バイオリニストの五嶋みどりさんをお招きしています。みどりさんは国連ピース・メッセンジャーとしての活動をはじめ、国内外で社会貢献活動を行っています。10月の公演では、ある挑戦をするそうです。意気込みや社会貢献活動で感じたことをたっぷりお聞きしました。

五嶋みどり(ごとう・みどり)
バイオリニスト。1971年生まれ。11歳でニューヨーク・フィルとの共演以来、欧米の主要なオーケストラと共演を重ね、幅広く演奏活動を続ける。2004年には南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校弦楽学部の教授となり、後進の指導にも情熱を注ぐ。社会貢献活動にも意欲的に取り組んでいる。07年より国連ピース・メッセンジャー。
バイオリニスト五嶋みどり氏が音楽を通した社会貢献に尽力
佐藤 みどりさんは、音楽の楽しさを、障害のある子どもたちや海外の子どもたちと共有しようと始めた「ミュージック・シェアリング」の活動にも積極的に取り組んでおいでですね。
五嶋 この活動は名前や活動内容などを変えつつ20年以上続けています。現在は、特別支援学校に音楽家の仲間を派遣して楽器の演奏指導をしたり、アジア諸国の学校や病院に生演奏を届けたりする活動も行っています。
佐藤 特別支援学校の子どもたちとは、10月のコンサートでも共演されるのですよね?
五嶋 そうなんです。この企画はミュージック・シェアリング独自のものではなく、サントリーホール主催の「スペシャルステージ」というプロジェクトの中で行います。プログラムは5日間に及び、最終日のプレコンサートで、ミュージック・シェアリングの活動に参加している3校の生徒に出演してもらいます。
佐藤 何てすてきな企画!
五嶋 練習の成果を披露する場になればと考えています。


バイオリニスト五嶋みどり氏が障害ある子どもとの共演で気付いたこと
佐藤 どのような思いで、コンサートを企画しましたか?
五嶋 このようなコンサートは私自身にとっても、大いにプラスになると思っています。ミュージック・シェアリングの活動でも気付くことが多いので、コンサートをとおしても刺激を受けることがあるだろうと思っています。
一方で、挑戦しなければならない難題もあります。実は2009年にも障害のある子どもたちと合同発表会を開いたのですが、そのとき想像もしていなかった問題が起こりました。例えば会場内はバリアフリーでも、会場までのアクセスが難しくて、「バリアフリーのエリアはここだけなんですか?」って(笑)。
佐藤 分かります。去年亡くなった私の父も、足が不自由でした。通路のちょっとした段差や階段が障壁になり、何度も大変な思いをしましたね。
五嶋 客席がバリアフリーでもステージは段差があって移動に苦労する例もあります。また、車いすの方が利用できるお手洗いの数が少なく、休憩時間内に利用できないというケースもありました。多くの会場はバリアフリーをうたっていますが、実用性には疑問が残ることもよくあります。
佐藤 社会として障害者の目線を理解することは大切ですね。
五嶋 10月のコンサートが、子どもたちの感性に触れてもらう機会になってほしいです。私自身もミュージック・シェアリングなどの活動をとおして感じた課題を、多くの人に伝えていきたいと思います。
[対談を終えて]
みどりさんらしい凛とした表情に描けました。さて、11歳でデビューし、世界の名高い音楽家と共演してきたみどりさんを初めてテレビでみたとき、強い衝撃を受けたことを思い出します。キャリアを重ね、音楽活動だけでなく、社会貢献活動にも熱心に取り組まれています。世界に挑む日本女性を誇りに思います。
[前編]
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