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「ポケモンGO」は所詮、あだ花か 任天堂のゲーム哲学――岩田 聡・任天堂元社長インタビューより

岩田 聡・任天堂元社長インタビュー

今、街に出れば老いも若きもスマホ片手に「ポケモンGO」に夢中になっている。ゲーム開発を行ったのは米国のベンチャー企業だが、もちろんそこには任天堂も絡んでいる。昨年、急逝した岩田聡氏は、天国からこの盛り上がりをどんな思いで見ているのだろうか。過去の貴重なインタビューから、岩田氏のゲームに懸ける思いを振り返る。(『経済界』2009年1月13日号)

必需品でないものが選ばれるためには

── ゲーム機は携帯電話と競合するといわれていますが。

岩田 お客さまの有限な時間を使っていただくという意味においては、いろいろなものと競合しております。単純に携帯電話だけではなく、テレビや娯楽施設などさまざまなエンターテインメントの中から、あえてビデオゲームを選んでいただく理由付けをしなければなりません。ですから、携帯電話に限らず、ソニーさんやアップルさんという狭い範囲ではなく、お客さまの面白いと思うものの中でトップグループにいられるかどうかが問題なのです。

 もともと必需品ではないので、携帯電話で遊べるゲームと大差ないものしか出せなければ負けるわけです。携帯電話はもう必需品のように皆さまお持ちなのですから。圧倒的に面白いと思ってもらえなければ、不便な思いをしてまで別のハードを買ってもらえません。

── 必需品ではないゲーム機が選ばれる条件は。

岩田 お客さまに、いまだかつてない驚きや喜びを感じていただけるかどうかがすべてです。娯楽すべてに通じることだと思いますが、未知の魅力を出さなければ受け入れてもらえません。手に取ってみて「何だ、この程度か」と失望されてはいけないのです。DSやWiiが爆発的に売れたのは、ビデオゲームとは縁がなかった人たちが「これって面白いじゃない」と手に取ってくださったからです。

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岩田 聡(いわた・さとる) 任天堂社長(当時)〈1959~2015〉北海道生まれ。東京工業大学工学部卒業後、HAL研究所に入社し、ゲームプログラミングの世界に入る。その後、社長に就任。2000年に請われて任天堂に入社。02年に42歳で社長に抜擢された時はニュースになった。その後も「ニンテンドーDS」や「Wii」などの大ヒットを生み出すが、15年急逝。

 ビデオゲームの売れ行きは、景気動向の影響を受けていません。景気動向よりも、われわれのお客さまへの提案が魅力的だったかどうかが問題なのです。

 米国のゲーム機の10月の販売動向が出ました。Wiiが先月80万代売れました。これは年末商戦を除いて、1カ月に売れたゲーム機の最高販売台数なのです。この大不況の影響も関係がない証左です。ただ、お客さまに驚きがなければ、景気がいくら良くても売れません。

── いつも驚きを提供しなければいけないとは大変な商売ですね。

岩田 全くそのとおりです。素晴らしい商品を作っても、飽きがきて半永久的に売れることはありませんから、強迫観念は常にあります。世の中のほとんどの商品はマーケティングがあり、お客さまの要望に応えるものを出すのが常ですが、われわれは驚きを提供するのですから、(お客さまの意見を)聞くことは無駄になります。

── 必需品でないゲーム機に驚きを与えるために必要なことは。

岩田 アイデアのほとんどは失敗します。その中で数少ない成功があるのは、お客さまがニコニコ喜んでくださる、というインセンティブがあるからです。とにかく、喜んでもらいたいと思う情熱から作り上がるのだと思います。必需品でないゲーム機が社会に役立つことは、大きな動機付けです。お客さまに受けるまで、とにかく人間を観察し続けて、試行錯誤を繰り返すのです。

── 日米欧以外の海外展開は。

岩田 米欧が想像以上のニーズがあったので、新興国などに力を割くことができませんでした。われわれの生産が追いついていけば、アジア、ロシアと力を入れるつもりです。

── 娯楽は万国共通だと。

岩田 基本的には人間の本質は共通だと思います。マリオをいちばん初めに作った時には、海外で受けることなど考えていませんでしたからね。

(構成/本誌・古賀寛明)

 

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