経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「起業して得られる経験・ノウハウ・人脈は何ものにも代え難い」-鉢嶺登(オプトホールディングCEO)

富裕層専門のカリスマFP 江上治

PDCA読書を勧める注目企業の創業者、鉢嶺登氏

 鉢嶺登さんに会った。

 私と同じ1967年生まれの50歳。インターネット広告事業で大躍進する注目企業、株式会社オプトホールディング代表取締役社長グループCEOである。

 初めに、簡単に履歴をご紹介しておこう。

 千葉県出身。早稲田大学商学部を卒業後、森ビル株式会社に入社、1994年、26歳のとき、アメリカで急伸していたダイレクトマーケティング事業を日本で展開するため、有限会社デカレックス(現:株式会社オプト)を設立、代表取締役に就任。

 2000年に広告効果測定システム「ADPLAN」(アドプラン)を開発、販売を開始した。顧客から高い支持を得て、04年にジャスダック上場。13年には東証一部に上場を果たす。15年、持ち株会社に移行して現職、ということになる。

 著書に13年に書いた『ビジネスマンは35歳で一度死ぬ』(経済界)があるが、今年6月、新著『役員になれる人の「読書力」鍛え方の流儀』(明日香出版社)を上梓し、著者自らが言う「PDCA読書」を勧めている。いわばビジネスマンとしての読書術だ。

 読書を勧めるだけあって、ご本人も、相当な読書家だ。このことは、鉢嶺さんのブログを拾い読みするだけで納得できる。「鉢嶺ブログ」がたいへん面白いのだが、その話題は後回しにして、さっそく、起業のきっかけから紹介しよう。

森ビルからダイレクトマーケティング市場に挑戦した鉢嶺登氏

 履歴に書いたとおり、大学を出て森ビルに入社したが、初めから3年で辞めることを決めていたという。そもそも、中学生時代から起業家になることを目指していたのだ。

 というのも、中学生時代、戦国武将にあこがれていて、「生まれてきたからには、世の中に何かを残したい」と考えていたことがベースにある。当時、思い浮かんだ職業は、企業経営者、政治家、教師の3つ。このうちの企業経営者にいちばん興味を抱いた。「父が手堅い公務員という職業だったので、反面教師になったのかも」と笑う。

 起業経営者を目指した青春時代は、高校、大学、会社員時代を通して、「何をやるか」「誰とやるか」、つまり事業と創業メンバーを探す期間だったと振り返る。その人たちとビジネスモデルを研究する勉強会を開き、アメリカでダイレクトマーケティング市場がマスマーケティング市場を超えていたのに着目。FAXを使ったダイレクトメール事業を行う会社をつくった。

 ダイレクトマーケティングは、日本では郵送のDMやテレマーケティングが代表的である。FAXはこの当時、送信機器としてしか認識されていなかった。鉢嶺さんはこのFAXをメディア化しようと考えたのだ。森ビル時代に都内は主要5区にオフィスが集中していることを知ったので、ここに集中してFAXを送り、回覧してもらう戦略だ。

 有限会社の資本金300万円は鉢嶺さんを含めた5人で出資したが、仕事は、最初は鉢嶺さん独りでスタート、2年目に1人、3年目にまた1人が加わった。飲食店のクーポン付FAXを大企業に送信し、忘年会や歓送迎会にお店を使ってもらう、集客サービスの営業だったが、なかなか業績が上がらなかった。1年目の年商は150万円。給料は当然出ない。

若くして独立することの大切さ

 実はこの後、お金の面では苦しい時代が7年も続くのだが、精神的にはめちゃくちゃ楽しかったという。サラリーマン時代には有名企業の人と名刺交換をしても、相手は鉢嶺さん個人ではなく、「森ビル」と名刺交換している。

 だが、独立後は、たとえ5万円、10万円の売り上げでも、それはほかならぬ「鉢嶺」個人の評価の結果なのだ。これが嬉しく「絶対に広告効果を上げて、お返ししよう」と奮い立った。金額は小さくても、やりがいはまったく違うというのである。

 このことは若いうちに独立することの大切さにつながると、鉢嶺さんは断言する。売り上げの伸びない中で苦闘したのだが、「サラリーマンを続けることに比べて起業は、得られる経験・ノウハウ・人脈が圧倒的にプラスになる」というのだ。

 そうして鉢嶺さんは創業3年でインターネットに出合う。この新しい「武器」を前に、心の底からのワクワク感を抑えられなかった。戦国武将の織田信長が鉄砲と出合った時も同じだったろうと笑うが、ネットが会社の何を変えたか、次回お伝えしよう。

[今号の流儀]若い時は、お金よりも自己投資。やがて大きく開花するはずだ。

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