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「世界で通用する日本発のラグジュアリーブランドを目指す」――田島寿一(TASAKI社長)

TASAKI社長 田島寿一氏

 真珠業界トップで60年以上にわたる歴史を刻むTASAKI。創業当時から真珠の養殖場を持ち、養殖・選別・加工から販売までを一貫して自社で行ってきた。自社研磨を行うダイヤモンドを含めたジュエリーにも定評があるが、さらに新たにウォッチコレクションを発表し、日本発のグローバルなブランドとしての広がりを見せていく。2009年からブランドの舵を取る田島寿一社長に、同社の現状と今後、またこれまでかかわってきた有名ブランドの再構築についても聞いた。 聞き手=本誌/榎本正義 写真=幸田 森

既成概念にとらわれずブランドリニューアル

田島寿一(TASAKI社長) (たじま・としかず)1953年東京都生まれ。78年青山学院大学文学部卒業後、ジャーディンマセソン&カンパニー(ジャパン)リミテッド入社。90年グッチジャパンに転じ、営業本部長。97年クリスチャンディオール取締役営業本部長、98年同社代表取締役社長。2004年LVJグループ フェンディジャパンカンパニー社長兼CEO。09年1月田崎真珠(現TASAKI)取締役兼代表執行役社長に就任。

田島寿一(TASAKI社長)
(たじま・としかず)1953年東京都生まれ。78年青山学院大学文学部卒業後、ジャーディンマセソン&カンパニー(ジャパン)リミテッド入社。90年グッチジャパンに転じ、営業本部長。97年クリスチャンディオール取締役営業本部長、98年同社代表取締役社長。2004年LVJグループ フェンディジャパンカンパニー社長兼CEO。09年1月田崎真珠(現TASAKI)取締役兼代表執行役社長に就任。

  1954年に田崎俊作氏が創業した田崎真珠。真珠の加工販売を行うブランドとして、品質・技術ともに世界のトップクラスだ。真珠養殖業から始まった真珠づくりは、全国真珠品評会の最高賞である農林水産大臣賞を通算7回受賞するなど、国内外で高い評価を得てきた。94年、世界最大手のダイヤモンド原石供給元であるデ・ビアスグループから、直接原石を取引できる資格「サイトホルダー」を取得。

 しかし、バブル崩壊後に国内宝飾品需要が冷え込むと業績も悪化。2005年10月期から最終赤字が続いていた。そこで09年、グッチジャパン営業本部長や、クリスチャンディオール株式会社社長などを歴任し、高級ブランドビジネスの指揮に実績を持つ田島寿一氏を社長に迎え、再建に取り組んできた。田島氏は、ブランド名を「田崎真珠」から「TASAKI」に変え、社名も同様に変更。10年4月には旗艦店の銀座本店をリニューアル。ジュエリーの既成概念にとらわれない商品を発表するなどブランドを一新した。新シリーズをヒットさせ、13年10月期に5年ぶりに黒字化し、15年10月期は最高益を更新する見込みだ。世界で通用する日本発のラグジュアリーブランドを目指している。

―― 訪日外国人の増加を追い風に、宝飾品の販売が好調です。8月からはブランド初の高級腕時計コレクション「TASAKI TIMEPIECES(TASAKIタイムピーシーズ)」を発売。最高峰モデル「Odessa Tourbillon(オデッサ トゥールビヨン)」は、既に注文があったそうですね。

田島 1本ご注文をいただき、さらに1本お問い合わせをいただいております(8月時点)。すべてJAPAN MADEの手作りで、出来上がるまで半年かかるため、1年待ちとなってしまいました。

―― 社長就任以来、どのように再建に取り組んできましたか。

田島 私が就任した当時は、在庫をかなり抱えていて、財務も傷んでいました。非常に厳しい状況にあり、プライベート・エクイティーから第三者割当増資を受けることになり、投資ファンドのMBKパートナーズから出資を仰ぎました。

―― これまでのブランド再構築と比べ、違っていたところは。

田島 過去に欧米のラグジュアリーブランドでブランド再構築に携わってきましたが、当社の場合はそれらと比べて社員数が多く、約1200人でした。船の操縦に例えると、小さいモーターボートなら、舵を切るとすぐに方向を変えることができます。今回は10倍以上の人数なので、新しい方向を打ち出してそれを共有するにも、時間と大きな労力が必要でした。

 基本的に人間は、自分が慣れ親しんだものを変えたくないので、新しいことは排除したがります。現場の人間が、これは売れる訳がないと思っていては、お客さまにアピールするはずがありません。そこで10年から各ショップで戦略を説明して回りました。TASAKIは大きく変わりましたというメッセージは、マーケットに対するものと同時に、社内に向けたものでもありました。

―― もともとは同族企業なので、社長が外から来ることに違和感もあったのではないでしょうか。

田島 私はこの会社を大胆に変えるべきだと思いました。米国大統領夫人が愛用することでも知られ、世界的に注目を集めるファッション・デザイナー、タクーン・パニクガルをクリエイティブ・ディレクターに招いたのも、既成の宝飾デザイナーにはない斬新さを求めたからです。

有名ブランド転身のキャリア

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左から、TASAKI TIMEPIECESの最高峰モデルであるOdessa Tourbillon(オデッサ トゥールビヨン)と、ジュエリーウォッチserpentine(サーパンタイン)

田島 船舶営業の仕事に興味があり、同社に就職しましたが、配属は化粧品部門。3カ月して、君には向かないようだと(笑)、繊維部門に異動となり、アパレルメーカーとの接点ができました。その後、ハンティングワールドを手掛けることになり、今では考えられないですが、マーケティングからマーチャンダイジング、リテールオペレーションまで1人で受け持つことになりました。これはその後に私がブランドビジネスをしていく上で、非常に得難い経験となりました。

―― その後は有名ブランドを転身されます。

田島 ハンティングワールドとともに、MCMも手掛けることになり、仕事としては非常にやりがいを感じていましたが、89年にグッチへというお話をいただきました。私はマーケティング、マーチャンダイジング、リテールオペレーションをすべてやっていたので、グッチでも全部自分でやりたいという条件を付けたところ、その通りになり、90年に転社しました。

 当時のグッチは顧客層が高年齢化し、ブランド再構築が必要な状況でした。かつて一世を風靡し、グッチの代名詞にもなったGマークが付いたコットンキャンバス地のバッグを販売中止にしました。これは売り上げの25%くらいを占める最大の商品だったので、その後24カ月連続で売り上げが10%ダウンしました。一方で、グッチの名を高めた金属製の留め金付きの靴「ホースビット」などをリバイバルさせ、イメージの若返りを図った結果、その後は20〜30%増の売り上げを示すようになっていきました。

―― ブランドを再構築させたところで、今度はディオールに。

田島 97年にお話をいただいた時は、あなたがグッチでやったことをディオールでもやってほしいと。そのころの日本のディオールは、カネボウさんがライセンス契約をしていました。ピーク時には1700億円くらいの規模でしたが、本来のディオールブランドではない形になっていた。そこで、ライセンスを終了するということになりました。これは重い仕事でした。

ブランドビジネスはプレゼンテーションが命

20151006_TASAKI_P01―― これもいい形でまとめられ、1年後にはクリスチャンディオール社長に就任。2004年にはLVJグループに転じ、フェンディジャパンの社長に転身されました。

田島 この業界には、ちょっと会社が弱ってきたところを元気にさせるという経験のある人は、あまりいません。私がディオールにいた時の直属の上司、マイケル・バーク氏は本社のCOOで、LVMHのベルナール・アルノー会長の信任が厚かった。このマイケル・バーク氏がフェンディの立て直しのために移り、私も来いと誘われたのです。

―― それら外資での経験を買われて、田崎真珠へと。

田島 私は海外のブランドを日本の消費者に販売する仕事をずっと手掛けてきました。そこで、いつかはこの逆もやってみたいと思っていた。さらにその前からご縁があって、私がディオールにいた時に、部下の結婚披露宴で田崎俊作氏と同席する機会がありました。

 いろいろなお話をし、非常に面白く魅力的な方だと思いました。その後に会社にも興味がわき、リニューアル前の銀座店に何回かお邪魔したこともあります。自分ならこうするのに、ちょっと惜しいな、という気持ちはありました。そこへお話をいただいたので、躊躇なく移ることを決めました。

―― これまでのブランドビジネスの集大成をと。

田島 私はどうしても日本のブランドの仕事をやりたかった。日本人は、欧米人に比べてプレゼンテーションが下手。ブランドビジネスでは、これは致命的です。日本の技術力は素晴らしいのに、表現するのに何かが足りない。TASAKIを世界で通用するラグジュアリーブランドにするのが、私に課せられた使命だと思っています。

 昨年、TASAKIフランスを設立し、パリの百貨店ボン・マルシェのグランドフロアに出店しました。ここに店を構えることで、世界中の業界関係者のプレゼンテーション効果も期待できると思います。

 
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