媒体資料
経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「新国立競技場は 新たなスポーツ文化のハブを目指す」--河野一郎(日本スポーツ振興センター理事長)

 56年ぶりとなる2回目の東京オリンピックは、1964年大会の施設を生かしたヘリテッジゾーンと東京ベイゾーンとをうまく使い分け、コンパクトな開催を謳う。その中で、注目を集めている施設がメーンスタジアムとなる国立競技場であり、大規模な改修を予定している。同施設を管轄する日本スポーツ振興センター理事長の河野一郎氏に新しい国立競技場について話を聞いた。

提供:日本スポーツ振興センター

提供:日本スポーツ振興センター

現在の国際規格に合わせるための改修

 現在の国立競技場は、1964年大会のメーンスタジアムとして改修され現在の姿となり、その後も陸上、サッカー、ラグビーなどの主要大会で使われてきた。しかし、現在の国際競技規格に合わないことが問題視され、改修することになった。

 改修の経緯について、河野一郎・日本スポーツ振興センター理事長は次のように語る。

「事の始まりは、2019年のラグビーのワールドカップの開催が決定したところからスタートしています。2002年のサッカーのワールドカップでは、首都・東京で開催できませんでした。このため、首都にきちんとしたメーンスタジアムがあることが望ましいという意見が多々ありました」

 現在の国立競技場は、「観客席の3分の2以上に屋根が架設されること」という国際サッカー連盟の要求条件を充たしていないため、ワールドカップの会場として利用されることがなかった。陸上競技においても1991年に世界陸上を開催したが、走行レーンが8レーンしかなく、サブトラックも400㍍でないため、現在は国際陸上連盟の規格を満たしていない。

 競技条件面だけでなく、運営面の不備も指摘されている。河野理事長は続ける。

「メディアの方の導線を考えても、現在の国際大会を開くような導線が確保できません。それは競技場の中だけでなく、競技場へのアクセスも含まれます。さらにVIPの導線やホスピタリティースペースの欠如も決定的な問題になっています。また、現在の競技場内の施設ではスペースの問題で、特に国際陸連が推進しているアンチドーピングに対応できず、世界基準の大会は開催できません。問題は1つではなく、いろいろな面が欠けているのです」

河野一郎(日本スポーツ振興センター理事長)

河野一郎(日本スポーツ振興センター理事長)

スポーツ観戦を変えるスタジアムの期待

  改修に向けては、昨年末にデザインを公募し、国際コンクルールを開催。最優秀賞がイギリスの建築家のザハ・ハディド氏のデザインに決定した。

 コンクールで求められた条件は、収容人員8万人、全天候型スタジアムを実現する開閉式の屋根、一部可動式の観客席の3点。この条件を充たした上で、周囲との調和や、19年のラグビーワールドカップまでの工期が考慮され、ハディド氏のデザインが採用されたという。ハディド氏のデザイン案は、IOC総会での最終プレゼンテーションでも紹介されたが、斬新なデザインゆえに論争が起こっている。

 その中で日本の競技場に馴染みが薄いのが、開閉式の屋根だろう。開閉式の屋根について、河野理事長は次のように語る。

「われわれが考えているのは、普段は開けておいて、必要な時に閉めること。その理由はやはり芝生です。天然芝をベースにしていますから、太陽の光と風が重要になってきます」

 芝生の保全は課題の1つで、芝生の品種や敷設方法を検討しているという。

 8万人収容の規模については、大きくなるだけでなく、今後のスポーツ観戦そのものを変えるスタジアムになるという。来場者が競技場に来て、ただ帰るのではなく、いろいろ楽しむことができる仕掛けを用意する。

「外苑前の駅から競技場に着くまでの間、着いてから試合が始まる前、試合が終わった後、帰るまでといろいろなフェーズがあります。来場者がそれぞれのフェーズで楽しめるように一体となった計画を推進したいと思います」

 また、オリンピック後のパラリンピックを視野に、新国立競技場ではユニバーサルデザインを重視する。

「今の日本は高齢化社会ですから、ハンディキャップの人だけではなく、高齢者にもやさしい必要があります。ですからバリアフリーではなく、ユニバーサルデザインという言葉を使っています。日本が直面している高齢化は他国も後追いしていますから、新国立競技場がうまくいけば、確実に世界のロールモデルになると思います」

 さらに今後の可能性を次のように語った。

「オリンピックが開催される頃には新国立競技場一帯と渋谷、赤坂を結ぶ地域が1つのゾーンになってくると思います。しかも羽田に近いとなると、アジアを中心に世界中からスポーツ観戦にやってくるようになり、新国立競技場はスポーツ文化のハブになる可能性があります」

 新国立競技場にやってくる外国人来場者の経済効果も期待できるという。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る