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有望な新規上場10銘柄を寸評――藤本誠之(SBI証券シニアマーケットアナリスト)

新規上場で一番の注目銘柄は?

 売却総額は約1兆4千億円と、直近では最大となった。予想配当利回りは日本郵政ゆうちょ銀行は年3%台、かんぽ生命保険は2.5%と、東証1部上場企業の平均値2%より相対的に高く、株価純資産倍率(PBR)は割安(かんぽ生命は0.6倍台、日本郵政とゆうちょ銀行は0.4倍台)なことも評価できる。

 11月4日の上場だったので、15年末には東証株価指数(TOPIX)に組み込まれる。15年末、あるいは12月中旬の短期で考えるとインデックス買いが入るので、そこでいったんピークを付け、16年以降は軟調に推移するだろう。

 中長期的に見ると、最も注目されるのは日本郵政。同社は、保有していたゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式の11%を今回売却した。だが残り89%も50%をめどに順次売却していく。

 日本郵政は売却で得た資金を自社株買い、実質、国に返却して東日本大震災の復興財源に充てるので、目先は日本郵政の需給が締まり、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は悪化する。

 日本郵政は全国に2万4千の郵便局網を有し、全上場企業中6番目に当たる優良な不動産を多く抱えているので、今後大きな成長が期待できる。そもそも従業員約40万人(非正規含む)を擁する企業は国内を見てもそうはない。

 2.3兆円に及ぶ人件費をコントロールするだけで利益が出て来るし、この従業員の力を利用して新たな金融商品の販売もできるだろう。

 日本郵便はダイレクトメールを出せるし、郵便物にさまざまなチラシなどを同梱することも可能だ。郵便事業自体は赤字だが、11月に行った中古車売買のガリバーインターナショナル以外にも、他社との提携を積極的に行っていくだろう。

 日本郵政は既に豪トール社を買収しているが、今後もM&Aを含めた国際物流事業の強化を西室泰三社長は明言しており、これらを考えると、日本郵政の今後は面白いと思う。

 

今の時流に上手に乗ったユニークな企業が新規上場

 

 この他、15年の新規公開も時流に乗った企業がいくつか出てきた。

 ビッグデータ統合管理などのALBERT、社労士向けソフト開発のエムケイシステムはマイナンバー関連で急騰した。

 シリコンウェハー再生加工のRS Technologiesは、もとは中堅化学メーカー、ラサ工業の主力事業の一つだったが、中国・福建省出身の方永義社長がRS Technologiesを設立して買い取った。

 大企業の一部門でうまくいかなかったが、ベンチャースピリットを持って経営に当たることで順調な業績を上げ、再生ウェハーでは世界一となっている。

 外食産業ではヒューマンウェブ海帆の2社。前者は牡蠣を主体とするオイスターバーの経営と牡蠣の卸売事業だ。

 オイスターバーはチェーン展開が難しいが、ここは15年1月現在、直営を28店舗展開し世界一。国内に牡蠣の種苗・生産拠点を持ち、海洋深層水で洗うことで雑菌を除去。

 さらに100%雑菌のない牡蠣を養殖するため、沖縄の久米島に陸上養殖実験施設がある。沖縄はアジアにも近く、今後、海外輸出も視野に置く。

 一次産業である牡蠣の生産事業、二次産業である牡蠣の加工事業、三次産業である牡蠣の卸売・小売販売事業を一貫して行う。一次、二次、三次を乗じて六次産業化を確立している。

 海帆は居酒屋(「なつかし処昭和食堂」など)を中心とした飲食業だ。名古屋が本社だが、愛知・東海地区はトヨタなど製造業が非常に元気で有効求人倍率が高く、居酒屋での働き手を確保するのが難しい。

 そこでこの会社は、新入社員の6~7割を熊本や鹿児島などの九州出身者で手当てしている。

 九州にまず出店し、地元出身者を社員にし、その中から名古屋地区への異動可能者を探すというもの。店舗はロードサイドが多く、集客のハードルが高いため、宴会需要のある事務所や社員寮と店をバスで送迎することにした。宴会利用はロスがなく利益率が高いだけでなく、飲酒運転もなくなり、顧客からも好評という。

 さらにファミレスの子どもや家族需要も取り込んでいる。行列を嫌う顧客のために、店は混雑し過ぎないよう努めてアルバイト店員の退職防止にも効果を発揮し、繁閑の差を少なくすることで効率化を図っている。

 ウェブ関連で面白いのはイード。もともとは自動車メーカーのウェブサイトからスタートしたが、M&Aによってニッチだが特定の顧客を有するいろいろなウェブサイトをそこに加えて、独自のプラットフォームを作り上げた。

 元のサイトは1社では赤字でも、ここは自社で数十のサイトを運営しているので、コストが非常に安くなり、顧客同士も紹介することで、すぐに黒字化するようになる。元のサイトに付いていた広告主は、そのまま引き継いでいるので、広告価値も高くなるというビジネスモデルだ。

 携帯電話のカバーやアクセサリーの企画・販売を行うHameeにも注目だ。ファブレスで製造は協力会社が行う。家電量販店などでも販売しているが、ここのもう1つの柱がEC事業。楽天やアマゾンなどのショッピングモール向けクラウド型業務マネジメントサービスを提供している。

 国内だけでなく、海外のサイトもシステムに組み入れているので、今後はそこでの出店も期待できると好評だ。

 

新規上場銘柄のテーマの1つ「訪日外国人観光客の取り込み」

 

 日本スキー場開発は国内のスキー場の運営会社。日本全国には100カ所くらいスキー場があるが、消費者のスキー離れでどこもあまり儲かっていない。

 1カ所ではうまくいかなくても、ここは各地のスキー場を買収することで、マネジメントを共通化し、バイイングパワーも強くなってコストを低減することに成功している。売り上げの基本はリフト券とレストランなどの飲食、土産物などの販売だ。

 日本のスキー場は海外に比べて雪質がいいと訪日外国人観光客に好評で、最近はスキー客の1割ほどを外国人が占める。20年東京五輪の次は、22年に冬季五輪が中国で行われる。

 そこを見込んでこの会社では、中国語のできるインストラクターや、中国人インストラクターの育成にも積極的で、海外需要のさらなる取り込みにも意欲的だ。

 「塾ナビ」を中心とした教育関連ポータルサイト運営のイトクロ。塾などを選ぶ場合は口コミサイトなどを検索することが多いが、保護者などがそこから選んで資料請求すると塾などに料金が請求される仕組み。塾はこれまで大量にチラシをまくなどして広告してきたが、その効果が薄れてきており、この成果報酬型のモデルが評価されている。

 プラント解体工事のベステラは、いわゆる解体業だが、いくつもの特許を保有する。

 例えばガスタンクの解体では、「リンゴ皮むき工法」で鉄板を細く切って行く。鉄板はつながってゆっくりとタンクの下に重なり、最後にそれを切れば移送も簡単だ。

 最近はこれをロボットが行っており、さらなる安全化と効率化を図っている。作ったところが壊すと時間とコストがべらぼうに掛かるため、作るのと壊すのは異なったノウハウが必要という。

 日本は高度成長期の年間50兆円にも及んだ建設投資によって作られた建築物の更新時期を迎えている。原発の停止で本来は引退すべき古い仕様の火力発電所を今後、順次取り壊す必要があり、原発自体も廃炉の作業が迫っている。この会社の活躍の場は多くなりそうだ。(談)

 

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