大手からの支援や業務提携を行わず独自の存在感を示しているスカイマークだが、急激な円安で燃料費が高騰、赤字に転落する見込みだ。それでも新型機導入、国際線進出と鼻息は荒い。しかし、今思わぬ問題に足を引っ張られている。(文=本誌/古賀寛明)
復活の狼煙が思わぬ火種に

羽田-福岡線から導入される新機材A330-300(写真:AIRBUS)
昨年12月、エアバスの本拠地フランス・トゥールーズで行われたスカイマークエアラインズ(以下、スカイマーク)のA330型機導入のニュースは、大手航空会社とも、格安航空会社(LCC)とも違う独自路線を歩む決意を感じさせるポジティブな印象を与えた。
そのA330型機が、5月31日に羽田―福岡間に就航する予定だ。日本の航空会社では初めて運航される機材であり、大胆なチャレンジは客室にも及ぶ。目玉は「グリーンシート」という文字通り淡いグリーンのゆったりとした座席。フットレストも装備され、シートピッチ(座席の前後間隔)は96・5・と、従来に比べ20・ほど広がった。他社と比較するとJALの「クラスJ」とほぼ同じ間隔になる。
同型機では座席数をエコノミークラスだけに設定すれば、最大で440席程度確保できるが、スカイマークは、271席に抑えたことでその快適さも分かってもらえるはずだ。加えて、今までどおりに低価格にこだわる姿勢を明言している。
しかし、良いニュースばかりではない。
ピーチ・アビエーションやジェットスターなどのLCCが市場に参入したことで、スカイマークの強みであったはずの低価格路線が発揮しづらくなった。結果、昨年3月には関西国際空港からの撤退を余儀なくされるなど、新たな軸を手にしなければ生き残りが難しくなっていた。
その起死回生策として、発表されたのが、今回の日本初就航のA330型機と、「グリーンシート」という低価格のままでの圧倒的なサービスの向上だ。ところが、予想外に話がずれてしまったのだ。
それが、話題の「ミニスカ」問題で、新型機導入に合わせた半年間限定のコーポレートカラーのスカイブルーを基調としたワンピースに、イエローのスカーフを使用したキャンペーン服の丈が、かなり短めであったために、品位の点をはじめ、セクハラ、保安業務への支障まで含めて物議を醸した。報道の中心は、ミニスカの賛否ばかりで、本来取り上げられなければならない起死回生の一手は全く伝わってこない。
スカイマークは、2009年に制服を廃止し、ポロシャツの着用になったことで、ともすれば地味な会社だと思われることもあっただけに、ビジュアル面での変更を大きなインパクトにつなげたかったが、逆に足を引っ張られたというしかない。
前述のとおり、スカイマークは、LCCの参入で、価格面での優位性は絶対ではなくなっている。さらに、どの航空会社にも言えることだが、急激な円安による航空燃料の高騰は、経営を直撃した。スカイマークも1月に今年度の業績見通しを下方修正し、営業損益が23億円の赤字と、5期ぶりに赤字に転落する見込みと発表している。
不安材料はそれだけではない。そもそも、昨年12月に行ったA330型機のお披露目会見では、就航は今年の3月ということであったが、それが4月18日に変更になり、さらに5月31日に延期になった事実がある。その理由を「飛行に必要な規程の準備に予想以上に時間がかかっているため」(広報部)と説明するが、どこかチグハグな印象は否めない。遅れとともに、マイレージサービスを導入していないため、リピーターの確保も難しい。ビジネス利用では、どうしてもANAかJALに流れてしまう現実もある。
では、このままでは復活は難しいのだろうか。
羽田とニューヨークで逆襲なるか
今は、逆風の真っただ中にいるが、航空関係者の中には、やり手の西久保愼一社長ならミニスカ問題も逆手にとって、利用するくらいのことをやるのではとみる向きもある。また、羽田空港をベースにしているため、成田拠点のLCCの脅威はない。低価格の優位性が保てる羽田だからこそ「グリーンシート」で、順調に顧客を獲得することができれば、大手の牙城を崩していけるのではないだろうか。
さらに、スカイマークが年末に予定しているのが、初めての国際線成田―ニューヨーク便の就航だ。採用する機材は、総2階建ての超大型ジェット旅客機のエアバスA380型機で、こちらも、日本の航空会社では初の導入となる。今年中に2機入る予定で、シートも国内線同様、快適性を追求し、ビジネスクラス114席とプレミアムエコノミークラス280席に限定、低価格で勝負する。
ただ、座席数を埋めることは簡単なことではない。北米線を就航するJALもANAも、中国をはじめとしたアジアへの中継点として考えており、日本の顧客だけで埋めることは考えていない。タイムスケジュールも乗り換えがスムーズになるように組んでいるくらいだ。
さらに、それぞれワンワールド、スターアライアンスと提携しており、顧客の獲得も着実に行える。その中で、アジアへの出口を見いださずに参入するというのはなかなか難しい。
アジアとの航空会社との連携の噂もあるが、広報部に問い合わせても確定情報はない。
復活をかけるスカイマーク、まずは羽田―福岡便からの巻き返しなるか、注視したい。
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