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後藤芳光(福岡ソフトバンクホークス社長兼オーナー代行)”ソフトバンクホークスの目標は日本シリーズ9連覇超え”

福岡ソフトバンクホークス社長兼オーナー代行 後藤芳光氏

 今年のプロ野球パ・リーグのペナントレースはソフトバンクホークスが独走、昨年に続く連覇を果たした。しかし、球団運営会社である福岡ソフトバンクホークスの後藤芳光社長にとっては、連覇が実現しても通過点にすぎないようだ。同氏は元銀行員で、ソフトバンクグループの財務部長も兼務。買収戦略を台所で支えてきただけでなく、球団の運営でもリスクマネジメントの手腕を発揮してきた。ソフトバンクが米携帯電話大手スプリント買収などでグローバル企業となった現状では、ホークスの目標もあくまで世界一。まずは読売ジャイアンツが1960〜70年代に達成した日本シリーズ9連覇を超えないと、真の意味で日本一にはなれないと語る。 聞き手=ジャーナリスト/駅 義則 写真=幸田 森

ソフトバンクホークスの根強い人気、強さの理由 ”リスクマネジメントが連覇のカギ”

後藤芳光(福岡ソフトバンクホークス社長兼オーナー代行) (ごとう・よしみつ)1963年生まれ。神奈川県出身。87年旧安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入行。旧富士銀行副頭取から安田信託会長に転じていた笠井和彦氏に見込まれ、笠井氏とともに2000年にソフトバンクへ入社した。その後一貫して財務部長を務めている。13年10月からは笠井氏の急逝を受け、福岡ソフトバンクホークス社長も兼任。

後藤芳光(福岡ソフトバンクホークス社長兼オーナー代行)
(ごとう・よしみつ)1963年生まれ。神奈川県出身。87年旧安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入行。旧富士銀行副頭取から安田信託会長に転じていた笠井和彦氏に見込まれ、笠井氏とともに2000年にソフトバンクへ入社した。その後一貫して財務部長を務めている。13年10月からは笠井氏の急逝を受け、福岡ソフトバンクホークス社長も兼任。

―― ホークスはペナントレースを独走してきましたが、今シーズンを振り返っての感想は。

後藤 ソフトバンクがホークスを買収してからの10年間、私は東京サイドで番頭役を務めてきました。昨年は笠井さんから引き継いだ路線で優勝を目指しましたが、今年のシーズンはやるべき構造改革をすべて完了させた上で、満を持して臨みました。キャンプインしてしまえば監督以下、選手に信託して経営を預けるので、どんなことがあってもわれわれがつまらない口出しをすべきではありません。フロントとチームの関係は12球団でも非常にうまくいっていると思います。

―― 日本シリーズの相手としては、どのチームが好ましいですか。

後藤 相手がどこだろうと、ファンのためにソフトバンクらしい戦いができれば良いと思います。松坂大輔投手の手術など、選手のけがや病気などもすべて想定内であり、それを見越して選手層に十分な厚みを持たせてきました。身体のケアに関する高い知識を持つ工藤公康監督が自ら、昨年よりもけがしにくいメニューを提案してきたことなども寄与しています。こうしたリスクマネジメントが結果として、うまくいっていると思います。

―― ホークスはダイエー時代から、地元の福岡やキャンプ地の宮崎などで根強い人気を集めています。その理由はどういった点にあるのでしょうか。

後藤 少しでもファン層が広がるような話であれば、選手が自主的に参加してくれています。今年の「24時間テレビ」(日本テレビ系)でのイベントでも、博多湾の能古島にある3人しかいない野球チームの試合の応援に柳田悠岐ら主力3選手が行ってくれました。地域に育てられた球団との思いを、選手たちが持ってくれていると感じます。王貞治会長の存在も大きいです。野球人としてだけでなく、ビジネスマンや人間としての立ち居振る舞いを見て、どうしてここまで気配りできるのかと自分が恥ずかしくなることが多いのですが、王会長の背中を見て、選手も切磋琢磨していると思います。

 

ソフトバンクホークスの今後の大きな目標 ”ジャイアンツの日本シリーズ「9連覇」を超えたい”

フロントとチームの関係が良好だったことが独走につながった

フロントとチームの関係が良好だったことが独走につながった

―― 今後の大きな目標は何でしょうか。

後藤 他球団のスローガンはみな長いのですが、うちの球団が掲げ続けているのは「めざせ世界一」の6文字だけです。ソフトバンクらしさを表現するにはこの言葉しかないと思います。世界一になるにはまず日本一ですが、それにはジャイアンツがかつて成し遂げた(日本シリーズの)9連覇を超える結果を出す必要があります。ジャイアンツ超えはおこがましい話かもしれませんが、追い付かねばならないと思います。そのためにファンも徹底的に増やさなければなりません。ファンクラブの会員数は今年12万人を超えてパリーグではトップになりましたが、まだジャイアンツやタイガースには及ばないと考えています。

―― ファンをさらに増やす手だてとして、どういったことが考えられますか。

後藤 野球以外のエンターテインメントを含めたヤフオクドームの年間集客数は400万人に達していて、球場の稼働率は93%と驚異的な数字です。年間で400万人が来るビジネスをさらに世界に広げる方策を事業サイドが真剣に考え、選手たちがより多くのファンのもとでやりがいを持って試合できる体制を整えたいと思っています。

――ジャイアンツの9連覇超えは壮大な目標ですが、達成に向けての課題は。

後藤 編成の戦略がすごく大事です。現在のチームはこれまでの中でも相当強いとは思いますが、当然ながら全員年をとるわけで、常にベテランと若手が融合した状態であるべきです。こうしたチームづくりには補強が必要です。ここは正確に理解してほしいのですが、金を掛けて補強するのは育成のためです。どう戦っても勝てないような選手がチームに入って来ると、ポジションは1つ減ります。しかし、そういった一流の選手は、絶対そのポジションに立つのだとの思いを強く持った若手にとって、具体的な目標になり得ます。結果として、非常に強いマインドを持った、他のチームだったらすぐレギュラーになるような選手がファームで虎視眈々とレギュラーを狙う状態を恒常的に維持しなければなりません。

―― 補強の具体的な手立ては。

後藤 補強の中ではFAもドラフトもあるし、海外の優秀な選手を取ることでチーム力は上がります。2年後、3年後を見据えながら常に作る必要があります。高校生については、5年後のチームの姿を見ながら、積極的にホークスに呼んでこなければならない。それと、ホークスから他球団に行った選手が大活躍しているのは少し辛いものの、すごくうれしいことです。そういった素材を提供できていることが、僕らの編成の底力だと思っています。うちのチームの選手には時々、みんなぜひFA権を取って、取ったら値踏みをしろ、と言っています。FAは企業の株式公開のようなもので、自分の価値が第三者に評価される唯一のタイミングです。そういうステータスになる選手を、多く育てることが目標でもあります。活躍の場が仮にホークスでなかったとしても、ホークスがさらに認知されていく上では重要なステップだと思います。

―― 野球の世界一を決める場として国別ではWBCがあります。しかし、サッカーなどとは違い、クラブチームの世界一を決める場は現在では存在しません。台湾や韓国などを含めたアジアの中でクラブチームが交流すれば、自国で「ワールドシリーズ」をやっている米国も目を向けてくれるという考え方でしょうか。

後藤 「世界一」については、いろいろな解釈があっても良いと思います。クラブチーム同士が本当にガチンコで戦えるような時代がいつか来るかもしれませんしね。中長期的に、クラブチーム世界一にチャレンジできるようになるのであれば、期待したいです。一方、広い意味で、ホークスが福岡発で全国ブランドになり、その先にはグローバルブランドになっていける日がこなきゃいけないと考えています。ソフトバンクが福岡の人たちからさらなる期待感を持ってもらうために、大きな視野でホークスを育てていきたいと思います。

 

ソフトバンクホークスの今後 ”人ではなく組織で動く会社の基盤を継承し続ける”

 

―― ソフトバンクグループの財務担当役員でもあるのでお伺いします。傘下に収めた米スプリントが苦戦していますが、今後の対応はどうお考えですか。

後藤 米国で6千万の顧客を持つこのビジネスをしっかりターンアラウンド(反転)させて、結果を出していくことが僕らにとって一番重要だと思います。米国内での強敵に追い付くためのさまざまな施策が見えてきていて、ここからが一番楽しいところです。買収直後は米国の他社との合併も視野に入れていたため、単独でやっていくのか合併をベースにやっていくのか迷う時期が1年ぐらいありました。これでスピードが鈍ったのはある程度仕方ないと考えています。そこを去年の夏に刷新して経営陣も入れ替えました。新経営陣はここまでのところ、非常にうまく機能していると思います。

20151006_HAWKS_P03―― 孫正義社長はグーグルから招いたニケシュ・アローラ副社長を後継者候補に据え、アローラ氏もソフトバンク株600億円分を取得する意思を示しました。こうした継承問題に関するご意見や財務面での対応についてはいかがですか。

後藤 まだまだ交代する時期ではないと、孫さん本人も思っているでしょう。われわれの会社の財務の状況自体は何も大きく変わっていません。新たな戦略的投資はニケシュのチーム中心にどんどんやっていくのでしょうから、財務の面でそれをサポートし切る投資余力をちゃんと維持できていると思います。ソフトバンクは既に人ではなく組織で動いている会社です。仮に新時代がやってきたとしても、引き継ぐべき人材がしっかりとソフトバンクのDNAを継承してくれると思います。構えはもう、しっかりとできています。

 
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