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アジアの物流ネットワーク拡大で、“日本品質”はもっと生きる--山内雅喜(ヤマト運輸社長)

山内雅喜氏

 日本の生活インフラにまでなったヤマト運輸の宅急便。今、その事業領域はアジアにまで広がっている。さらに、昨年から香港への国際クール宅急便も始まったことで、日本とアジアがより身近になってきた。国内での大型施設も誕生し、さらなる変貌を遂げるヤマト運輸について山内雅喜社長に話を聞いた。

山内雅喜

山内雅喜(やまうち・まさき)
1961年長野県生まれ。金沢大学卒業後、1984年ヤマト運輸に入社。執行役員東京支社長、同人事総務部長、ヤマトロジスティクス社長などを経て、2011年4月から現職。

成長するアジアの勢いを取り込むための物流ハブ

 

-- 事業エリアをアジア圏に拡大するなど、海外に注力されていますが。

山内 2019年に創業100周年を迎えますので、そこに向けて、国内では新たな事業で価値を創造し、海外は、特にアジア地域ですが、今後成長していく市場で、私どもがこれまで積み上げてきた宅急便サービスを提供していきたいと考えています。

長期経営計画「DAN-TOTSU経営計画2019」の中でも、3年ごとの中期経営計画において、〝HOP〟、〝STEP〟、〝JUMP〟と3段階で目標を達成しようと考えています。

 今までは宅急便というと個人の方を対象としたサービスのイメージが強かったのですが、今後は個人の顧客だけでなく、企業間物流のお手伝いもしていきたいと考えています。加えて、アジアの各地域に事業を広げていくことで、日本の経済成長を支えようという思想で動いています。

-- 沖縄貨物ハブの位置付けは。

山内 日本とアジアの各地域を結ぶための物流ハブ機能です。沖縄の那覇空港にANAさまと沖縄県と連携をとって進めています。このネットワークが誕生したことによって、日本からアジア圏への翌日配達サービスが可能になり、同時に、アジア圏において、ドアツードアの小口一貫サービスも可能になったわけです。

-- なぜ、沖縄に。

山内 3点挙げられるのですが、まずは経済性です。沖縄県が沖縄国際物流ハブへの支援を積極的に行っているのでそのメリットが享受できます。例えば、通関も24時間対応してもらえていますし、空港の隣接地域に特区を設けて多くの支援を得られています。

 もう1つが、沖縄は地政学的にアジアのヘソの位置にあるということです。アジア各地と距離的に近くなれば、当然スピード性も向上します。

 最後に安定性です。那覇空港にはANACargoさまの貨物専用機が日本各地から、そしてアジアの各地から飛んできます。専用機ですから輸送量が安定して確保できていることが大きく、これで、アジアを1つのネットワークで結んでいけます。拡張余力も十分にありますので、将来に向けて大きな期待が持てる場所になっています。

 つまり、物流のスピードと品質とコストが沖縄でそろったことで国際物流貨物ハブを実現することが可能になったわけです。

-- 日本の農水産物も沖縄を通って多く出ているそうですね。

山内 スピードを伴うことによって生鮮品が出荷できるようになったこともあり、農水産物に対する期待は高いですね。

 日本のものは、アジア各地域においても品質の良さで安心でき、人気も高いですから、価値を生むことが分かっています。北海道や宮崎県、徳島県など自治体が積極的に県産品をアジアへ売っていきたいと動かれていますね。

 ただ、そうはいっても検疫や通関の問題がありますので、そのハードルを政府の働き掛けで下げていただければ、アジアへの提供力をまだまだ高められると期待しています。今後も日本のものをアジア圏の人々が通販などで買い求めるニーズは高くなるでしょうから、こちらも期待できますね。

 また、農水産物だけではありません。製造業の方にとっても、サービスパーツの供給などは沖縄に在庫拠点を集約することで、スピードアップにつながり、かつ在庫コストなども減らせますからトータルコストも下げられ、国際競争力を高められる仕組みを提供できると考えています。

 今後も、ANAさまと沖縄県と私どもが一体となって盛り上げていきたいと考えています。

-- 今後力を入れる国・地域は。

山内 現在、中国の上海市での宅急便事業が一番大きい規模です。集配を担当するセールスドライバーが600人、車が500台、拠点も40ほどあります。市場としても順調に伸びていますね。

 一方、香港は、フリーポートですから規制が少ないということもあって、モデルケースを行っていくのには良い場所です。

 国際クール宅急便を香港から始めたのもこのためです。このサービスも、今年中には台湾やシンガポールに拡大していきたいと考えています。

 

アジアでは宅急便の表記が「TA・Q・BIN」

アジアでは宅急便の表記が「TA・Q・BIN」になる

「バリュー・ネットワーキング」が物流を変える

-- 沖縄以外にも、羽田や厚木に大きな施設ができましたが。

山内 先ほども申しましたが、長期経営計画の最初の3年、HOPの段階に基盤となる新しいネットワークを整備しました。拠点として、羽田クロノゲートを海外との結節点として、国内では、今後、中部や関西にもできる予定ですが、関東地区で先駆けて厚木ゲートウェイという施設ができました。

 これらは、従来の宅急便の物流ターミナル機能だけにとどまらない、マルチな機能を持つ施設です。具体的には、宅急便を筆頭に情報処理や決済機能、ロジスティクスでの家電の修理や、組み立て、医療品の洗浄など、ヤマトグループ内にいろんな機能を兼ね備えていて、これらを有機的に結び付けて付加価値が高まるようなサービスを提供していこうとしています。

-- 新しい考え方ですか。

山内 昨年の7月には、「バリュー・ネットワーキング」構想というものを発表しました。

 物流と言えば従来は「つくったものを運ぶ」あるいは「売るためのものを運ぶ」という、必然的に発生するコストという考え方でしたが、これを物流(ネットワーク)そのものが、価値(バリュー)を生み出す。物流が価値を生み出すものに変えていくことが、われわれが目指す姿だと定めたのです。

 例えば、つくったものを販売店で販売するためには、一度倉庫に入れて在庫管理し、注文に応じて出荷して、荷造りをして出していく流れです。さらに、携帯電話に名前を入れるようなちょっとした加工でも、携帯電話を生産した工場から名前を入れる工場に運ぶ作業や、留め置く場所が必要でそれぞれコストが掛かっていました。これを物流のネットワークと加工などをセットにしてしまえば、1つの場所で止めることなく流しながら加工ができます。時間が大幅に短縮でき、これで従来掛かっていたコストや在庫までも減らすことができるのです、

 私たちの考える物流の価値というのは、3要素あって「スピード」と「品質」と「コスト」。

 スピードが高まることによって、お客さまへの提供価値が高まると同時に品質も高まる。だけどコストは大きく上がらず、リーズナブルである。

 これらをすべて実現させることで、物流を価値のあるものに変えていく。ヤマトグループは機能をいろいろと持っていて、全国に70の大きな物流拠点があります。

 これらの機能や拠点をお客さまのニーズに合わせて最大限活用していくことで価値を生んでいきます。

 この〝STEP〟の3年間で具体的な姿になるよう重点的にやっていきたいですね。

(写真=佐々木 伸)

 
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