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「人本主義経営の実践で 高齢者に働く場と生きがいを」--上田研二(高齢社会長/75歳)

うえだ・けんじ氏

 上田研二氏は東京ガスの理事や関連会社社長を経て、2000年に60歳以上を対象にした人材派遣事業を手掛ける高齢社を設立した。上田氏は少子高齢化の加速を受け、「定年を過ぎても気力や体力のある方々に生きがいを提供したい」と意気込む。

東京ガス理事から高齢者向け人材派遣会社経営へ 【うえだ・けんじ】 1938年愛媛県生まれ。56年県立八幡浜高校卒業、東京ガスに入社。同社理事、関連会社社長などを経て、2000年に高齢社を設立。10年より現職。

東京ガス理事から高齢者向け人材派遣会社経営へ
【うえだ・けんじ】
1938年愛媛県生まれ。56年県立八幡浜高校卒業、東京ガスに入社。同社理事、関連会社社長などを経て、2000年に高齢社を設立。10年より現職。

産廃だった高齢者がレアメタルの宝庫に

―― 起業に興味を持つようになったきっかけを教えてください。

上田 私が50代半ばの時に元首相である故・橋本龍太郎氏の講演を聞きに行った時のことです。テーマは「少子高齢化社会の到来」で、定年を迎えたら自分で何か会社を興したいという気持ちが生まれました。

 米国流の株主至上主義の台頭で、従業員第一主義がなおざりにされるようになりました。私は子どものころ、父が会社を解雇され、仕事を失う大変さは身に染みて理解しています。経営学者の伊丹敬之さんが提唱する人本主義経営を自分の手で実践してみたいと思ったのです。

―― 起業に至る経緯は。

上田 1997年に東京ガス子会社の協力企業で、ガス機器などの修理施工を手掛ける東京器工に出向し、経営再建を果たすために社長に就任しました。倒産寸前でニッチもサッチもいかない状況でしたが、リストラをせずに経営改革を実行して黒字化にこぎ着けました。

 他方で、東京器工は中高年社員が多く、定年後も彼らの豊富な経験を生かせる場がないか考えるようになったのです。また、東京ガスの先輩方が老後の居場所を見失っているということを知り、人材を活用できる会社をつくりたいと決意しました。

 いくつになっても生きていることが楽しくなくてはおかしい。私は高齢者を〝産業廃棄物〟と呼んでいますが、適切にリサイクルすればレアメタルの宝庫に変わります。有志が集まって会社をつくることにしました。

―― 創業で苦労されたことはありますか。

上田 初めは雇用契約社員(派遣社員)集めに苦労しました。東京ガスのOB組織「星光会」の名簿を見ながらかたっぱしから電話を掛け、OB25人を確保。本人はもちろんですが、奥さんが大変喜んでくれました。「亭主元気で留守がいい」ということでしょうか。

 東京ガスや関連企業からガス設備の保安・設置などの仕事を獲得し、OBを派遣するようになりました。かつての職場に社員を派遣した場合、横柄な態度を取ってしまうケースが見受けられました。

―― どのように社員の態度改善を促したのでしょうか。

上田 「あいさつは自分から」「例えかつての部下でも、派遣先の上司にはさん付けをする」といった注意事項を徹底しました。徐々に社員の態度が改善されるようになりましたが、自分の考えに固執して派遣先の意向に従うことができない人も一部にはいます。当社の営業担当者が指導するようにしていますが、高齢者特有の現象かもしれません。もちろん、率先して掃除をするなどして職場に溶け込んでいる社員は数多くいます。

ガス事業分野では設備の保安・施工などを行う

ガス事業分野では設備の保安・施工などを行う

―― その他の苦労について。

上田 創業には非常にエネルギーが求められます。私は会社員時代に2社の再建を手掛けました。体重が10㌔㌘も落ちるほどの激務を経験しましたが、それでも創業の大変さの比ではありません。

 再建では課題のポイントを見極め、適切な改善策を取れば、解決の糸口が見つかります。一方、創業というのは、ないない尽くしの状態から開始するのです。社員がいない、顧客がいない、事業スキームが完成していない。一から事業を作り上げていく大変さは特別なものですね。

 一方で、会社が自分の思ったように育っているのを実感した時はうれしく感じます。当社では「リストラなし」「利益連動型の手当支給」など、人材重視の経営を貫いています。今後もこの姿勢を強化していきたいです。

将来的にはシニアの婚活事業参入を検討

―― 経営の現況はいかがですか。

上田 当社に登録している社員はグループ全体で約860人です。昨年私がテレビ東京のトーク番組「カンブリア宮殿」に出演したこともあり、登録者数が一気に伸長しました。主力のガス関連以外にも事業領域を広げる目的で、家事代行サービス会社「かじワン」を昨年4月に買収しており、そこに在籍していた220人も加わっています。

 2012年の売上高は4億5920万円で、この10年で約13倍にまで拡大しました。しかし、当社は過度な拡大路線を取るつもりはありません。小さくてもキラリと光輝くような会社を目指しています。今後は就労支援に限らず、幅広い領域で高齢者の支援を行ってきたいと考えています。具体的に検討しているのは、シニア向けの婚活サービスや、着脱が容易なユニバーサルの衣料の開発などです。

―― 起業を目指す方へのメッセージを。

上田 起業に欠かせないのは、人脈と信用です。開業当初、数多くの方が手を差し伸べてくれましたが、企業再建をやり遂げた経験が評価されたのではと思っています。また、起業では苦しいことに耐える姿勢が必要です。私の好きな名言は、〝テレビの父〟と呼ばれる高柳健次郎さんの「いかなる苦難にも負けず、苦難を友とし、苦難をわが師とする」です。楽ばかりでは長い目で見て、プラスにはなりません。常に夢を持ちながら、障害を乗り越えていただきたいですね。

 
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