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「マネー資本主義のルールを疑え!」--福井晴敏(小説家)×阪本順治(映画監督)

福井晴敏(小説家)×阪本順治(映画監督)

成長至上主義からモノの見方を変える

【さかもと・じゅんじ】

【さかもと・じゅんじ】
1958年生まれ。大阪府出身。89年、監督デビュー作「どついたるねん」で芸術選奨文部大臣新人賞、日本映画監督協会新人賞など各映画賞を総なめにする。2000年「顔」で第24回日本アカデミー賞最優秀監督賞。その他「ぼくんち」「亡国のイージス」「座頭市 THE LAST」「北のカナリアたち」等、数多くの作品を手掛ける。

阪本 架空の国の造形と言いましたが、後半の国連の場面で石によって放たれる言葉を自らが実感できないと演出できないという想いがあったんです。だから撮影前に金融や経済についてにわか勉強しましたよ。

福井 僕に「どんな本読んだの?」って尋ねてきたりしましたよね。

阪本 プロットが出てくるまではM資金がらみの本や都市伝説の本を読んでいたけど、全部捨てちゃいました。金融や国際援助に関する本に変更して、この映画の肝である「世界を救ってみませんか」というメッセージを裏付ける言葉を探そうと。

―― 世界4カ国ロケを敢行し、日本映画としては初めて国連本部でのロケも行うなど、新たな試みも多かったわけですが、何か発見はありましたか。

福井 残念ながら、僕は国連のロケには一緒に行けなかったんですが、脚本段階でこのシーンはどう撮るみたいなところも2人でみっちり詰めたので、どんな映像になるかはある程度想像できていました。

阪本 いまだに「あの国連のシーンはどこで撮ったの?」って聞かれることもありますけどね(笑)。撮影許可を取るために粘り強く交渉しました。国連と言えば「紛争」みたいなイメージが強いので、国連の存在意義みたいな部分に則って撮影するということで許可を貰いました。

―― 現地ロケへのこだわりはあったのですか。

福井 例えば、海外の夜のシーンなどは周囲を暗くすれば日本でも撮れるかもと監督に話したら、その場に役者を置いた時に出てくる化学反応を撮りたいって言われましたね。その辺の本物志向が阪本さんの映画を底支えしていると思います。

阪本 俳優も自分の髪型、衣装、場所などが決まって初めて自分の役が分かるということがありますからね。設定した場所に連れて行くことにもこだわらなければいけない。そこの気候が暑いか寒いかといったことでも芝居は変わってきますから。

―― この映画を通じて最も伝えたいメッセージは。

福井 例えば金本位制が崩れて、おカネの価値をどう担保するかとなった時に、国の信用力という非常にあやふやなものをベースにお金が刷られるようになってしまった。信用危機が起きる原因もすべてそこなんです。実体経済で成長の伸びしろがなくなっても、数字だけのやり取りで世界がどんどん豊かになっているように見える。でも人類の富の総量を上回るようなお金が流通して、それが焦げ付くと清算しようという話になる。そしてバブルが崩壊する。

 要はイス取りゲームなんです。10個しかないイスの周りを50人ぐらいがグルグル回っていて、音楽が鳴りやんだ瞬間に一斉に座ろうとしたら、座れない人がこんなにいたのって話です。でも、それって異常じゃないかと。アベノミクスでもさんざん「成長が大事」と言われていますが、去年より必ず売り上げを伸ばさなきゃいけないというのも考えてみればかなり異常なことで、じゃあゴールはどこですかと問いたいんです。

 人間が幸福になるための「経済」というものが、人間をどんどん不幸にしている。そろそろそのルールに対して、懐疑的になってもいいんじゃないかと。ただやみくもに反対するのではなく、ちょっとモノの見方を変えてみませんかということです。

阪本 今回の映画で学んだことですが、一人ひとりの才能を見いだしてそこに投資をしていくことでしか救われないことってあるんです。このままいくと僕らは衆愚として使い捨てられる可能性が大いにある。リーマンショックがなぜ起きたか、どれだけの人が説明できるでしょうか。それに気付くちょっとした助けにこの映画がなってくれればと思います。

 

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