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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

カネボウ化粧品の不祥事〜自主回収問題と経営再建〜

2013年10大ニュース其の6

【優良企業花王の顔に泥を塗ったカネボウ化粧品の不祥事・隠蔽体質】

 消費財を扱う企業にとって商品の安全性を担保することは大前提。しかし、この生命線とも言える職責を見事に裏切る格好となったのがカネボウ化粧品。自社商品を要因とする消費者の健康被害を認識しながら長期間放置、傷口を広げる事態となった。

謝罪するカネボウ化粧品の夏坂真澄社長(写真左、13年9月11日) (Photo:AFP=時事)

謝罪するカネボウ化粧品の夏坂真澄社長(写真左、13年9月11日) (Photo:AFP=時事)

 カネボウ化粧品の不祥事が明らかになったのは2013年7月4日の同社の会見だ。発表によれば同社及び関連会社2社が製造販売していた美白製品のうち「医薬部外品有効成分「ロドデノール」が配合された製品の使用者の中に「肌がまだらに白くなった」(白斑様症状)ケースが確認されたということだ。

 問題の「ロドデノール」は厚生労働省より安全性のお墨付きをもらっていた成分だけに通常であれば矛先は厚労省に向かうべきものであった。

 しかし、それ以上にカネボウ化粧品の杜撰な対応が、次々と明るみになるにつれ、同社は世論からも集中砲火を浴びる事態となったのだ。

 まず、驚かされたのは、12年9月に皮膚科医から「白斑被害は化粧品が引き金になった可能性がある」との指摘を受けたにもかかわらず自主回収までの10カ月間もこの問題を放置していたことだ。

 企業不祥事が起こる度に〝見たくないものは見ない〟、〝臭いモノには蓋〟という言葉が脳裏を横切るものだが、カネボウ化粧品の対応はまさにこれがピッタリと当てはまる。

「隠蔽体質が引き金となり、企業存亡の危機に見舞われたケースは少なくありません。特に大手企業では十数年前から何にも増してコンプライアンスの徹底に注力してきたはずです。そういう意味で、今回のカネボウ化粧品の対応は稚拙としか言いようがない」

 と某小売業首脳は言い放つ。

 対応策のまずさからカネボウ化粧品は、「白斑」を発症した顧客に対し、治療のための医療費・交通費、精神的苦痛に対する慰謝料、通院で会社を休んだことへの休業補償を支払う結果となった。

 また、とばっちりを受けた格好の親会社の花王も、自主回収に伴う85億円にも上る特別損失を計上するなど13年3月期の連結決算を下方修正する羽目になった。

 今や被害者は1万6千人(完治・快復者を含む)を優に超え、完全収束へのめどは立っていない。カネボウ化粧品の隠蔽体質が、まさに傷口を広げた格好だ。

【カネボウ化粧品の不祥事と親会社、花王との微妙な関係】

自主回収に追い込まれた製品群

自主回収に追い込まれた製品群

 カネボウ化粧品が前代未聞の不祥事を引き起こした背景には、親会社である花王との微妙な関係が存在する。

 花王がカネボウ化粧を買収したのは、06年2月。4100億円という破格とも言える買収価格に業界内外をあっと言わせたことは記憶に新しい。当時でさえも〝高い買い物〟という指摘も少なくなかったこの買収劇だが、花王は何としてもカネボウ化粧品を手中に収めたかった理由が存在する。

 日用品では洗剤「トップ」などに代表されるロングセラー商品を数多く保有、増収増益を続けてきた優良企業の花王の唯一の泣き所は化粧品事業。「ソフィーナ」など認知度の高いブランドがないわけではなかったが、首位を行く資生堂をキャッチアップするには明らかに実力不足。対東南アジアなど将来的にもポテンシャルが高い化粧品事業の強化は花王にとって至上命題とも言えた。

 そこに降って湧いたのが強力ブランド、カネボウ化粧品の売却話。既存ブランドに「カネボウ」ブランドが加われば王者資生堂の背中が見えてくる。花王が、この話に飛びついたのは言うまでもない。

 しかし、買収は簡単にはまとまらなかった。

「カネボウ化粧品の従業員のプライドは相当なもので、花王の軍門に下ることを良しとはしなかったのです。最終的には花王の子会社になるのですが、カネボウ化粧品の独自性を最大限容認するなど花王の気の遣い方は尋常ではありませんでした」(業界関係者)

 しかし、これが結局は仇となった。花王は企業理念である「花王ウェイ」に見て取れるとおり、消費者第一主義を掲げた消費者起点、現場主義等を行動原則としている。ここから上がってくる諸々の問題を真摯な姿勢で解決に導くことに同社は存在意義を見いだしてきたはずだ。

 にもかかわらず、カネボウ化粧品を慮るあまり、拠りどころとしてきた行動原則がなおざりにされてしまったのである。

 花王は今回の不祥事を教訓として、ようやく重い腰を上げ、生産・研究開発・販売部門の一本化を決断、カネボウ化粧品の改革に関与することになるのだが、失われた信頼を再び取り戻すまでには相応な時間を要することは必至。

 孝行息子のはずが、とんでもない鬼っ子になってしまったことを〝浮利を追わない〟ことを信条としてきた花王中興の祖である丸田芳郎氏は天国でどんな思いで見ているのであろうか。

 本来は優良企業であるはずの花王の完全復活を見守りたい。

 
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