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育児支援でアメリカ女性の活躍を支える―企業の福利厚生としてのチャイルドケア・ビジネス

 米国では有配偶者で子供のいる女性の3人に2人が雇用されており、2012年には38.1%の女性が夫よりも多く稼いでいる。

 しかし、高学歴で有能な女性であっても、育児から解放されるわけではない。出産後は彼女たちが働いている間、誰かが子育てを担う必要がある。米国では日本のように公的な学童保育は存在しないが、0〜6歳児を対象とした乳幼児保育から、12歳までの学童保育に相当する就学児童を対象としたケアを一貫して提供している民間サービスがいろいろある。

 その中でも、全米のほか、英国、アイルランド、オランダ、カナダ、インドなどに750ヵ所以上のチャイルドケアセンターを展開しているのが1986年創業のブライトホライズン社(Bright Horizons)だ。[提供:経営プロ]

企業の育児支援は広義の福利厚生・業務支援

 

 ブライトホライズン社の特徴は、企業がクライアントとなり、従業員であるワーキングペアレントの子供たちに対して総合的なケアセンターを提供するというビジネスモデルを提供していることだ。

 クライアント企業は900社以上にのぼり、その中にはマスターカード、プルデンシャルグループ、シティグループ、シカゴ大学、UCLA、グーグル、三井グループ、スターバックスコーヒーなど、日本でもお馴染みの企業も名を連ねる。その多くがワーキングマザー誌の働く母親にやさしい会社100に選ばれている。

 日本では、企業が従業員の子育てや教育の費用を負担することは考えにくい。

 しかし米国は私立の保育所や教育費が日本より高いので、高額の教育費と給与との兼ね合いから働くことを諦めて専業主婦になったり、家庭と両立しやすいように起業する女性も少なくない。

 そのため企業側は「保育負担によって有能な従業員を失ったり、生産効率を低下させたりすることは会社の利益損失」と捉え、広義の従業員福利厚生、業務支援としてブライトホライズン社のクライアントとなっている。

 その中の一つ、ジョンズ・ホプキンス大学医学部の副学部長は「既に子供のいる人だけでなく、これから子供を持ちたいと考えている従業員、それは教授だけでなく、大学で働くテクニカルスタッフや秘書といったあらゆる職種のスタッフを含んでいるのですが、ブライトホライズン社に頼れるという事実は非常に大きな意味を持っています。彼らはどんな時も、業務を中断することなく安心して働くことができるのです」と語っている。

育児支援は企業ニーズを満たす新たなビジネス

 

 ブライトホライズン社は「ファミリーセンター」と呼ぶ施設を各地に設け、保育園に相当する乳幼児ケアから、小学校児童の放課後、長期休暇中、両親の出張旅行時ケア等、幅広い領域をカバーしている。

 また、子供が病気の時に利用する病児保育も提供しており、クライアントになっている企業の従業員ならば誰でも最寄りの施設を利用することができる。

 施設では、乳幼児(0〜3歳)、未就学児童(4〜6歳)、それぞれに適した設備や指導員、カリキュラムが用意されている。

 また、日本の学童保育に相当する 6〜12歳の小学生に対しては、放課後、学校が休みの日、夏休み等において、学校とは違った雰囲気でくつろぎながら、「個々の子供に合った学習プログラム」を提供している。

 さらに、野外活動やコンピュータによる探索、劇場ワークショップ等も経験できるようになっている。同社によれば、クライアントの満足度は98%と非常に高い。

 男女ともにフルタイムで働く割合が増えれば、教育も含め、育児・子育てがしやすい企業や法人に所属していることは、仕事の面白さや給与の額以上に魅力的な要因になりうるだろう。

 日本でも「女性活躍推進法」が2016年4月1日から施行されるが、福利厚生として運営する総合的な子供ケアは、企業ニーズを満たす新しいビジネスモデルとして注目されるのではないか。

【経営プロ編集部 ライター:島崎由貴子】

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