人材育成のコツ① 想像力の階層が業務に影響する
「今の若者は想像力がない」と、先輩方や経営者の方々がよくおっしゃっているのを聞きます。やはり、1から10まで言わなければならない社員の場合、想像力の階層が浅いと言えますし、指示を出した場合、「当然、ここぐらいまではやってくれるだろう」と思ったものの期待が外れることも多くなります。
例えば、「プレゼン資料のコピーを取ってほしい」と頼んだ際に、どこまで配慮ができるのか。コピー取りは簡単な仕事に思えますが、ここから想像力の階層が図れます。
第1階層:何も考えず言われたことのみをする……コピーという言葉を認知
第2階層:指示の用途を上司に確認する……派生した考え
第3階層:上記ののち、使用者の立場を考える……自走できる
このように、本来、第3階層まで出来上がっていないと、社会に出て、うまく意思疎通ができない場合が出てきます。「社外用資料を頼んだつもりが裏紙でコピーしている」ということにもなりかねません。
私が完全紹介制の幼児教室で毎日行っている絵本プログラム(ウィズブックプログラム)では、子どもの頃から絵本をとおして想像力を育めるよう取り組んでいます。具体的に、子どもがどのようにして絵本によって想像力を育んでいくのか。例えば、絵本の中にバナナが出てきた場合、子どもたちはバナナと認知がリンクするまで、何回もこのページを見ながら言葉と音と絵をリンクさせていきます。そして、大人が問い掛けをすることで、知識から下記のように派生させていくことができます。
第1階層:見えているものから想像する……「バナナはあまいよね」「さわるとやわらかいんだね」
第2階層:見えていないものを想像する……「バナナが好きな動物は何かな?」「ジュースにしてもおいしいね」
第3階層:見えていない想いや背景を想像する……「どうしてサルはバナナが好きなのかな?」「ママにあげたら喜んでくれるかな」
このように丁寧に言葉を獲得していくフローこそ、想像力を付ける働き掛けです。
言われたこと以上に行動したり、慮ったりするためには、相手の思いを「想像」できる力が必要です。子どもたちが本来持っているその力を、どのようにして目減りさせずに育てていけばよいのか。
それには、「動機付け」が効果的です。先述したバナナの例のように、私たちは、言葉から想像を広げて行動できること、「イメージング」を楽しめることを、幼い頃から繰り返し行っています。絵本を読み、自分で考えて行動する訓練をしているのです。
人材育成のコツ② 相手の思考を知ることの重要性
では、ビジネスに置き換えてみるとどうでしょうか。想像力の階層が浅い部下の場合、想像力の欠如が納得感を生んでいないことがほとんどですから、まず、部下の想像力の階層を認識すること、指示出しのレベルを変えることが必要と言えるでしょう。
「納得する」ことは、感情と思考と行動が統一された状態です。この3つがリンクしていないと指示を受けても人は行動に移せません。
「納得する」というのは、その人の思考に合わせた対処ができるということです。理解していない部下がいた場合に、「ちゃんと聞いていない」と思われがちですが、その人の思考に合わないことを説得しても納得感がありませんから、もし、思慮深くない行動をとる部下がいたとすれば、まずは上司が、その相手の思考を知ることでスムーズに進むようになります。
まず、想像力の階層を認識して、想像力の階層が第1階層の部下の場合、派生する指示(第2階層)をあらかじめ伝えます。「幹部会議で使う資料を10部。社内会議だからモノクロでかまわない」といった具合に。すると自走できる社員は、「幹部が集まる際の資料は裏紙では失礼だ。5枚ずつあるからホチキスでとめよう」と第3階層の提案ができると思います。
アインシュタインも、「想像力は、知識よりも大切だ。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む」と言いました。学歴ではなく、幼少期からこのような人間力を養うことで、想像力を発揮した人間関係が構築できる人に育っていくのです。
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