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再上場した西武ホールディングスの今後の鍵を握る企業価値向上

後藤高志・西武ホールディングス社長

 西武ホールディングスが9年4カ月ぶりに再上場を果たした。上場までには幾多の困難があったが、着実に経営改革の成果を積み重ねていった。今後は、都市交通・沿線事業に加え、潜在能力の高いホテル・レジャー事業や不動産事業を中心に成長戦略を遂行する。(文=本誌/村田晋一郎)

 

再上場で新たな夜明けを迎えた西武ホールディングス

 

後藤高志・西武ホールディングス社長

「Lポーズ」をとる後藤高志・西武ホールディングス社長

 西武ホールディングス(西武HD)が4月23日、東京証券取引所第1部に株式を再上場した。西武グループとしては、2004年12月に西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載が発覚し上場停止となって以来、9年4カ月ぶりの株式市場復帰となった。売り出し価格1600円に対して、初日の終値は1770円。時価総額は6055億円で、関東の私鉄では東京急行電鉄、小田急電鉄に次ぐ規模となった。

 東証での上場セレモニーを終えて引き上げる時、後藤高志社長は右手を掲げ、人差し指と親指を立てて「L字」を作って示した。この「Lポーズ」は傘下のプロ野球団・埼玉西武ライオンズを表す。昨年、筆頭株主である米投資ファンド・サーベラスとの対立で球団売却が話題に上った時、後藤社長は「ライオンズはグループ再生のシンボル」であると強調し続けてきた。それだけにライオンズを引き合いに出すパフォーマンスで、「再生」を高らかに宣言した格好となった。

 グループ再編に伴い持ち株会社制に移行し、05年に西武HDが誕生。メーンバンクのみずほ銀行副頭取だった後藤氏が社長に就任し、経営改革を進めてきた。この間、不採算事業やシナジーの低い事業の資産売却など経営資源を抜本的に再構築した。05年3月期に1兆3500億円あった有利子負債は、13年3月期には8355億円まで圧縮。財務体質の強化と収益力の向上を達成した。

 この10年の間で、08年のリーマンショックや11年の東日本大震災の影響を受けたが、その都度回復。さらに12年末からは経営方針をめぐるサーベラスとの対立がTOBにまで発展したが、昨秋から関係改善に転じ、今回の再上場にこぎ着けた。

 上場後の会見で、後藤社長は05年西武グループ入りした時に「朝の来ない夜はない」と語ったことに言及した。05年当時は、西武グループに対して信用不安が極大化しており、この言葉は後藤社長が自分自身に言い聞かせたものだという。リーマンショックや東日本大震災などの困難に直面した時にも、「太陽は必ず上がるということを自分に言い聞かせながら、経営改革に取り組んできた」と振り返る。今回の再上場で「ようやく新たな夜明けを迎えた」と安堵の表情を浮かべた。

 

西武ホールディングスの筆頭株主サーベラスはどう出るか

 

 西武HDでは、再上場を成長戦略の遂行に向けた新たなスタートと位置付ける。「峻別と集中」を軸にした抜本的な経営改革は一巡し、今後は、新たな視点によるイノベーションにスピード感を持って取り組み、株主価値・企業価値の極大化を図る。

 企業価値については、再上場に当たって売り出し価格をめぐる動きがあった。3月19日に上場が承認された際の想定売り出し価格は2300円。この価格は、類似の公開会社との比較や、同社の成長性・資産内容・業績予想や主幹事証券会社の提示価格を勘案して決定したという。

 しかし、昨今の低調な株式市場の状況などを考慮して、最終的には仮条件を1600円に決定。売り出し価格も仮条件どおりの1600円となった。当初サーベラスは35%の保有株のうち15%を放出する予定だったが、1600円の売り出し価格を受けて売却を見送った。これにより、サーベラスは35%を有する筆頭株主であり続ける。また、今回見送ったことで、サーベラスは半年間、株を放出できない。

 昨年末からの関係改善で、サーベラスグループおよびCEOのスティーブン・ファインバーグ氏と信頼関係をしっかり構築してきたという。また、サーベラスは西武HDの経営方針や現体制を支持し、経営関与は行わない、株の買い増しも行わない旨を表明している。

 しかし、昨年の騒動を考えると、西武HDの株価が上がらなければ、再びサーベラスとの関係がこじれないとは言い切れない。サーベラスが3分の1以上の株を保有し続けることを最大のリスクと取る向きもある。

 後藤社長は当初の売り出し価格の2300円を「フェアコーポレートバリュー」だと認識している。今後その水準まで企業価値を高めるには、いかに成長戦略を遂行するかに懸かっている。成長戦略については、同社の強みである都市交通・沿線事業、ホテル・レジャー事業、不動産事業を三位一体で進めるという。

 ホテル・レジャー事業については、観光立国が日本の国家戦略と位置付けられるなど、事業環境は追い風にある。プリンスホテルがインバウンドの最大の受益者と成り得ることから、西武HDにとって当面の大きな成長ドライバーとなる。

 不動産事業については、西武HDは豊富かつ優良な不動産を保有する。東京23区内に保有する土地面積は46万平方㍍で、三菱地所など不動産セクターの上場会社よりも規模が大きい。今後はこれらの優良な資産を次の成長に結び付けていく。まずは16年に紀尾井町プロジェクトが竣工する予定だ。

 後藤社長は会見で、「スピード感」を何度も強調した。成長戦略を早急に遂行したいとの意気込みがうかがえる。当面は5月の決算発表、6月の株主総会、サーベラスが株を売却可能となる10月が1つの転換点となる。

 
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