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消防・警察から山岳団体まで。山岳遭難対策関係者が評価したヒトココ――久我一総(オーセンティックジャパン社長)

オーセンティックジャパン社長 久我一総氏

九州松下電器(現パナソニック システムネットワークス)に就職し、バイヤーとしてマレーシアのメーカーからの部品調達に奔走、イギリスでは現地の責任者を務めた。担当していた商材であるPBXには『HITOCOCO(ヒトココ)』の原型となる技術があった。その技術を使えば、人を探し、助けられるかもしれない。社内の技術者と語った夢を現実にするために、久我氏は10年間の会社員生活にピリオドを打ち、オーセンティックジャパンの代表として商品開発に取り掛かった。

 

オーセンティックジャパン 久我一総代表が、ヒトココの開発において念頭においたこととは

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くが・かずふさ 1978年生まれ、福岡県出身。西南学院大学文学部外国語学科英語専攻卒業後、2002年パナソニックシステムネットワークス入社。SCM部門の責任者として英国子会社へ出向。10年に帰国後、商品企画部門へ異動。北米向け無線機器を担当。12年に同社を退職し、起業。現在に至る。

 

 パナソニック システムネットワークス(旧:九州松下電器)時代の同僚である技術者、芦塚氏、飯田氏のバックアップを得て、開発が本格的にスタートした。コンセプトはかつて自身が開発を手掛けたコードレス電話機の無線通信技術を応用した、親機が子機をIDで探せるサービスである。山岳遭難や災害現場といった厳しい環境下でも使うことができる商品が目標だ。

 久我氏が念頭においたのは、かつて電話機の開発を手掛けたときと同じ「機能の引き算」だった。

 「大切にしたのはバランスです。GPSだってあればいいに決まっているし、技術的には可能だけど、そうすると電池の持ちが悪くなってしまったり、大きくなってしまったりする。結局使ってもらえないとなっては意味がない。捜索現場に対してどういうソリューションを提案すべきか、ということをまず考えました」

 2014年1月。コードレス電話機に端を発した捜索機器が産声を上げた。「HITOCOCO(ヒトココ)」の販売開始である。

 驚くのはそのコンパクトさだ。親機は70グラム、子機はわずか20グラムである。電池は親機が6カ月、子機が3カ月持つため、捜索時に電池切れで使えないというリスクが極めて少ない。また電波の飛距離は、山岳地帯を上空からヘリで捜索した場合、2~3キロメートルの範囲で瞬時に広範囲の捜索が可能と実証されている。また子機は固有のIDを持つため、捜索したいIDだけを指定して探すことができる。

 普及の転機となったのが、試作機の段階から力になってくれた公益社団法人日本山岳協会(以下、日山協)の推薦により、毎年夏に行われる全国山岳遭難対策協議会へのブース出展が叶ったことだった。会場では日山協の方の積極的な声がけのお陰もあって、多くの遭難対策関係者がブースを訪れた。

 複数回の出展を経て警察庁や消防庁とのリレーションができたのも収穫だった。彼らが興味を持った理由は、ヒトココが普及していくのであれば、関係省庁としても知っておかなければいけないというのがひとつ。もうひとつは自分たちのためにも必要だという判断だ。山岳救助だけでなく災害救助の場面でも、救助隊が赴くのは危険性の高い現場だ。万が一の事態で仲間を救うために、東京消防庁のハイパーレスキュー隊を始めとする全国の消防・警察・自衛隊に導入が進んでいる。

 久我氏はヒトココの用途として、日常生活で「人を探す」場面での活用も視野に入れていた。

 公園やショッピングセンターなどで子どもを見失った場合、携帯電話のGPSではおおよその場所しか分からない上、地下は探せない。Bluetooth機器は短い距離しか届かない。ヒトココなら障害物が多い街中でも数百メートルの範囲で捜索が可能だ。

 また、認知症などが理由で徘徊してしまう高齢者向けに盛り込まれたのが「見守り機能」だ。事前に見守り範囲を設定し、子機がその範囲を出るとアラームで親機に知らせるシステムとなっている。

 子育てサポート用モデルは「COCOKIDS(ココキッズ)」と名付けられ、子どもの安全と保護者の安心を支えている。見守りに特化したモデルは厚生労働大臣が定める福祉用具に認定され、介護保険の対象となった。

 

入山届にオーセンティックジャパン ヒトココのID記入欄が設置

 

 15年1月には日本最大級の登山コミュニティーサイトである「YAMAP」との連携がスタート。登山記録のシェアだけでなく、アプリの地図を使用することで、携帯電話の電波が届かない場所でもGPSで現在位置が確認できる機能が人気のサービスだ。遭難しないために活用するのがYAMAP、遭難してしまったときにはヒトココと、互いに補完し合うことで登山者を守ることができる。同年6月には登山用品の卸売を手掛けるアスティーと取引をスタート。全国の登山用品店へ販路が広がった。相互扶助サービスを展開する日本山岳救助機構会員制度「jRO(ジロー)」とは、会員向けに「ヤマモリ」という名称での貸し出しおよび、頒布をスタートさせた。

 登山者への普及が進んだことで同年7月には、電子登山届「コンパスシステム」へのヒトココID記入欄が設けられた。かねてから紙の入山届を登山道入り口にある箱に投函して入山し、下山時も同様に下山届を投函するのがルールだったが、入山と下山の場所が異なる場合も多々あり、遭難の可能性があった場合は周辺の投函箱を片っ端からチェックしなければならなかった。提出の煩雑さを嫌って提出自体行わない登山者も少なからずいた。

 これらを解決するためにウェブ上で登山計画書作成、および下山連絡をすることができるのが、コンパスシステムだ。万が一、下山予定を過ぎても下山の報告がない場合は、遭難の可能性を緊急連絡先に通知。情報は捜索隊も救助に活用する。登山者の命綱ともいえるシステムに、ヒトココIDの記入欄が設けられたのだ。

 オーセンティックジャパンには、「今週末、山に登るのに昨日ネットで注文したヒトココが届かない!」といった電話も入るようになった。ネット通販のお急ぎ便感覚で急かす相手に「もうちょっとだけ待ってください」と頭を下げながら、久我氏は手ごたえを感じていた。

 ヒトココは登山に欠かざる機器のポジションへと上り詰めようとしていた。

 

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