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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

電力システム改革と新エネルギー開発が進む

エネルギー問題

危機を好機に 成長戦略の本丸

 昨年11月13日、参院本会議で、電力システム改革のスケジュールを定めた改正電気事業法が賛成多数で可決、成立した。

 アベノミクスの第三の矢である成長戦力の中でも重要な位置を占めるこの改革は、太平洋戦争時に電力を国家管理の下においた、特殊法人日本発送電を「電力の鬼」松永安左エ門がGHQとともに9社へ解体した1951年以来の大改革である。

 改革は、電力大手の独占状態が続いた電力市場に競争を促し、電気料金の引き下げやサービスの多様化を促す狙いがある。2015年をめどに電力の需給を調整する「広域系統運用機関」の設立を行い、各地の需給計画や供給網の整備はもとより、災害時には各電力会社の需給調整を行うことができるなど、強い権限を持つ。

 その後、16年に電力小売りの全面自由化、さらに18〜20年をめどに電力の発電と送配電部門を別会社にする「発送電分離」を目指す。

 かねてより、電力システムの改革が叫ばれてきたが、電力会社の強い力を背景にその流れは緩やかで、かつ電力会社の意向が優先された。

 ところが、11年の東日本大震災を契機とする福島第一原発事故以降、状況は一変する。

 福島第一原発の処理、被災者への保障の問題により東電自体の存続も危ぶまれ、原子力発電の今後も不透明だ。今回の電力システム改革は、同時並行的に行われ、まず地域市場を独占してきた10社の発電から送配電、小売りまでの一貫したシステムの解体から始められる。

 まずは「発送電分離」だ。識者も口を揃えるのが、送配電のインフラ事業は、今後も既存の電力会社が握ることになるのではないかということだ。稼働できるかめどの立たない原発を管理、運営することを考えれば、安定的な収益が望めるこの事業は既存の電力会社に任せることになるであろう。

 もうひとつが「小売りの完全自由化」だ。自由化が進めば、現在の携帯電話業界のようにさまざまなプランで電力を買うことができるようになるはずだ。

 ただ、自由化による激しい競争の中で効率化が進み余剰電力が確保できなければ、00〜01年に頻発した米カリフォルニア州の大停電のようなこともあり得る。その懸念を払拭するために、来年度に広域系統運用機関とよばれる「取りまとめ」機関が生まれるのだが、実際にどのような組織になるかは不透明だ。

 ただ「地域独占」がなくなることは確実で、中部電力は茨城の火力発電所に、関西電力は小売り事業にそれぞれ参入を始めており、電力需要の旺盛な首都圏マーケットを狙う。

 東京ガスや石油、鉄鋼各社などの新規参入組も具体的に動き始めれば、成長戦略の確実な推進力になるにちがいない。

 

新たな電力、再生可能エネルギーの台頭

 一方、発電の世界も原発がストップしている現状では、安定的な供給が可能な火力発電が中心になっている。東京電力は円安で燃料費が高騰する中で、ガスタービンに加え、回収した排熱を再利用するガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)などの高効率の石炭火力発電所で燃料費を抑える努力を図っている。

 一方、再生可能エネルギーに関しては政府の買い取り制度などの政策支援を受けて、確実に伸びてきている。太陽光発電がその代表格だといえるが、比較的用地買収が容易な北海道と沖縄では、既に接続量が許容範囲を超えてしまっている。また天候に左右されるということで安定せず、設備利用率が低い。

 今後、さらなる普及が進むと考えられているのが風力発電だ。ヨーロッパでは既に再生エネルギーの中心であり、発電効率の高い洋上での設置も遠浅の海が続くヨーロッパでは珍しくない。洋上を何十機もの風車が並ぶ景色は圧巻である。

 日本でも福島沖で進められているプロジェクトが存在する。

 丸紅が中心となって進められている福島洋上風力コンソーシアムは三井造船、三菱重工業など10の企業と東京大学とで行うプロジェクトで、福島沖合20キロで、浮体式の2メガ㍗の洋上風力発電所を建設、実証実験を行っている。

 経済産業省からの委託事業であるため11年には125億円、13年には95億円、合計で220億円が投じられ、今後事業化にめどが立てば、東日本大震災からの復興に向けて再生可能エネルギーを中心とした新たな産業創出が可能になる。その場合、福島原発の送電網が再利用できるメリットもあるのだ。

 しかし、洋上での建設は想像どおりコストが掛かる。1キロワット当たりの建設費は陸上で25万円、洋上の固定式で50万円。今回の浮体式では何と200万円も掛かる。

 日本は大陸棚が狭く沖合すぐに一気に深くなるので、浮体式がメーンになる。

 ただ陸上や近場での海上固定式に比べ沖合だと安定して風が吹くとのこと。設備利用率でみても通常20%のところ40%と倍に跳ね上がるという。

 14年には新たに直径80㍍の風車を持つ7メガ㍗の発電施設が投入され、コストも1キロワット当たり100万円にまで落とせる。利用率を考えれば固定式とそん色なく、陸上のように用地買収の問題や騒音、低周波の地域住民への心配もない。

 もちろん漁業権など解決すべき問題も多いが、この風車産業の一大集積地を生み出すことができれば、エネルギーとともに雇用が生まれ、復興を成し遂げた福島のシンボルになるのではないだろうか。

 大きな転換期に来ている日本の電力システム。この機会を好機ととらえ、新たな事業を生み出し、成長戦略に結び付けることが望まれている。

 
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