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安倍晋三政権中枢に勢力を伸ばす三井グループの背景

ニュースレポート

三井系企業の官邸接近が目立っている。安倍晋三首相を囲む財界人の会に新たにグループ企業を複数送り込んだり、首相が関心を寄せるNHK次期会長人事に三井物産OBが選出されたりと、一見「人の三井」と謳われた企業群の面目躍如にみえる。だが、その裏には--。 (ジャーナリスト/梨元勇俊)

 安倍晋三首相を〝囲む会〟に新メンバーとして参加

「四季の会」プロパーメンバーの葛西敬之・JR東海会長(写真:時事)

 その店は各国大使館が建ち並ぶ一角にある。大きな門をくぐり長いエントランスを抜けると、いきなり視界が広がり無数の黒塗りの車が並んでいる。この奥に位置する平屋の日本家屋で2013年12月上旬のある夜、安倍晋三首相を囲む財界人の会合が開かれた。

 臨時国会での審議の末に特定秘密保護法を成立させた安倍首相は上機嫌で杯を空け、同席した財界人たちは口々に経済再生を重視する安倍政権への期待感を表明し、政権の長期安定を希望したという。

 この夜、安倍首相を囲んだのは、JR東海の葛西敬之会長、富士フイルムホールディングスの古森重隆会長、三菱重工の佃

同メンバー、古森重隆・富士フィルム会長(写真:時事)

和夫相談役、三菱商事の小島順彦会長、三菱地所の木村惠司会長、日立製作所の中西宏明社長、西武ホールディングスの後藤高志社長、みずほフィナンシャルグループ元会長の前田晃伸氏、そして三井住友銀行の岡田明重名誉顧問、商船三井の芦田昭充会長、三井物産の飯島彰己社長らだ。

 安倍首相を囲む財界人の会としては、野党時代の安倍氏を励ましてきた葛西、古森氏らによる「四季の会」がよく知られているが、この日集まったのは四季の会プロパーだけではなかった。岡田、芦田、飯島の三井グループ各氏は2012年暮れの第2次安倍政権発足で新たに加わったメンバーだ。「安倍政権は三菱のイメージが強い。鉄道や銀行はニュートラルだから、三井も入れてバランスを取ろう」という古参メンバーの意見で声がかかったのだという。

 三井グループは01年の銀行をきっかけに信託や損保、建設などで住友グループとの経営統合が進んでいる。声掛けには三井を入れれば自動的に住友も会に加わることになるという計算があったのかもしれないが、三井グループは結果的に安倍首相との距離を縮めたことになる。一国のリーダーと近しく酒を酌み交わし、そこで交わされる情報に触れることはビジネスの最前線で闘う企業トップには大きなメリットになるだろう。

NHK新会長に選出された三井物産OB籾井勝人

NHKの新会長に選出された籾井勝人・日本ユニシス特別l顧問(写真:時事)

 ところで同夜の会合のベースになった「四季の会」はNHK会長人事と浅からぬ関係にある。第1次安倍政権時にはこの会のメンバーが重用され、NHKの経営委員長には安倍氏の強い意向で富士フイルムの古森社長(当時)が選ばれた。古森経営委員長はアサヒビール(現・アサヒグループホールディングス)の福地茂雄・相談役をNHK会長に任命したが、福地氏も四季の会のメンバーだ。11年1月に福地会長の後任としてNHK会長に就いた松本正之氏も古森氏が推薦したが、松本氏は古森氏の盟友・葛西氏の元部下でJR東海の元副会長だった。その松本氏が12月上旬に1期限りで退任を表明したのも、NHKの報道内容に不満を募らせた葛西氏が安倍首相に会長交代の必要性を進言したことがきっかけとされる。

 事情通は「今回のNHK会長人事も、三井を取り込んだ四季の会のメンバーが〝キングメーカー〟として暗躍した」と指摘する。14年1月24日で任期が切れる松本氏に代わる次期NHK会長には誰が適任か。四季の会のプロパーメンバーの間で浮上したのが、安倍銘柄として手垢がついていない三井グループ、具体的には三井物産OBの名前だったというのだ。

 候補として取り沙汰されたのは三井物産副社長から日本ユニシス社長を務め、現在は同社の特別顧問を務める籾井勝人氏、籾井氏と物産社長の座を争った槍田松瑩氏、さらに両氏の先輩で01年から籾井氏の前の日本ユニシス社長を務めていた島田精一氏らだった。

 ただ槍田氏は三井物産の現会長で日本貿易会会長も務めており、来年半ばまで任期が残っている。物産時代に情報通信を担当した島田氏は論客でNHK会長として適任だが、1937年生まれという高齢がネックになった。

 12月下旬にNHK経営委員会が指名したのは籾井氏だった。福岡県出身で九大の経済学部を卒業し、65年に三井物産に入社後、鉄鋼畑を中心に歩き米国法人社長や副社長を歴任した。05年6月から11年6月まで日本ユニシス社長の職を務め、情報通信分野に明るく国際経験も豊富な人物だ。

 三井物産はかつて元社長の池田芳蔵氏をNHK会長に出している。池田氏は初の財界出身会長として第9代会長に就任していたものの国会答弁で失言するなどして会長の資質を問われ、わずか9カ月で辞任した。三井としてはOBの籾井氏が活躍することで過去の失態を払拭したいだろう。

 三井グループは自由闊達で個人の創造性を重視する企業風土で知られる。キングメーカーの思惑をバネに〝人の三井〟復権が果たせるかどうか。

 
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