日本の対外発信力を強めるべきとの声が、最近特に大きくなっている。
その背景として、歴史認識についての日本の立場や考えが、世界に十分に伝わり、理解されているようには思えないということがある。中国や韓国と比べて、わが国は発信力が弱いのではないだろうか。中国や韓国では、広報に関して国家的な取り組みを行っており、聞くところによれば、そのための予算は日本よりも桁違いに大きいとのことだ。
日本は今まで、自らの立場や考えを対外的に発信する必要性をあまり感じていなかったのではあるまいか。
しかし、「真理を語ればいつかは分かってもらえる」といった日本の常識は世界では通用しないのであって、今や世界に対する日本の発信力を根本から見直すべき時が来ていると思われる。
そのためには、政府においても広報の専門家がもっと必要になるはずである。そのような人材を育成し、また外部から採用すべきである。
これからは、中長期、そして短期の広報戦略をつくり実行しなければならない。ロンドン、ニューヨーク、ワシントンなど世界の主要都市には広報の専門家を常駐させ、日本の対外発信力を改善、強化していくべきである。
マイナスの広報として、政治家の不用意かつ不適切な発言が、国際的に大きな問題を引き起すこともある。
例えば、首相のためにと思って発言したことが、逆に首相のために大きなマイナスになるばかりでなく、国の立場を傷つけてしまう場合もある。首相、閣僚をはじめとした政治家の発言をサポートするスピーチライターや、広報の専門家をもっと活用すべきである。
日本ではまだ十分に活用されていないが、米国ではスピーチライターは職業として既に確立されたものであり、政治家ばかりでなく数多くの経営者にも利用されている。スピーチでの間の取り方やジェスチャー、洋服やネクタイの色まで、アドバイスするプロも存在する。
また、広報以前の問題として、日本人はディベートやプレゼンテーションの面で外国人に後れを取っているのではないかという心配もある。
日本人は議論のキャッチボールがへただといわれる。この問題を解決するためには、ディベート教育を充実することが必要だ。米国では、小学校からディベート教育を実施しているといわれるが、わが国でも早い段階から、子どもたちの間で建設的な議論のキャッチボールが行われるような教育を行うべきである。それは民主主義のための基本的なインフラでもあるからだ。
日本人のプレゼンテーションのやり方も改善の余地が大きいのではあるまいか。日本人は、基本的に地味、控え目であり、「本質的なものがしっかりしていれば良い」という考え方が強い。
もちろん本質は大切だが、それを分かりやすく伝えることもまた大切だということを認識すべきであろう。
視点 記事一覧はこちら
茂木友三郎氏 関連記事一覧はこちら
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan