、単位の取りやすい授業が人気を集めやすい。

 DSSでは、こうした大学教育と就職活動の現状を是正し、大学生が学業に力を入れることで報われる社会の実現を目指している。具体的には、企業の採用担当者に履修履歴の活用を呼び掛けている。

 「採用担当者にいきなり『学生の成績重視を』とお願いしても無視されてしまう。そこで履修履歴の活用です。なぜその授業を選択したのか、その授業から何を学んだか、難しい課題にどう取り組んだか、といったことを面接で質問すれば、学生の問題解決能力を見極めるための判断材料が増える」(辻代表)

 日本では長らく、就職活動では体育会系学生のほうが有利といわれてきた。その理由として採用担当者らは「厳しい練習に耐えてきたことで培われた強い精神力」「勝つ・結果を出すことの執着心」「リーダーシップ」「礼儀正しく、目上には絶対服従(上意下達)」などを挙げる。新卒は即戦力の中途と違い、ポテンシャル採用であるため、企業側は入社してから自社に適した人材へと教育して戦力化すればよいということである。

 しかしながら、外国人や女性の登用に積極的な日本企業が増えてきており、体育会系の地位が相対的に低下しているのも事実。辻代表らの取り組みもまた、学業重視の方向に流れを変える可能性を秘めており、日本企業の採用基準を長期的に変えていくかもしれない。

 そして、就活学生はオワハラを受けた場合、自らの判断で対処するしかない。仮に誓約書を提出させられたとしても、そのような誓約書には何ら法的拘束力はない。したがって、納得いくまで堂々と就職活動を続ければよい。辻代表は次のように話す。

 「オワハラは採用という企業人事の活動の中で起きることであるから、オワハラをする企業とそうでない企業では、企業の風土が全く違うのではないか」

 オワハラは企業風土を反映するので、そういうことをするような会社は入社してから、倫理的に問題のあるような仕事をさせられる可能性があるということだ。オワハラ企業には入社してはいけないということを、学生は肝に銘じるべきだ。

 
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