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「独立系ファイナンシャルアドバイザーに求められる仕事とは」―伊月貴博(フィナンシャルリンクサービス社長)

 独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)として、富裕層の資産管理を支援しているフィナンシャルリンクサービス。伊月貴博社長は保険と証券の双方を取り扱える強みを生かし、顧客から厚い信頼を得ている。起業してから昨秋で満10年を迎えた伊月社長は本業の強化とともに、消費者が公正中立な立場から資産運用アドバイスを受けられる環境をつくるため、IFA業界の活性化に貢献する考えだ。(取材・文=鈴木健広)

伊月貴博・フィナンシャルリンクサービス社長プロフィール

伊月貴博・フィナンシャルリンクサービス社長

1964年大阪府大阪市生まれ。京都産業大学法学部卒業後、新日本証券(現・みずほ証券)に入社。AIGスター生命(現・ジブラルタ生命)を経て、2009年10月にフィナンシャルリンクサービスを設立。

ファイナンシャルアドバイザーとしての伊月貴博氏の強み

営業活動を行わず紹介で顧客を得る

 「ファイナンシャルアドバイザーに求められているのは、プロフェッショナルとしての公正中立な立場に基づいた金融サービスの提供です。IFAになろうと思う方が一人でも多く増えるよう、微力ながら貢献できればと思っています」

 フィナンシャルリンクサービスの伊月貴博社長はこう意欲を示す。

 伊月氏は卓越した営業実績を誇る世界の生命保険・ 金融プロフェッショナルが集う組織「MDRT」の会員資格を15年連続で維持し、終身会員となった。保険と証券に関わる幅広い知識や実績を武器に、投資可能な金融資産1億円以上を保有する富裕層を中心に、約400人をクライアントに抱えている。

 現時点で、同社が管理している顧客の総資産は約750億円に及ぶ。営業活動は一切行わず、既存顧客や士業からの紹介がほとんどだ。

 「こちらの都合で商品を売り込むのではなく、クライアントのニーズを十分踏まえた上で本当に必要な金融商品を中長期で運用していただいています。FAが目指すべきは、依頼人が持つ個々の課題や悩みにとことん向き合うプロフェッショナルです」と説明している。

顧客本位のコンサルティングを目指して独立

 そんな伊月氏にも飛び込みや電話といった営業活動に汗をかいた時期があった。

 伊月氏が大学生だった1980年代半ばは、バブル初期で財テクを行う消費者が増えつつあった頃だ。

 「人間力で勝負出来る環境に身を置きたい」と思っていたところ、父や大学の先輩から「これからは直接金融の時代」と背中を押され、新日本証券(現・みずほ証券)に入社。最初は岡山支店に配属され、1日100軒以上の飛び込み営業をこなした。地元の有力企業経営者の懐に入り、2ケタ億円に及ぶ大口取引を受注するなどし、入社1年目にしてトップセールスの仲間入りを果たした。

 「当時は午前7時から午後11時まで働くという“セブンイレブン状態”で、同僚の2倍は働いていました。やればやるほど結果が出る。名刺1枚で成功者と会うことができる。充実感で一杯でしたね」

 さらに福岡支店で実績を上げた後、出世コースとされる労働組合委員長を経験。神戸支店では営業マネージャーとして米国株の提案に力を入れ、米株の月間手数料収入で全国トップを達成した。米国株投資の可能性を実感し、新たなやりがいを感じていたが、同時に仕事に違和感を覚えていたという。

 「せっかく信頼関係を築いた顧客を、転勤で最後までフォローできなくなることが非常に残念でした。また、当時の証券業界では回転売買が推奨され、顧客のニーズにそぐわない商品を提案しないといけない事もありました。組織や業界の論理に捉われず、顧客本位のコンサルティングを実践したいと思うようになったのです」

 そんな矢先にAIGスター生命(現・ジブラルタ生命)からヘッドハンティングを受け、2004年に転職した。

 「転勤がないため、クライアントと一生涯のお付き合いをできる点が決め手になりました。自分の裁量で部下を採用、教育できるのも魅力でしたね」

 以後は、前職時代の基盤をベースに顧客の裾野を順調に拡大。06年には「MDRT」の資格を初めて取得し、09年に独立した。

独立系ファイナンシャルアドバイザーだからできること

短期売買の仲介ではなく、長期的スパンでサポート

 伊月氏は独立前から、金融事業者の社会的地位を高めたいと考えていた。

 「強引な営業のイメージなのか、金融業者は長らく『株屋』、『保険屋』呼ばわりされてきました。プロフェッショナルとして認めて頂くには商品を売り込むのではなく、資産全体のコンサルティングを手掛けることが大切です。取り扱う商品が『証券だけ』、『保険だけ』になると、部分最適で結局は営業せざるを得なくなってしまいます。当社では様々な専門家と組むことで、資産に関わるあらゆる相談にお応えしています」

 創業2年目の10年には、公認会計士や弁護士、特定社会保険労務士、不動産鑑定士といったスペシャリストを擁するコンサルティング会社、丸の内アドバイザーズの取締役に就任した。同社のサポート内容は相続や事業承継、資産運用、税務・決算の申告など多岐にわたる。

 「丸の内アドバイザーズからの紹介案件は、顧客も私をプロフェッショナルの一員とみなしてくれるため、信頼度が大きく違います。IFAの中にはせっかく独立したのに、営業に苦労して結局稼げなくなり、金融商品の短期売買に走ってしまうケースも少なくありません。一方、当社はクライアントからの依頼に長期スパンで対応する専門家としてのポジションを築いています」 

米国株の提案にあたって現地情報の収集を重視

 金融の専門家である伊月氏の武器は、証券マン時代に養った米国株の提案力だ。リーマンショック直後で株価が暴落した際に、米国株を提案する歴史的なチャンスと捉え、今ではクライアントの多くが含み益を享受している。

 「米国株は長期上昇が期待出来る魅力的な投資対象です。GAFAの時価総額は継続して上昇基調をたどっており、今後も中長期的な成長が見込まれます。米国株投資を勧める上で重要なのは、現地の情報を収集することです。例えば、5年前にテスラのラスベガスにおけるプロジェクトを見学し、経営が危ぶまれていた頃から同社の将来性を確信、当時から顧客にテスラ株を案内し、今では10倍以上の含み益を享受しているクライアントも多くいます。金融のプロフェッショナルとして、手数料目当てで短期売買を促すことなく、資産価値を最大化するために長期保有をお勧めしています」

欧米から20年遅れる日本の金融業界

 同社は2019年10月で設立10年を迎えた。今後は本業を強化しつつ、国内での浸透がいまだ進んでいないIFAの普及に尽力する考えだ。

 日本国内の保険代理店は数十万店規模もあるのに対して、金融商品仲介業者はわずか900社程度だという。IFAの普及が進む米国の12万7千人に対して日本にはわずか4千人弱しかいないというデータがあるなど 、欧米とは雲泥の差がある。

 同社が入会している「一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー協会」の正会員はわずか15社。同協会が掲げる基準に合致する金融商品仲介業者がまだ少ないという証拠だ。

 伊月氏はIFAを目指す人材をサポートするため、保険営業パーソン向けの勉強会を毎月開催している。テーマは日本経済新聞の読み方やマーケット分析、顧客へのアドバイス手法だ。

 「生保代理店の方々は保険を通じて顧客と長期的な信頼関係の構築が既に出来上がっています。これに証券のノウハウを身に付けることが出来れば、お客様とさらに良い関係が構築できるようになるでしょう。生保出身者は証券ビジネスに疎いため、IFAとして成功している人が多くありません。そこをしっかりサポートしていきたいですね」

 最近では、今年8月に開催されたMDRTのバーチャル大会で、IFAとしてあるべき姿を講演。日本の金融業界は欧米に比べて20年遅れているとして、“金融のプロフェッショナル”として自らを成長させる必要性を説いた。

 「“プロフェッショナル”とは、医師や弁護士のように生命や人権、資産といった重要な生活インフラを専門に、特定依頼者の相談に応じて最適な問題解決を行うもの。非常時に頼りにしていただける存在を目指していきたいですね。今年のコロナ・ショック時における株価の急落局面では、富裕層のクライアントから資金シフトなどに関してリーマンショック以来ともいえる数多くの相談を受けました。今後も、クライアントの生涯価値を最大化するというコア・ミッションからぶれること無く、業界の発展に微力ながら貢献していきたいと思います」