経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

正念場ではリスクを取る経営を関西経済の活性化につなげよ―レンゴー

段ボールをはじめとする各種パッケージの製造・販売をグローバルに展開するレンゴーは、早くから環境負荷の低減に向けた独自の取り組みに注力してきた。自然に返る高機能素材の開発とグループ展開、さらに地元関西経済の展望について大坪清会長兼CEOに聞いた。

レンゴー 会長兼CEO 大坪 清 (おおつぼ・きよし)1939年大阪府生まれ。62年神戸大学卒業後、住友商事入社。紙パルプ部門を中心に歩み、99年欧州住友商事会長兼社長。2000年取締役副社長、同年6月レンゴー社長就任。14年会長兼社長就任。20年会長兼CEO就任。

現代は「紙器の時代」 新素材の開発に注力

── 近年は段ボール事業を中心に東南アジアで生産拠点を増やしていますが、コロナ禍の影響は。

大坪 当社はコロナ禍においてもさほどの影響はなく、事業は比較的安定しています。ポストコロナではなく、ウィズコロナの発想で、柔軟に計画を変更できる余地を残しつつ、時流に合わせた経営を心掛けています。もちろん、アジアに軸足を置く方向性には変更はありません。

 また、売上高という点で補足すると、当社はシナジーの見込めるM&Aに注力しており、グループ会社を多数抱えています。連結決算においては、子会社も含めた自社グループ間の内部取引分は相殺消去する必要があり、決算発表の際に売上高に反映することができません。

 こうしたグループ間の取引だけで2千数百億円の規模がありますから、単純合算の事業規模としては近い将来、グループ全体で1兆円の売り上げが達成可能です。

 また、日本の会計基準については、欧米のやり方をそのまま適用するのではなく、日本ならではの基準を作る必要性を訴え続けています。

── Eコマースの拡大で世界的に段ボールの需要が高まっていますね。

大坪 物を運ぶ時に、最も重要な役割を担うのは段ボールです。この需要は年率で3%伸びていますから、グループ全体で段ボール事業を強化しているところです。私は現代を土器、青銅器、鉄器を経て「紙器」の時代だと考えています。その紙器の中心となるのが段ボールです。

 また、これから当社が目指していかなければならないのが、ロジスティクスにおけるCO2の削減であり、CO2排出量と吸収量がプラスマイナスゼロの状態となるカーボンニュートラルの考え方です。当社は1999年にレンゴー株式会社環境憲章を制定(2009年にレンゴーグループ環境憲章に改定)し、CO2排出量を削減してきたという経緯がありますから、これにより一層取り組んでいきます。

── 植物由来の新素材である「セルロースナノファイバー」が注目されています。

大坪 環境意識の高まりから、石油から作られるプラスチックの代替となる素材の活用が世界的に求められている中で、当社は天然木材パルプ由来の機能性素材である「セルロースナノファイバー」の開発と事業化を進めています。

 これは鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度を持つ素材で、セロファンの製造技術を応用して作られています。段ボールや紙器、そしてセロファンと、当社の製品はすべて土に埋めると生分解しますが、この生分解を可能にするためには素材が植物の光合成によって作られたものでなければなりません。当社はこの新素材の総合的な開発のため、いくつかの会社をM&Aで買収してグループ内に組み入れました。

関西経済の潜在的な力と経営者に求められる覚悟

── 関西経済の発展のために、これからなすべきことは何でしょうか。

大坪 2府6県が一つになる「ワン関西」という姿勢が大切です。それぞれの府県が形式的に話し合うだけでなく、関西を強化するために必要なことを一丸となって洗い出し、実践していくことが求められます。

 関西経済連合会では「ルック・ウエスト」を事業計画として掲げていますが、これは東京ばかり注目するのではなく、もっと西に目を向けようという意味です。レンゴーも東京に事業拠点を置いてはいるものの、本社はポリシーを持って大阪に残しています。関西経済の発展のために、他の企業の経営者にもぜひ大阪に踏みとどまっていただきたい。

 さらに「ルック・ウエスト」には、関西から見たアジア地域のことも含まれています。2020年11月にはRCEP(東アジア地域包括的経済連携)が合意され、韓国や中国、東南アジア諸国など計15カ国との連携協定が結ばれました。今後は物流という観点からも、関西は海外とのゲートウェイとして本格的な中心地となっていきます。

── ウィズコロナの不透明な経済状況の中で、今あらためて経営者に求められる資質とは。

大坪 私が当社の代表に就任してから20年が経ちました。東証一部上場企業で、これだけ長期間にわたってトップを務めるのは珍しいケースでしょう。しかし、真の経営をしていくためには、こうせざるを得ませんでした。

 今も後継者を鍛えるべく教育に注力していますが、経営者は与えられた業務を要領良くこなすだけの官僚的な仕事ではなく、すべての責任を背負った経営をしなければなりません。

 サントリー元会長の佐治敬三さんは「やってみなはれ」と言いました。やはり経営者にはこの精神が必要です。4~6年間の限られた在任期間だけを無難に乗り切り、引退して悠々自適にうちわを仰ぐ。経営者がそういうやり方では、企業が力を付けることは不可能です。経営者には覚悟が必要であり、正念場ではしっかりとリスクを取らなければなりません。

 京都の「おいでやす」という歓待の姿勢、「まいどおおきに」という感謝の念、先ほどの「やってみなはれ」。そして、失敗したらしっかり責任を取る。これらの基本的な関西弁に込められた本当の意味を取り戻し、理解することが強い経営、さらに関西経済を盛り上げるために必要なのだと思います。

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