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携帯販売認定制度が早くも形骸化の懸念――総務省

携帯電話大手3社の販売代理店などでつくる全国携帯電話販売代理店協会(全携協:東京・恵比寿)が、安心して携帯電話の契約や相談ができる販売店であることを示す業界独自の「あんしんショップ認定」制度の運用を10月から始めた。

携帯電話契約をめぐるトラブルが社会問題化するほど多く国民生活センターが総務省に是正を要請する状況の中、同省の後押しもあり、携帯ショップ選別に重い腰をあげた格好だ。10月からショップの審査を受け付け、来年1月1日には全国約2千店をめどに認定マークを付与する予定だ。しかし、業界の最大公約数的な優良ショップ制度が本当にショップの優劣を利用者に提示できるのかどうか、早くも不安視されている。

あんしんショップ認定制度は、消費者保護の徹底や関連法制度の順守、携帯電話の不正利用防止など9項目の認定基準を徹底する誓約書を提出した全携協加盟店に対して、認定マークを付与する仕組みだ。

全携協の竹岡哲朗会長は「最終的には協会加盟のキャリアショップ全店が認定されるのが目標」と話す。全携協の会員は150社。キャリア店舗だけでも7000店、総店舗数8500店が本当に「安心できるショップ」に“衣替え”し、苦情は実際に減るのだろうか。

認定基準は外部有識者らからなる運営委員会で議論した上で、認定取消などの処分を含めて決定した。運営委員の北俊一・野村総合研究所プリンシパルは「認定マークは、ショップの自信と覚悟の証し。消費者の厳しい視点がマークの価値を上げることになる」と期待を示す。同制度は総務省の有識者会議でも度々創設が求められてきたが、各社の思惑が衝突。業界統一の認定基準づくりは難航してきた。しかし、契約内容を書面で示すことなどを販売店に義務付ける改正電気通信事業法が施行され、同法の順守状況を総務省が確認することになったことで議論が収束した経緯がある。

実際の制度運営は、全携協に加えてキャリア団体の電気通信事業者協会(TCA)や携帯各社、外部の有識者が参加し、総務省もオブザーバーとして参加することで制度の中立性や透明性を確保する腹づもりだ。

代表的な苦情には、マイクロSDカードの無断割賦販売やオプションサービスを説明せずに複数契約させたり、端末値引きの条件として不要なサービスを複数契約させられることなどがある。しかしその背景には「携帯電話を売るだけでは商売が成り立たない」(全携協幹部)という業界が抱える事情もある。

市場が飽和状態になる中で携帯電話ショップは端末を売るだけでは経営が成り立たない。ショップの収益構造改革なしに一人歩きする認定制度が有名無実化するのはそう遠くないかもしれない。

 
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