広告掲載
経営者に愛読される雑誌に記事を掲載しませんか?

健康経営は“活力”経営。企業と従業員のメリットを高めるのに大切なこととは――八木洋介(people first 社長)

健康経営イラストイメージ

健康経営を健康ごっこで終わらせず、業績向上に結び付けるためには何が必要か。戦略人事のスペシャリスト・八木洋介氏に問う。

やぎ・ようすけ 1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管に入社。99年にGEに入社し、複数の事業でアジア部門の人事責任者などを歴任。2012年にLIXILグループ執行役副社長に就任。CHROとして同社の変革を実践。17年に独立し、複数の企業アドバイザーなどを務める。

健康の向こうに自己実現がなければ「経営」につながらない

―― 最近、健康経営がブームのようになってますが、八木さんはどう見ていますか。

八木 本質じゃないなぁと。

―― 本質ではない。では、どこに問題があるのでしょうか。

八木 取り組みの目的が曖昧になっています。なんか健康に良さそうなことをやりましょうでは意味がありません。もちろん健康は人生のために重要なことなので、大切にするのは悪いことではありません。でも、健康「経営」であるならば、経営としての答えを出さなければならないはずです。そういった経営の部分が曖昧になっている。だからインパクトがないんだと思います。

―― では本来の健康経営を実践するために必要なポイントはなんでしょうか。

八木 多くの企業が行っている健康経営というのは、マズローの5段階欲求で言えば安全欲求のところの健康なんですよ。健康というものを、病気じゃない、けがをしていない、という意味でとらえているならば、誰だって健康の方がいいよねって話になります。

 でも私の考える健康というのは、自己実現と直結しています。自分の思っていることをなんとか実現したいという強い思い、元気、経営的に言えば活力です。活力がなければ企業は勝ち残っていけないじゃないですか。

 僕はサバンナ経営という言葉を使っているのですが、人類、ホモサピエンスが世の中に出てきたのは20万年くらい前です。その頃は狩りをして生きていたわけで、そんな時に元気のないものはどうなるかというとライオンに食われてしまう。だから、狩りをしていく、すなわち仕事をしてアウトプットをしていくためには、元気があってなおかつ活力があるという状態をつくることができなければ企業経営もビジネスも成り立たないんです。

 その元気、活力が健康経営の「健康」なんです。だからあいさつでよく「お疲れさま」といいますね。でも、そんな会社は、競争に勝てないと思うのです。疲れていては良い仕事なんかできませんからね。

 要するに、企業の経営を行うのであれば、人や組織がいかに疲れないような状態をつくっていくか、そういうことがすごく重要で、それはフィジカル面での健康はもちろんのこと、同時に強いメンタルも必要だということです。強いメンタルというのは、自分が何をしたいのかが明確であり、会社の、または自分の目的や働く意義が前向きになっているメンタルです。そういう健康でなければ経営につながっていかないのです。

社員が元気になる経営で生産性は上がる

―― 組織の活力を高めるためにどこに投資をすればよいのでしょうか。

八木 安全欲求的なフィジカルの健康という面で考えても、人件費の5%くらいは健康保険に使っているわけで、そのフィジカルな分野を健康にしていくだけで、5%が半分になり、企業として人件費を2.5%削減できます。しかし、活力を上げることはそれ以上に効率のいい投資なんです。そのためには、もっと自分たちが何のために仕事をしているのかをしっかり考えて、そこに向かってまっすぐ進む組織をつくっていく、そうすることによって、活力、元気が生まれてくると思います。

 例えば、上司に言われたら何でもやる人がいますよね。その人は上司に言われたことをやることが目的になってしまっている。もっと言うと滅私奉公です。これが目的になってしまったら、本当に大切なことをやる気力なんてなくなってしまいますよね。

 脳科学の世界でもいわれていますが、脳が活性化するのは目的や意味付けがはっきりした時です。自分の会社が何をする会社で、自分はそのために働きたいと思っている人と、上から言われたことをやりますよ、という人とではどちらに元気があるかは明らかです。

 平たく言えば、やる気のある社員をたくさん抱える。そうすれば1人当たりの生産性、売り上げは倍になると思います。「えーっ」と思うかもしれませんが、ドイツや米国の生産性は日本と比べて4割も高いわけですから、不可能ではありません。世界にはもっと生産性の高い国もありますしね。

 どれくらい日本社会の活力不足が深刻な状況かというと、米国の調査会社であるギャラップ社のデータによれば、日本で前向きに仕事を行っている人はわずか6%。これは調査した139カ国中132位と最低のクラスです。一方、積極的に周囲に毒を吐いて、やる気のなさを伝染させる社員が24%もいる。だから、当たり前のことをきちんとやって社員が元気になる経営を行えば、生産性はどんどん上がっていくと思うのです。

「活力」を含めて考えれば健康経営のメリットが高まる

―― なぜ活力を上げることの重要さに企業は気付かないのでしょうか。

八木 昭和40年代くらいまでの成功のやり方を多くの企業が無意識に継承しているからだと思います。その頃までの日本は、個人の活力より組織の規律で経営をしていく方が良い時代でした。今は規制や規律よりも新たなアイデアで変化を起こすことが大事になってきているのに、そのパラダイムシフトを見誤って、過去の成功に乗っかったような経営をやっている。

 それから、多くの日本の企業に足りないと思うのは、アジリティーです。要は完璧でなくても、ある程度良さそうだと仮定できることを取り入れて実践し、必要ならそれを修正してさらに実践していくことです。

 こういうやり方をアジリティー経営っていうのですが、例えばある程度、科学で証明されつつあることであれば他の企業よりも先に取り入れてみる。仮説レベルでいいから何かが出てきた時に、「やってみようじゃないか!」という態度が取れるかどうか。こういうチャレンジが日本企業は苦手だと思うわけです。

 でも、みんながひとつの方向に向かっていくというのは決してマイナスばかりではなく、プラスの面もたくさんある。そのためにも足りないところに気付き、その部分を強化していけばいいのです。世界でトップクラスのフォロワー(=社員)がいる国なんですから、リーダーがしっかりして、フォロワーの活力、言うなれば健康を引き出していけばまだまだ戦えると思います。

 健康経営は1ドル投資すると3ドルリターンがあるといわれていますけど、僕が言った「活力」まで含めて考えればもっとインパクトはある。健康経営は活力経営のチャンスなのです。

【マネジメント】の記事一覧はこちら

経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る