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現実味を帯びてきた年明け解散総選挙シナリオ

長期政権を獲得し憲法改正への時間を確保

10月4日の衆院予算委集中審議でのことだ。

衆議院では、「1票の格差」をめぐり現在審議会が来年5月27日までに小選挙区の区割りを見直す改定案を勧告することになっている。

イラスト/のり

イラスト/のり

ところが、安倍首相は、この日の予算委員会で野党の質問に対して、「1票の格差」是正のための区割り見直しの前に衆院を解散することについて、「公職選挙法の規定の下で否定されるものではない。従来から一定した答弁だ」との見解を示した。つまり、来年5月以降に見直しに着手する前でも、解散・総選挙はやってもいいと宣言したのだ。

安倍首相が早ければ年内、または年明け早々通常国会冒頭で解散するのではないかとの憶測が永田町に流れ始めている。

安倍首相にとって解散・総選挙が持つ意味は「総選挙に絶対的に勝てるタイミングを見計らって、圧勝、それを大義に長期政権を手に入れてたっぷりと時間を確保した上で首相の悲願である『憲法改正』を成し遂げるため」(首相側近)である。

改憲は、国会で草案を議論し、国民投票まで考えれば2年や3年はかかる。しかも、天皇陛下が生前退位のご意思を示されたことで、改憲よりも前に皇室典範について優先的な議論も行わなければならず、ますます安倍首相はたっぷり時間を確保しておく必要が出てきたのだ。

「今、二階俊博幹事長の指示で党内で総裁任期延長の議論は始まっているが、安倍首相個人のための延期だと党内や世論を説得しにくいから大義がいる。それは選挙の大勝利。任期を例外的に延長した中曽根元首相の場合も、その根拠になったのは衆参同日選での圧勝だった」(首相に近い自民党ベテラン議員)

また、安倍首相に近い自民党幹部が言う。

「何より12月15日に決まった日本での日ロ首脳会談です。首相の地元である山口にプーチン大統領を招いて、北方領土問題の歴史的な前進を目指して外務省も動いています。その成果をもって総選挙に臨めば国民の大きな支持が得られます」

日ロの北方領土交渉は「そんな簡単な話ではない」(元外務副大臣)ものの、「例えば帰属の確認さえできれば、そのあと返還の具体的な道筋など随分先になったっていい。今後に希望を持たせる結果なら、選挙には好材料だ」(外務省OB)という。

民進党人事の失策が早期解散の呼び水に

さらに、勝てる絶好のタイミングを安倍首相に提供してくれたのが、何と本来なら敵であるはずの民進党の新体制なのだ。

自民党幹部は、「蓮舫氏が初の女性代表になって民進党が劇的な変身を見せるかもしれないと警戒していたが、全く逆で、むしろわれわれにチャンスをくれたようなもの」と話す。

蓮舫氏は、新執行部の幹事長になんと民主党政権を下野させた最高責任者の野田佳彦元首相を就け、他の3役なども含め執行部を野田政権下の主要メンバーにした。もっとも蓮舫氏自身が野田グループに属しており、信頼関係はあるかもしれないが、いくら何でも、「人事音痴だ」と自民党選対幹部議員は言う。

民進党人事については、なんと民進党の議員自身も「早期解散の呼び水になってしまった」と自虐的に話している。元副大臣経験者は言う。

「有権者がいまだに旧民主党の負の影を引きずっている中で、下野させた責任者の野田さんというのは先祖がえりです。私や同じグループの仲間は、人事の手続きの両院議員総会などは出ずにちょうどシルバーウイークだったこともあって選挙区に張り付きました。安倍さんはこんな人事を見て早期解散を打ってくると思うからです」

民進党の足元がこんな敵失状態なのだから、安倍首相が好機と思うのは至極当然ではある。

さらに、連立を組む公明党の動きも怪しい。公明党は、9月17日に全国大会を開催したが、代表に再選された山口那津男氏は就任の挨拶の中で「衆院の解散・総選挙が視野に入ってくる。もとより衆院選は『常在戦場』の心構え」。また、同じく再任された井上義久幹事長も、参加議員からの質問に対して「年末以降は(任期の)折り返し(の2年)になるので、『常在戦場』の構えをより強くしなければならない」と述べた。

公明党幹部は「山口代表や井上幹事長という立場の人たちが公の場で、あそこまで『常在戦場』という言葉を使うのは、官邸や創価学会などと解散の情報や空気を共有していると見ていい」と話し、学会の幹部の1人も、「来年の夏には都議選がある。半年前からは都議選1本。早期というならワンチャンス。12月末から年明け早々」と話す。

早期解散シナリオは、現実味を帯びつつある。

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