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不良債権化のリスク抱えるアパートローンに警戒感――金融庁

アパートローン 金融庁が貸家業向け融資(アパートローン)の監視を強め始めた。低金利を背景に富裕層などの借り入れ需要が拡大し、地方銀行を中心に融資が急増。しかし人口が減って空室が増え、返済が滞ることになれば、金融機関の財務にも悪影響が出かねない。金融機関の実態調査を通じ、適切なリスク管理を促す構えだ。

アパートローンが増えだしたのは、2015年の税制改正で相続税の課税対象が広がったためだ。このため、節税を目的に多額の借り入れをして、アパートやマンションの経営に乗り出す人が増えた。

アパートローンは競争が激しい住宅ローンに比べて高めの金利が見込めることから、地銀などが収益源として着目。日銀によると、16年9月末の国内銀行のアパートローン残高は前年比4.5%増の22兆224億円だった。

ただ、借り手がいるうちはいいが、人口減少で空室が増え、経営が苦しくなるアパートも出てくる可能性がある。そうなれば、金融機関にとっては、「不良債権」となりかねない。

しかしアパートローンを利用するのは担保を持つ富裕層が多く、「物件の収益性を度外視し、安易に貸し出しているケースも少なくない」(業界関係者)との指摘もある。

建築請負業者が提案書などを作成してアパートローンを勧めるケースもあるという。金融庁はこうした書類も含めて地銀側に提出を求め、将来の空室率や家賃変動のリスクをどのように伝えているかを調べる。

金融庁は昨年10月に公表した「金融行政方針」で、低金利環境が続く中、金融機関が収益拡大を求め「海外向け貸出や外貨建て資産運用、長期債への投資、アパートローンを含む不動産向け与信を増加させるなどの動きが見られる」と指摘した。

その上で「こうした動きが、経済・市場環境が変化した際、金融機関の健全性に悪影響を及ぼさないか検証する」方針を明記。「経営管理・リスク管理態勢について金融機関と深度ある対話を行う」とした。

単に貸出残高を拡大させることで収益を維持するのではなく、安定的な収益基盤に基づく持続可能なビジネスモデルを構築することを求める狙いだ。

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