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被害拡大で解決の糸口が見えないMRI資産消失事件

ニュースレポート

米国の資産運用会社、MRIインターナショナルが日本の顧客から預かった約1365億円の出資金の多くを消失させた可能性があるとして、問題になっている。弁護団が結成され、相談会が開かれるが、解決には時間がかかりそうだ。 (本誌/鈴木健広)

 

MRI代表の居場所が不明で事実関係は確認できず

 

 MRIインターナショナルの日本法人がテナントとして入っていたビルには、真っ赤な文字で「マスコミ関係者の立入をお断り致します」と記した用紙が掲示されていた。エレベーターを昇りオフィスにたどり着くと、「この事務所は閉鎖されております」という貼り紙が。玄関は施錠されており、人の気配は感じられなかった。

 そこで、日本法人に電話すると、自動音声が顧客専用ダイヤルの番号を案内。早速連絡をしたところ、開口一番「このたびは多大なご心配とご迷惑をお掛けして、申し訳ございませんでした」と話す女性の声がした。女性は委託会社のコールセンター担当者を名乗り、MRIの社員ではないと話す。

 その担当者によると、現在、同社代表のエドウィン・Y・フジナガ氏とは、連絡が取れない状態だという。「フジナガ氏の弁護士に連絡を取っているが、氏の居場所や事件の事実関係の確認がなされていない」と明かす。担当者は「毎日数多くのお問い合わせを頂いているが、お答えできることは非常に少ない」と会話を締めくくった。

 金融庁は4月26日、顧客からの出資金を他の顧客への配当に流用し、契約書面や事業報告書で虚偽の説明をしていたなどとして、MRIに行政処分を下した。同社は、米国の病院が保険会社に診療報酬を請求できる権利を買い取って回収する事業を運営していた。年6~10%台の高金利をうたっていたものの、資金運用実態は確認できなかったという。

 また、MRIは、約8700人の顧客から約1365億円の出資金を預かり、ほとんどを消失させたといわれる。金融庁は、「あくまでこの数字はMRI側が発表したもので、実際にはもっと被害が拡大している可能性がある」と指摘している。

 約60人の弁護士による「MRI被害弁護団」が結成され、各地で相談会や無料電話相談が実施されるなど、被害者の支援体制が整備されつつある。しかし、今はまだ被害の範囲が把握できず、「被害者救済のめどがいつ立つのか見通せない状態」(弁護団事務局長の五十嵐潤弁護士)だ。

 弁護団によると、被害者の多くは老後の資金運用を目的とした中高年者で、親族揃って取引を行っていたケースが少なくないという。商品を気に入った顧客が配偶者や両親、子ども、親戚などに声を掛け、芋づる式に被害が拡大したもようだ。

 弁護団はMRIの刑事告訴に向けて、被害者へのヒアリングを行うなど、具体的な準備を進めている。被害者からの弁護依頼を受け付けており、最終的には2千人以上の依頼受任を持って問題に取り組む方針だ。現時点では、1日平均150人程度の依頼が寄せられているという。現在、弁護団は被害者情報をデータベース化しており、「依頼案件の受付作業を含めて、事務局サイドは手いっぱいの状態」(米川長平副団長)となっている。

 

MRIへの投資にはかねてから疑問の声も

 

 今回の事件で、被害が拡大した原因は大きく2つある。まずは、MRIを含む全国約1300に上る第2種金融商品取引業者の登録の在り方だ。登録要件が低いため、比較的容易に業者登録ができるという問題がある。悪質な事業者の活動に〝お墨付き〟を与えてしまってきた側面は否めない。

 弁護団の山口広団長は「登録制度には問題が多い。審査の厳格化を含めて、今後問題の1つとして取り上げていくだろう」と話す。金融庁監督局はこの件について、「今後解明されるであろう事実を踏まえて、適切な対応を検討する」と回答している。「規制が緩いために多額の被害事件の多発につながった」(五十嵐事務局長)現状を考えれば、入り口規制の強化で、悪質業者の参入を阻む取り組みは不可欠だ。

 もう1つの要因はやはり、被害者の脇の甘さだ。「高利回りで元本保証」を銘打った詐欺による被害事件は珍しくない。診療報酬請求債権の買い取りビジネスという耳慣れない事業ではあるが、手口に共通する部分は少なからずある。

 人生経験豊富である中高年の出資者らは、自らの被害を回避することはできなかったのか。

 本誌は弁護団の弁護士らに、「被害者にも落ち度はなかったのか。」という質問をぶつけてみた。米川副団長は「被害に遭った中高年者の若い頃は高金利時代だったため年6~10%程度の金利はごく自然なもの」と回答。山口団長も「MRIの違法性を見抜くのは難しく、消費者を責めるのはかわいそう」という認識を示した。

 弁護団によると、MRIは新聞や雑誌などの広告で顧客を集めており、強引な勧誘は行っていなかったという。また、被害が問題化するまでは、顧客への運用報告をまめに行っており、「少額出資していた顧客が会社の対応を見て、出資額を増やしていったのではないか」(山口団長)とみている。

 しかし、かねてから一部の消費者からMRIの信頼性に疑問を呈する声はあったようだ。数年以上前から「怪しい」「話がうま過ぎる」といった意見は少なくなかった。

 コモンズ投信の渋澤健会長は「十分理解していない投資商品に、老後のための全財産を投じてしまうのは非常に危険」と苦言を呈する。「必ず解約事項を十分確認するなど、資金が自分の手元に戻ってくるように〝出口戦略〟を立てるべき」という考えだ。詐欺に食い物にされないために、金融リテラシー教育はもちろん、根本的な危機管理教育を幼少期から施す必要があるかもしれない。

 渋澤氏は「投資は〝量〟以上に〝質〟が重要」だと説く。投資の質とは、行政の適切な参入政策と、投資家による資産防衛という入り口と出口の対策を講じることではないだろうか。高まる家計の投資意欲に水を差さないためにも、投資の質の向上への取り組みが急務だ。

 
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