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課題山積の舛添都政に早くも“掛け声倒れ”の懸念

舛添要一氏

首都東京のトップとなった舛添要一知事に期待されるのは、首都のリーダーとしての決断力と国との調整能力だ。今のところ、「安全運転」を心掛けているが、厚労相時代には「消えた年金」をめぐり「ないものはない」と居直った過去もある。果たして、舛添都政はどこにいくのか。文=ジャーナリスト/山下剛士

舛添都知事

舛添都知事は山積する問題にどう対応するか
Photo:AFP=時事

いまだに見えぬ〝舛添カラー〟

 「東京を世界一の街にする」「東京オリンピック・パラリンピックを史上最高の大会にしたい」と、舛添要一都知事は強い意気込みを見せている。

 現在、都には東京オリンピックへの準備のほか、待機児童や医療・介護対策、東京電力改革、原発問題など国の将来を左右する問題が山積している。舛添知事は「イスに座っているヒマはない」とばかりに、早朝から職員をヒアリングし、夜遅くまで指示を出し、週に2、3回しか顔をみせなかった猪瀬直樹前知事や石原慎太郎元知事との意欲の違いを見せつけている。

 「パフォーマンスだけでこちらの説明を聞かなかった猪瀬前知事に比べて非常にやりやすい」と好印象を持つ幹部職員も多い。医療法人「徳洲会」グループから5千万円を受け取った問題で辞職に追い込まれた猪瀬氏は記者会見を拒否するなど記者と対立する場面が多かったが、今のところ金曜日の定例記者会見も無難にこなしている。

 ただし、今のところ「舛添カラー」は出ていない。知事は「優れた技術を有する東京の中小企業の再生・発展を力強く応援する」とし、中小企業の経営基盤強化とネットワーク化、国際連携による国際競争力のある産業・人材都市を目指すというが、都内の中小企業経営者は「絵に描いたモチだ。アベノミクス効果を実感できるような政策が必要だ」と不満を漏らす。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックの準備の遅れを取り戻すリーダーシップも期待される。猪瀬前知事と国が対立していた東京オリンピックのメーン会場となる新国立競技場の改築費用の負担についても早急な調整が必要だ。

 しかも、東日本大震災の復興事業の影響で、東京都が新設する競技場などの整備費が招致段階で見込んでいた金額の2倍以上の3800億円に達する見込みであることが発覚した。震災復興に伴い資材や建設現場の人件費が高騰、オリンピック関連の建設費も急騰した。

 また、道路建設や電気設備の設置や消費増税の影響もある。都は開催準備金約4100億円を積み立ててきたが、これを使い切る可能性も出てきた。東京オリンピック開催に伴う都の予算要求は、組織委員会への出資金も含まれるからだ。

 組織委トップである会長には日本体育協会名誉会長の森喜朗元首相が就任した。石原元知事時代から招致活動に邁進していた森氏の就任は当初から予想されたが、「ボクが招致した」とする猪瀬前知事の横やりで人事が難航した。そのため、森氏との関係修復や財界への協力要請も求められる。

 オリンピックは世界最大のイベントだ。しかし、主催はあくまでも都市である。それを監督するのが国内オリンピック委員会(NOC)と国際オリンピック委員会(IOC)。東京オリンピックを成功に導くためには、知事の調整力が必要だ。

 東京オリンピック以外の問題に対してはどうだろうか。昨年末に公表される予定だった23年までの都の将来像を示す長期ビジョンは、猪瀬前知事の辞職で宙に浮いたままだ。

 首都高速の再整備や木造住宅密集地域の改善、都営地下鉄と東京メトロのサービス一元化、羽田空港国際便増便などでは石原・猪瀬路線を踏襲するとみられるが、エネルギー問題や横田基地軍民共用化推進など都の将来を決める重要な案件については明言を避けている。

 都の予算規模は約13兆円。中堅国の予算規模にも匹敵するが、急激に少子高齢化が進む東京は東京オリンピックが開かれる20年には4人に1人が高齢者になる。元厚生労働大臣で福祉政策を看板に掲げ「福祉のプロ」と言うならば、具体的な財源を示すことが必要だ。

 エネルギー問題についても「原発に依存しない社会の構築」を掲げたものの、東電や原発については「経営効率化」「事故対応の透明化」など明確な指針は示していない。

厚労相時代はパフォーマンス先行

 舛添氏は、01年7月の参院選で自民党から比例区に出馬してトップ当選。07年から08年まで厚生労働大臣を務め、その後自民党を離脱して「新党改革」代表に就任した。その際、借金返済に使うことが禁止されている政党助成金や、立法事務費で借金返済が行われた疑いがかけられている。

 厚生労働大臣時代にも「命がけでやらなければならない」とパフォーマンスを行い、年金記録不備の処理を最優先させたが、その解決には程遠かった。社会保障費の削減もままならず、厚労省は09年度予算で2200億円の削減を盛り込んだが、現実は全国各地で医師・介護士不足が起き、医療・介護難民があふれることになった。

 社会保障制度維持の切り札だった後期高齢者医療制度も「うば捨て山制度」と不評に終わった。さらに、年金の算定基礎となる標準報酬月額の改ざん問題も表面化した。

 社会保険庁改革も道半ばで終了した。当時の舛添氏は「厚労省の仕事の範囲は広過ぎる」とぼやいたが、今度こそ「都の仕事の範囲は広過ぎる」と言い訳してもらいたくない。

 
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