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24時間営業はどこへ行く 次世代型コンビニと業界の未来予想図

次世代型コンビニに設置されたカメラとセンサー

24時間営業を売りにこれまで急成長を遂げてきたコンビニエンスストア業界。しかし人手不足などの問題を抱え、ビジネスモデルの大幅な見直しが求められるようになっている。AIやIoTなど新しい技術を活用した次世代型コンビニの姿とは。文=ジャーナリスト/松崎隆司

コンビニ業界の環境変化と次世代型コンビニ

パナソニックがファミマのフランチャイジーに

 コンビニ業界第2位のファミリーマートは4月2日、パナソニックと共同で「次世代コンビニエンスストア」の実証実験を発表した。

 次世代型コンビニの実証実験の舞台となるのは神奈川県横浜市にあるパナソニックの工場隣接店舗である佐江戸店。パナソニックが直接フランチャイジーとなり、技術提供を行うという。

 次世代店舗の開発についてファミリーマートの澤田貴司社長は次のように語っている。

 「パナソニックの大変なお力をお借りして、店舗開発ができるようになりました。きっかけは樋口(泰行パナソニック・コネクティッドソリューションズ社長)さんと昔から親しくさせていただいていまして、片倉達夫さん(パナソニック常務執行役員)も含めて会う機会がありました。そこでテクノロジーを使っていろいろなことをやろうという話になり、パナソニックのみなさんから『どうせやるんだったら、フランチャイジーになる』とおっしゃっていただきました。われわれも副店長を派遣し、一緒に店舗づくりをしようというところに落ち着きました」

 澤田氏がファミマの社長に就任したのは2016年。その後ファミマは販促物の簡素化や検品ロスの仕組みづくりなどに全社を挙げて取り組んできたという。

 さらにコンビニではいち早く「セルフレジ」や「現金カウンター」などの設備を導入、店舗業務の削減を進めてきた。

 「市場の変化や顧客ニーズの変化に伴い、サービスの多角化など、また東京オリンピックをはじめとしたインバウンド事業にともなう外国人のお客さまの増加などコンビニエンスストア業界を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。まだまだ店舗業務を改善する余地があると私は考えています」(ファミリーマートのニューマーケット運営事業部で、今回佐江戸店副店長に就任した山田恵理子氏)

 そのような中で進められているのが今回発表された「次世代型コンビニエンスストア」だ。

 パナソニックが直接店舗を運営することで、最前線から現場の課題を深掘りし、ICTソリューションと店舗オペレーションの一体開発を進め、そしてスピードをもったPDCAの実証実験を進めていくというものだ。

 具体的には「省力化」と「売上拡大」を目指し、「省力化」のためには「店内POP・電子棚札化」、「業務アシストシステム」「顔認証決済・物体検知」「モバイルオーダー(配達機能)」を導入。「売上拡大」には「IoTデータマーケティング」や「イートイン空間演出」、「モバイルオーダー」などを進めていく。

澤田貴司・ファミリーマート社長と樋口泰之・パナソニック・コネクティッドソリューション社長

ファミリーマートとパナソニックの連携で登場した次世代店舗のテープカット(左から2人目が澤田貴司・ファミリーマート社長。右が樋口泰之・パナソニック・コネクティッドソリューション社長)

次世代型コンビニ店舗の特徴

 今回の店舗の特徴は、パナソニックによると①現場の見える化②ユーザーフレンドリー③画像分析技術を中心とした情報の活用――の3つを強みにした店舗開発だ。

 まずは1つ目の「現場の見える化」。店内に複数のカメラやセンサーを設置し、商品の在庫管理や情報収集を行う。

 「これまでは在庫管理は一つ一つ店員が検品をしていましたが、店舗には80台を超えるカメラやセンサーが設置されています。これでデータを取得し、リアル店舗のデジタル化を行っていきます。デジタル化を行った店舗のデータを活用し、さらに可視化することによって現場の問題解決を行います」(パナソニックのシステムソリューションジャパン、下村康之プロジェクト統括)

 電子棚札は商品一つ一つのバーコードと連動しており、商品がなくなれば欠品情報が店舗のパソコン、店員の肩に設置された小型のモニターに知らせる仕組みとなっている。

 さらに店内のカメラ・センサーは在庫状況や商品陳列情報、駐車状況をチェックし、買い回り導線を感知し滞留ヒートマップを作成。スマートフォンは在庫管理や発注をすることができるほか、アンケート調査などにも活用できるという。

 こうした情報に、商品陳列情報などの「売り場情報」などこれまでテータ化されていない情報や既存の情報や天気、イベントなどの外部情報を組み合わせて分析することで、「店舗運営の効率化」「マーケティング改革」「中食強化」などを推し進めていくことができるという。

 「店舗の運営に必要な情報を店舗の価値を高めるデータに変えていく。これを基本に店舗で回せるデータのプラットフォームを今回の店舗で構築していくことを目指しています」(下村統括)

 2つ目は「ユーザーフレンドリー」だ。店舗をひとつの空間としてとらえ、働きやすい店舗づくりや利用者に新たな価値を与える「イートイン」など「空間演出」で顧客満足度を向上する。

 また利用者にはスマートフォンを使って、在庫状況を知らせ、時間を有効に活用してもらうことも可能になるという。

 3つ目は画像分析技術とAIを活用した無人レジだ。顔認証システムを活用して店舗に入店する購買者を特定し、さらに物体の検知技術を活用して商品を特定、顔認証での決済などでレジの無人化も進めていき、新しい購買層の獲得にも力をいれていくという。

 「ビル中であったり、今まで商圏として認められていないような小さな店舗で活躍する可能性を秘めています」(下村統括)

次世代型コンビニのカメラとセンサー

次世代型コンビニに設置されたカメラとセンサー

コンビニ24時間営業の見直しと無人レジへの取り組み

顔認証を利用したキャッシュレス決済

 セブン-イレブン・ジャパンもまた顔認証システムに力を入れている。昨年末にはNECと提携し、実証実験を始めている。場所は東京・港区にある三田国際ビル(地上26階、地下3階)の20階で、財布なしに買い物ができるという。

 広さは26平方メートル。通常のコンビニよりは狭いスペースで、商品アイテム数も約400品目と通常の約2900品目の1割程度しかないという。

 もともと地下一階にセブン-イレブンの店舗があったが、昼時に客が殺到することから5年前からNECとビル中層階の店舗をつくることを検討、そこから、顔認証を使ったセルフレジの導入が始まったという。

 「通常の店舗であれば、2~3人程度の店員が必要ですが、この店舗は1人で対応できます。あらかじめ登録していた顔を店内のカメラで認証し、商品をレジにもっていくと、商品のバーコードを読み取り決済する。NECのような高層ビルには閉鎖立地がある。大きな市場性はあると思っています」(セブン-イレブン広報担当者)

 セブン-イレブンは24時間営業が難しいと大阪の店舗から要請がありそれが波紋を広げている。96店舗(全体の0.6%)から営業時間短縮の申し出があり、今後直営店で実証実験をする方向で、セルフレジ(既にスーパーなどで利用されているもの)の導入を進めていくという。

ローソンは無線タグによる無人レジの開発を進める

 ローソンはコンビニの24時間問題が大きな社会問題になっている中で3月29日には、深夜時間帯にレジに店員がいない“無人営業”の実証実験を、フランチャイズ加盟店2店を対象に7月から始めると発表した。

 時間帯は0時から5時の間、客はスマートフォンアプリで解錠して入店、スマホで決済する「ローソンスマホペイ」か、現金も使える「セルフレジ」のどちらかの方法で決済する。

 それだけではない。近未来の取り組みとしてはRFIDタグ(無線タグ)を使った無人レジの開発にも力を入れている。

 ローソンは経済産業省が「流通業界の見える化」を推進するために開発が進められているRFIDタグを使った無人レジ「ロボレジ」の開発を17年からスタートさせ、一昨年には大阪の店舗で実証実験を行った。

 これはレジ打ちや金銭授受をせずに会計できる「ウォークスルー決済」を実現したもので、客はスマホにアプリをダウンロードし、QRコードを表示させる。これをウォークスルー決済のゲートにかざすことで本人確認が行われる。商品購入に際しては、RFIDタグのついた商品をカゴに入れ専用の装置に置くと、タグから発信される電波を感知して短時間で購入品目が確定する。その内容がQRコードにひもづけられたアカウントにつながり、クレジットカードなどによる決済が自動的にできる。

 「RFIDは一企業というよりは、国を挙げて取り組んでいるプロジェクト。いずれはデファクトスタンダードになる」(ローソン幹部)

 ファミマ、セブン-イレブン、ローソンといったコンビニ大手3社以外にも無人レジの取り組みは進んでいる。

スイカを利用したJR東日本の無人レジ

 JR東日本はSUICA(スイカ)をはじめとした交通系のICカードを活用した無人レジを開発し、17年11月には大宮で、18年10月17日から12月14日にかけてはJR赤羽駅の店舗で実証実験を行っている。

 この実験でシステムを提供しているのがサインポスト(東京・中央区)だ。07年3月に設立されたベンチャー企業で、17年11月に東証マザーズに上場した。

 JR東日本の無人レジは、AI機能を備えたカメラをコンビニ店舗内に設置し、商品を手にした利用者が決済ゾーンに入るとカメラがとらえ、どの商品を買おうとしているのかを認識し、それをモニターで表示する。これを利用者が商品と金額を確認したうえで、交通系カードを「リーダーライター」にかざすと決済できる。

 「大宮の実証実験を踏まえ、実用化にむけて実験や改良を進めてきた。さらなる認識精度を上げることや、運営オペレーションの確立が大きな課題となっている」(JR東日本スタートアップ広報担当者)

 このほか、米カリフォルニアに本社を置くベンチャー企業の「スタンダードコグニション」は日用品・一般医薬品卸の最大手、パルタックと提携してAIカメラを使った無人レジの普及を進めている。

 次世代型店舗開発を進めるコンビニ業界。群雄割拠の中で、最終的にどこに軍配があがるのか注目される。

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