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前途多難の東芝の再スタート チャレンジの風土を拭えるか 

ニュースレポート

東芝が不適切会計問題により遅れていた2014年度通期の決算をようやく発表した。当初の予定を問題発覚後に2カ月延長し、さらに期日当日になって1週間提出を延長するという有り様。次の成長の柱も見えず、同社の混迷は深まるばかりだ。 文=本誌/村田晋一郎

有価証券報告書の再延期でも見えた東芝の「チャレンジ」風土

 不適切会計問題が発覚後の東芝のスケジュールは、8月中旬に新経営陣の公表、8月31日に有価証券報告書の提出と2014年度の決算発表、9月14日に15年度第1四半期の決算発表、9月下旬に臨時株主総会を開催。臨時株主総会で新経営陣の承認を得て、再生へのスタートを切るはずだった。しかし、どうもスタートからしっくりこない。

 新経営陣は8月18日に公表したものの、その人事には疑問が残る。そして8月31日は予定していた有価証券報告書を提出できず、決算発表を実施できなかった。

 有価証券報告書の提出は上場会社として厳守すべき事項であり、本来は6月末に提出する予定だったが、不適切会計問題発覚により2カ月の延長を申請して承認されていた。そして8月31日、再度の延長を申請することになったが、そのこと自体が事態の異様さを物語っている。

 提出が遅れた直接的な原因は、新たに「不適切な会計処理」が10件程度判明したこと。再計算に時間を要し、期日に間に合わせることができなかった。

 新たな不適切な会計処理は、単純な集計ミスによるもののほかに、内部告発によるものもあったという。内部告発が続いたこと自体は東芝が社内でも変わろうとしている機運が高まっているとも取れる。

 一方で延期の発表自体が東芝の経営陣の杜撰さを表すものとなった。東芝側で会計の再計算処理を確定させたのが8月27日、関係書類を監査法人に提出できたのが30日で、監査法人からは監査完了に7日程度要するとの報告を受けたという。この時点で翌31日の有価証券報告書提出は無理だと判断できる。

 しかし、東芝が報告書提出の延長を公表したのは31日夕刻で、経緯を説明する記者会見を同日夜に開催した。

 会見に集まった記者から「今日中に決算が発表できないことが分かっているのに、なぜ日中の早いうちに公表できないのか」という声も挙がった。それに対して室町正志会長は「なんとか今日中に発表できるように最大限努力をした結果、発表が遅れた」と答えたが、監査が済まない数字を公表できるわけがない。

 また、再延長後の提出期限は1週間後の9月7日となったが、再提出についても「できるだけ早いうちに週内(9月4日まで)に提出するように努力する」と語ったが、これも監査法人の「監査完了に7日を要する」という発言と矛盾していた。結局は期限の9月7日に有価証券報告書を提出し、決算を発表した。

 できないことをできると言わせるのが「チャレンジ」だとすると、東芝経営陣からはチャレンジの気風は払拭されていないのではないか。今後はチャレンジの原因となった過度な数値目標の設定は控えるとしているが、それでうまくいくのか、企業風土が変わるのかは疑問が残る。

東芝の新たな収益の柱とゴールは見えず

室町正志 東芝会長兼社長

室町正志・東芝会長兼社長

 不適切会計分を加味して、過年度まで修正して、ようやく14年度通期決算の発表にこぎ着けた。決算発表で明らかになった東芝の実態は芳しくない。

 最終的に公表した08年度から14年度第3四半期までの累計修正額は、売上高が9億円の上方修正、税引前損益が2248億円の下方修正、純損益が1552億円の下方修正となり、利益の水増しを重ねてきたことがうかがえる。

 14年度通期決算は、売上高こそ当初の予想水準の6兆6559億円だったが、営業損益、税引前損益は前年比で軒並みダウン、当期純損益にいたっては378億円の赤字を計上した。

 営業損益を部門別に見ると、これまで掲げた戦略と実態との乖離が浮かび上がってくる。

 田中久雄前社長が掲げた14年度からの中期経営計画は、半導体をはじめとする電子デバイス、電力・社会インフラ、コミュニティ・ソリューションおよびヘルスケアを収益の3本柱としつつ、PCおよびテレビを中心とする赤字のライフスタイルの収益改善を進めるというものだった。

 ところが実態は、営業利益1704億円のうち、電子デバイスが2166億円で、ライフスタイルの1097億円の損失を補填している格好。収益の柱は半導体一本足となっており、なおかつPC・テレビのマイナスが拡大しているのが実態だ。

 「現状を考えると、3本柱という表現は今後、積極的には使わない」と室町会長は語った。

 半導体事業を牽引しているのは、スマートフォンをはじめとするモバイル機器に使われるNAND型フラッシュメモリで、世界トップの韓国サムスン電子と真っ向勝負を続けている。

 ただし、メモリは市場の変動性が非常に激しく、莫大な利益を生む一方で莫大な損失を計上することもある。半導体事業出身の室町会長は、そのことをいちばん分かっているはずだが、今のところ打つ手は見えてこない。「15年度上期決算を発表する段階で何らかの方向性は示したい」と語るにとどめた。

 なお、15年度の業績予想は据え置いた。今回の不祥事による追徴金の可能性や、今後の入札拒否などビジネスへの影響が計り知れないためという。

 今後も不適切会計に起因する問題は露呈してくる可能性があり、まだゴールは見えてこない。

 
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