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データ改ざんに揺れる旭化成 新たな発覚の可能性も!?

旭化成社長 浅野敏雄氏

横浜市のマンションが傾き、その工事データが改ざんされていた問題で、杭うち工事を担当した旭化成建材とその親会社である旭化成が謝罪会見を行った。途中、同社の浅野敏雄社長が涙ながらに謝罪する場面もあったが、問題はいまだ何ひとつ解決していない。 文=本誌/古賀寛明

旭化成のコンプライアンス問題に発展したデータ改ざん事件

浅野敏雄・旭化成社長

浅野敏雄・旭化成社長

10月20日、都内で行われた会見で、旭化成の浅野敏雄社長は、子会社である旭化成建材の施工した基礎部分の杭工事で起こった不具合と、工事データの改ざんがあったことについて「居住者の皆さまの安全安心を最優先し原因究明していく。今回の出来事に深く反省している」と謝罪した。

 ことの経緯はこうだ。2006年に分譲された横浜市都筑区にある4棟、全戸で705世帯が入る大型マンションで、昨年、住民が隣の棟とのずれに気付いたことから、今夏、販売会社である三井不動産レジデンシャルと施工会社である三井住友建設が原因究明を行った。それによってマンションの傾斜とその原因が基礎工事の段階にあることが分かり、10月14日に公表された。

 その時点で発覚したのは、施工会社三井住友建設の2次下請けにあたる旭化成建材が担当した基礎部分に杭を打ち込む作業で、この棟に使われた52本の杭のうち、6本が強固な地盤である支持層にまで達していなかった。

 また、2本についても支持層まで達してはいるものの、打ち込みが不十分であることが分かった。

 さらに、杭が支持層にまで到達したかを示す電流計のデータを転用、加筆していたこと、加えて地中に安定させるために杭の先端部分に、セメントミルクを流し込むが、その流量計についてもデータの転用や改変があったことも分かっている。

 マンション全体で使用された473本の杭のうちデータ不備の数は重複を除いて70本にも上る。

 発覚当時は、売主である三井不動産レジデンシャルと施工元請業者である三井住友建設に非難が殺到したが、支持層にまで到達していない杭があったこと、何よりデータの改ざんが発覚したことで、旭化成建材はもちろん、親会社である旭化成のコンプライアンス問題にまで発展した。

 そんな中で行われた旭化成の会見は、当然のことながら、傾斜の原因である杭の状況とデータが改ざんされた経緯について質問が集まった。

 今回施工された「DYNAWING」工法という杭打ちの作業は1チーム8人で構成され、2チーム体制で行われていた。そのうち片方のチームだけに改ざんが行われたことが分かっている。

 中でもデータを確認する立場である現場代理人に疑惑が集まった。社内調査では現場代理人は「すべて支持層にまで達していた」と述べていたようだが、一方で病欠したこともあり、その時のデータが紛失していたことなどを理由にデータ転用は認めているという。

 10年前の工事であり記憶があいまいになっている点もあるため、いずれにせよ、今後はデータの改ざんが行われた杭70本について調べていき、原因を突き止めていくことが解決の第一歩となる。

 10月14日付で、会見にも出席した旭化成の平居正仁副社長を責任者に調査委員会を発足し原因の究明は始まっている。一方でマンションの居住者からは、旭化成主導の調査委員会では客観性が担保できないと、外部委員会の設置も求められており、弁護士をメンバーとする外部調査委員会も早急に設置する予定だ。

データ改ざんによって旭化成が負うダメージ

 今回の問題は旭化成という企業ブランドを揺るがす事態であることは言うまでもない。売上高1兆9千億円のうち、最大のセグメントは化学部門であるが、その次に住宅・建材部門がくる。6千億円以上の売り上げはシェア3割を超え、営業利益でみると住宅部門は稼ぎ頭だ。

 「へーベルハウス」と言えば、先の鬼怒川決壊の時にも流されなかったことで、ネットでもその信頼性を称賛されていたが、杭工事が直接関係する話ではないものの、この一件でブランドは大きく傷付いた。

 会見でも、こうした事態をどう払しょくするのか質問された浅野社長は、悔し涙を浮かべ「グループを挙げて信頼回復に努めたい」と言うしかなかった。

 ただ、過去10年間に旭化成建材が担当した杭打ち作業は3千棟にのぼる。現在、調査に入っているが、疑惑の持たれている現場代理人が担当した物件が他にも40棟あったことが判明している。仮にもし、さらなる不具合が見つかり、それがミスでなく故意に行われたとしたものならば、旭化成の負うダメージは計り知れない。

 仮の話が続くが、もし意図的に改ざんが行われ、そこに至る原因が工期のプレッシャーであった場合、非難の矛先はすべての関係者にまで広がるが、問題はより深刻になる。杭の不具合がもたらすであろう危険を、住まいというもっとも安心・安全を求める場所であるにもかかわらず、経済合理性の名のもとに、現場が声を発せられない「空気」があったということである。

 そうなると、今回の関係会社だけの問題ではなくなり、日本のどこの組織にも起こり得る、社会全体にはびこる病と言える。既に東洋ゴム工業のデータ改ざんや東芝の不適切会計といった歪んだ組織の論理や、利益(あるいは損失)の前では、正しいことも言えない空気が起こした事件がそれを物語る。

 あくまで最悪のシナリオではあるが、今回の原因いかんでは考えなければならない問題であるはずだ。