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ルネサス エレクトロニクスの構造改革の見通しはいかに

ニュースレポート

ルネサス エレクトロニクスが、合併後初めての黒字化を達成するところまで業績を改善してきている。ただし、リストラによる固定費削減効果によるところが大きく、今後も同じ手法は難しい。構造改革や事業戦略での収益改善が問われている。 (本誌/村田晋一郎)

ルネサスの人員削減は限界に

作田久男・ルネサス エレクトロニクス会長兼CEO

作田久男・ルネサス エレクトロニクス会長兼CEO

 経営再建中のルネサス エレクトロニクスが着実に業績を改善しつつある。2013年度第2四半期まで営業利益は3四半期連続で黒字を達成、同第3四半期には営業利益に加え、純利益も計上する見込みである。10年にルネサス テクノロジとNECエレクトロニクスが合併し、現在のルネサス エレクトロニクスが誕生してから、純損益の黒字化は初めてのこととなる。

 売上高や営業損益、純損益の推移を見る限りは、12年度第4四半期を底に回復基調に転じている。13年度第3四半期までの9カ月累計でも営業損益、純損益ともに黒字の見込みで、このまま行けば、13年度通年の黒字化も見えるところまで来ている。

 利益率の改善に寄与しているのは、固定費の削減だ。12年度下期には、昨年実施した早期退職優遇制度に伴う固定費削減の効果が表れ、売上高は減少しているにもかかわらず、売上高総利益率(GP率)は改善に転じた。そして13年度上期には、円安効果も加わって、GP率はさらに改善に向かっている。

 作田久男会長兼CEOは、13年度上期の決算発表の席上で、「変革プラン」について語り、徹底的に収益にこだわる姿勢を明らかにした。当面の目標としては16年度に営業利益率2桁%を目指す。そして、利益の源泉は粗利益であり、GP率を改善することが重要だという。

 GP率の改善策として挙げたのは、製品ミックスの改善と、それに伴う固定費、変動費の改善。ただし、固定費の中でも人員の削減については、今後の展開は難しいことが予想される。これまでルネサスは11年3月末、12年10月末、13年9月末をそれぞれ退職日とする早期退職優遇制度を3回にわたって実施。これにより、発足当初の10年6月に約4万8千人だった従業員は、13年10月1日の時点で約2万8500人まで減っている。

 ピーク時の6割まで減っていることになるが8月の時点で作田氏は「ルネサスの売り上げはピーク時の3分の1まで落ちており、経営資源はまだまだ多い」とさらなるリストラを匂わせていた。

 そうした流れのもとで行った3回目の早期退職優遇制度では、3千人の募集に対し、応じたのは2316人で、当初の計画に満たない結果となった。昨年実施した2回目が5千人の募集に対して7446人が殺到したことと比べると、経営陣にとっては当てが外れた格好。つまり、ルネサスを退社する意思のある社員のほとんどは既に去ったことになる。

 今後の固定費削減策として早期退職優遇制度はもはや有効ではなくなっている。これ以上人員を削減するとなると、整理解雇が選択肢に入ってくるが、ただでさえ人員を減らしている上、国費が投入された企業が整理解雇にまで踏み切ることは考えにくい。何のために国が支援するのか分からなくなる。そうした状況もあってか、作田会長もさらなる人員削減については「リストラありきで経営をしているわけではない」とトーンダウンしている。ルネサスとしては、従業員2万8500人の現体制で、収益改善に取り組むことになる。

ルネサスは構造改革から成長戦略への道筋を描けるか

 作田会長が定めた「改革プラン」は11月から本格的にスタートしたが、収益改善に向けた固定費の改善は、人員削減に頼らず、拠点再編をはじめとする構造改革で行うことになる。

 生産拠点の見直しについては、8月に発表した再編計画を遂行する予定。そして、ここで出てきたのが、鶴岡工場(山形県)のソニーへの売却話だ。デジタルカメラやスマートフォンのカメラ機能の基幹部品であるCMOSイメージセンサーの生産能力増強を図るソニーが同工場の買収を打診しているという。

 当初の計画では、2〜3年以内に鶴岡工場を閉鎖する方針が決まっていた。昨年来のルネサスの構造改革は旧ルネサス テクノロジ主導で行われたため、旧NECエレクトロニクスの旗艦工場だった鶴岡工場は「NEC外し」とも取れる再編計画において閉鎖が決定した。しかし、鶴岡工場のプロセス技術への評価は高く、昨年までの構造改革においても、台湾のファウンドリー(製造受託企業)への売却が取り沙汰されてきたほど。このため、閉鎖が決まってからは、ファウンドリーとして独立させる気運もあった。

 ルネサスとしては、売却交渉がうまくまとまれば、売却益を得られるメリットがある。また、買い手が日本企業となると、雇用を守るという意味で地元の理解も得やすい。ただし鶴岡工場内の製造装置が鍵になっている。ルネサスでは、那珂工場(茨城県)の生産能力増強に鶴岡工場内の製造装置を移設する方針。ここで製造装置がどの程度残るかで、鶴岡工場の売却価値も変わってくる。

 例えば、ソニーが必要とする製造プロセスの装置をすべてルネサスが那珂工場に移設してしまえば、ソニーにとっては買う価値がなくなってしまう。ルネサスとしては那珂工場の増強が最優先だろうが、この売却交渉次第で今後の再編計画も変わってくるだけに、難しい選択となる。

 拠点再編などの構造改革を進める一方で、いかに売り上げを拡大していくかという事業戦略が問われている。今回、作田会長が強調したのは、プラットフォームソリューション。半導体製品単体だけでなく、複数の製品やソフトウエア、サービスなどを組み合わせて提案する。これまではハードウエアや製品から価値を見過ぎているために、市場や顧客から離れつつあることがルネサスの問題だとし、アプリケーション志向のビジネスモデルにシフトするという。

 ただし、プラットフォームビジネスは競合企業も展開しており、これだけではルネサスの独自性は弱い印象を受ける。作田体制の半導体ビジネスへの理解不足を指摘する向きもある。成長戦略においても、ルネサスの課題はまだまだ多い。

 

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