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「米現代史上、最も不平等な不況」と米紙が分析 低所得層には「恐慌」さながらのコロナ危機

ニューヨーク在住ジャーナリスト 肥田美佐子

雇用回復への道のりが最も厳しい層は?

「新型コロナウイルスによる経済崩壊は米現代史上、最も不平等な不況を引き起こした」

 米紙ワシントン・ポストは9月30日、コロナ禍の雇用喪失に関する独自分析記事を発表し、こう結論づけた。現不況は、最上位層には軽度の景気後退だが、最下位層には恐慌さながらの打撃を与えたという。金融緩和による株高や住宅市場の活況で、富裕層の経済環境は夏の終わりまでに持ち直した。

 一方、低賃金職の雇用は8月、前年の夏に比べ20%超減少。コロナ禍のピーク時に失われた低賃金職の雇用は、高賃金職の8倍に上るという。バーナンキ元米連邦準備制度理事会(FRB)議長は同記事の中で、最大の打撃を受けたセクターに女性や人種的少数派、低所得層が圧倒的に多い点を指摘している。

 また、雇用回復への道のりが最長なのは、黒人や学齢期の子どもを持つ母親だという。2~4月に喪失した雇用のうち、白人の雇用は半分以上が回復したが、黒人は3分の1超にとどまっている。8月までに再就職した白人女性が61%に達する一方、黒人女性は34%だ。

空き店舗が目立つタイムズスクエア

 翻ってニューヨーク州労働省の9月17日付発表によると、同州の失業率は8月には12・5%と、7月より3・4ポイント下がったが、全米の失業率8・4%を大きく上回っていた。ニューヨーク市は16%(8月)と、7月の19・9%から改善したものの、全米失業率のほぼ2倍だ。

 ニュースクール大学「ニューヨーク市政問題センター」の経済・財政政策担当責任者、ジェームズ・A・パロット氏の分析では、6月の失業率20・4%を失業保険受給者数に照らして測り直すと、実質的には32・7%の高さだったという。市内で貧困率が最も高いブロンクス区では事実上、41%近くに達していた(同氏8月13日付報告書)。

 ニューヨーク市の給与所得者は8月の時点で、2月に比べ68万人減だったが、自営業者50万~60万人の雇用減と合わせ、推定120万~130万人が失職した(パロット氏10月1日付報告書)。ホテルやレストランなどのレジャー・接客業界では8月、前年同月比で40万3200人減を記録した(ニューヨーク州労働省)。

 そうした数字を象徴するかのように、マンハッタンの中心街タイムズスクエアには、3月半ばのロックダウン(都市封鎖)以来休業したままのホテルやレストラン、空き店舗が目立つ。

観光のメッカ、NYタイムズスクエアの土産物店もコロナ禍で閉鎖したままⓒMisako Hida

 5月に経営破綻した衣料品大手Jクルー・グループ(本社ニューヨーク、債務再編プロセス完了)や、マンハッタンに旗艦店があり、9月に破綻した大型ディスカウントチェーンのセンチュリー21ストアーズなど、コロナ倒産は後を絶たない。ニューヨーク市の企業約300社のトップから成る非営利団体「ニューヨーク市パートナーシップ」は、小規模企業の3割強が破綻しかねないとみる。

 低所得層を直撃したコロナ危機――「社会で最も脆弱な層をこれほどひどく打ちのめした不況はない」(前出ワシントン・ポストの記事より)。

タイムズスクエア駅に隣接したテナント(小売店)募集中のビル。大統領選の混乱に備え板張りされたビルが目立つ(11月7日)ⓒMisako Hida

筆者紹介―肥田美佐子 ニューヨーク在住ジャーナリスト

(ひだ・みさこ)東京都出身。『ニューズウィーク日本版』編集などを経て渡米。米企業に勤務後、独立。米経済・大統領選を取材。スティグリッツ教授をはじめ、米識者への取材多数。IRE(調査報道記者・編集者)などの米ジャーナリズム団体に所属。『フォーブスジャパン』『週刊東洋経済』『プレジデント』『週刊ダイヤモンド』などに寄稿。などに寄稿。