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低視聴率のフジテレビが頭抱える「やらせ株主総会」訴訟の行方

ニュースレポート

日本では「シャンシャン総会」が主流だった時期がある。質疑応答や議論がなく、短時間で終了する株主総会のことだ。一方、株主が質問しているにもかかわらず、一方的に打ち切ってしまうのは、さらに悪質。フジ・メディア・ホールディングスはその疑いで訴えられている。 文=ジャーナリスト/横山 渉

 

深刻なフジテレビの不調

 

 フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)は10月30日に4~9月期決算を発表した。売上高が前年同期比1・7%増の3117億円、営業利益が同48・5%減の49億円。純利益は同58・2%減の50億円と増収減益だった。

 「非常に厳しい決算」(嘉納修治社長)になった原因は、グループ中核のフジテレビだ。単体の営業利益が10億円の赤字で、テレビ事業が9月中間期で営業赤字となったのは、1997年に上場して以来初めて。放送収入、すなわち広告収入の落ち込みは視聴率低迷によるものだが、回復の道筋は見えていない。例えば、今秋のドラマ、「オトナ女子」「サイレーン」「無痛~診える眼~」は平均視聴率がいずれも7~8%と苦戦している。

 

株主に訴えられたフジHD

 

 そんなフジHDが“やらせ株主総会”の疑いで揺れている。同社の株主2人が、株主総会決議取り消しを求めて同社を訴えているのだ。問題となっているのは、2014年6月の73回総会と15年6月の74回総会の2件だ。

 原告によれば、14年の総会では1405人の総会参加者のうち質問が認められた16人の中で、9人が従業員株主だったという。つまり56%が八百長質問者だったということになり、本当ならば、一般株主の質問権が侵害されたといっても過言ではない。

 これは内部告発によって明らかになったもので、その9人のうち8人の名前と役職は特定されているが、フジHDは株主のプライバシーを理由にその9人が従業員株主なのかどうか、認めもしないし否定もしないという態度だ。11月5日に行われた8回目の口頭弁論では、裁判長が認否を促す場面もあり、認否しないのであれば9人を証人として呼ぶこともあり得るとした。

 原告側は、議長を務める日枝久会長の議事運営も不当であるとしている。日枝会長は総会議長不信任など会場の株主から出された動議の採決で、会場の株主の賛否を数えることもなく、従業員株主らの拍手だけで「動議は否決された」としていたが、これは著しく不公正な決議方法だという指摘だ。

 フジHDは「議長は大株主や他の株主の賛否を確認して採決した」と反論するが、裁判長はフジHD側に立証責任があるとしている。

 原告側はこれまで、これらの不明点を明らかにするために、株主総会のビデオ映像を提出するよう再三求めてきた。フジHDはこれを拒否してきたが、裁判長の要求もありしぶしぶ提出。しかし、それは会場後方遠くから撮影した映像で、質問した株主が誰なのか分からないものだったという。また、議長が実際に大株主を確認していたのかどうかも不明な映像だった。こうしたフジHDの態度に対して、原告側は「株主と裁判を舐めきっている」と憤りを隠さない。

 

05年の株主総会では顧問弁護士が“やらせ”を注意

 

 今年6月25日に行われた第74回総会は、1人の株主からの質疑打ち切り動議という異常な形で幕を閉じた。この株主は「土田」と名乗っていたが、原告はこの「土田」が従業員OBだとして追及している。

 フジHDは過去にも、同社関係者に質疑打ち切り動議を出させていたことが明らかとなっている。月刊誌『世界』(岩波書店/08年11月号)によれば、05年の総会後に当時フジテレビの顧問弁護士(この裁判で「鳥飼重和弁護士」と明らかにされている)は、日枝氏に対して次のような意見書を送っている。

 「質疑打ち切りの動議を出したのは、社員(引用者注=従業員)株主のように見えた、ということです。これが本当であれば、会社が意図的に一般株主の発言の機会を奪ったということになりかねません。そういうことが本当だとなれば、決議取消事由に該当する可能性が高く、前代未聞の会社不祥事となります」

 フジHDはこの05年を最後に、従業員株主に質疑打ち切り動議を出させる手段は取らなくなった。しかし、今年の総会で原告が指摘しているのは、「従業員株主」ではなく「従業員OB株主」ではないかという点だ。従業員OBには「業務命令」が成立しない点で大きく異なる。フジHDが「土田」という株主に依頼したという事実を、原告は立証する必要が出てくるだろう。

 

フジテレビの姿勢に通じる?株主軽視の姿勢

 

 法的な側面から今回の裁判を補足しておく。会社法は、830条で「株主総会等の決議の不存在」や「法令違反を理由とした決議無効」の確認を求める訴えを起こすことができる規定を設けているほか、831条で決議の取消訴訟の規定も設けている。決議の取消事由となるのは、①招集の手続または決議方法が法令もしくは定款に違反しまたは著しく不公正なとき、②決議の内容が定款に違反するとき、③決議について特別な利害関係を有する者が議決権を行使したことにより著しく不当な決議がなされたとき、となっている。

 原告は、831条に基いて、フジHD株主総会の「決議方法が法令に違反し、著しく不公正であった」として、総会決議の取消を求めている。

 一般の個人株主を軽視した“やらせ総会”にこそ、今のフジHDの経営姿勢が端的に表れているのではないか。それは、視聴率どん底のフジテレビが視聴者を舐めきっている姿勢に、どこか通じているというのは考えすぎだろうか。

 
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