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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

内永ゆか子・J-Win理事長に聞く「女性登用とダイバーシティ」

内永ゆか子氏

日本IBM、ベルリッツコーポレーションなどで活躍したのち、現在はNPO法人理事長として企業の女性幹部育成を支援する内永ゆか子氏。同氏にその活動内容と、企業戦略としての女性登用の重要性について聞いた。(文=本誌編集長・吉田浩 写真=森モーリー鷹博)

内永ゆか子氏プロフィール

内永ゆか子

内永ゆか子(うちなが・ゆかこ)
1971年東京大学理学部物理学科卒業後、日本IBM入社。95年同社で女性初の取締役へ就任後、常務取締役、取締役専務執行役員を歴任。2007年に退職後はベネッセホールディングス取締役副社長、ベルリッツコーポレーション代表取締役会長兼社長兼CEOを経て、13年名誉会長を退任。07年よりNPO法人J-Winの理事長として、企業における女性活躍推進を支援。

 

女性登用に関する内永氏の問題意識と活動内容

 

なぜ女性のネットワークづくりが重要なのか

 「女性登用は人権問題ではなく企業戦略の問題です」

 こう語るのは、NPO法人J―Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)理事長を務める内永ゆか子氏。同氏は日本IBMで専務執行役、ベルリッツコーポレーションで会長兼CEO、名誉会長などを歴任。自身の経験を生かして、企業の女性幹部育成を支援している。

 J―Winの活動の柱は2つ。さまざまな企業で働く女性のネットワーク作りと、企業内D&I(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン)推進の支援だ。

 ネットワーク作りに関しては、会員企業から選任した女性社員に対して、定期的に勉強会や研修などを行う。

 現在、係長や課長クラスの若手メンバーが約280人。ここを2年間で卒業したメンバーを集めて、さらに上の役職を対象としたネクストステージネットワークを形成。その上には、役員クラスを対象としたエグゼクティブネットワークがある。この3層がお互いに交流しつつ研さんに励む。

 こうした活動のベースとなったのは、内永氏が日本IBM時代に作った女性の社外ネットワークだ。ダイバーシティ推進を掲げる米IBM本社の方針に沿って、当初は50人程度のネットワークからスタートした。2年後、内永氏の定年退職を機にNPO法人として独立し、ネットワーク作りを行う一方、企業の人事担当者などにダイバーシティの進め方について支援を行うなど、活動の幅を広げていった。

 社外ネットワークを作る意義を内永氏はこう説明する。

 「今、日本政府の方針もあって、企業は女性の管理職や役員登用を増やそうとしています。女性役員を1人入れるのはさほど難しくないと思いますが、課題は次から次にそういう人材を作ること。誰かが役員になった時、その後ろにも候補者が5〜6人いるという状態をどう作るか。J―Winの取り組みはこのパイプラインを作ることなんです」

手厚過ぎる制度は逆効果も

 内永氏によれば、女性登用に関して日本企業の多くは、海外企業と比べてもむしろ十分過ぎるほど制度面は整っているという。では、なぜ実際に女性のキャリアアップになかなかつながってこないのか。

 「結局は、結婚や出産などのライフイベントが問題なのではなく、それをやりながら働ける環境が問題なんです」

 例えば、安倍内閣が打ち出した育休期間を3年にするという話。一方で女性の活用を謳いながら、3年間も職場から離れることは、本人にとっても企業にとってもマイナスになる。制度を手厚くし過ぎると、逆に女性の活躍を阻んでしまう可能性もあるということだ。

 「仮に制度があったとしても、優秀な女性には育児休暇から早く戻って来てほしい。仕組みを利用してキャリアアップしようとしても難しいのは別の問題があるから。例えば、託児所が少ないため、早く職場復帰できなかったり、働く時間が長過ぎたりすること。働く環境の自由度をもっと高めて、育児しながらでも仕事ができる環境を作る必要があります。時間と場所に縛られない働き方を導入することで、生産性を上げていくのです。そうすれば女性にとってだけでなく、外国人にとっても働きやすい環境になるでしょう」

 企業の人事部もこの点は理解しており、改善も進んでいるという。ただ、個人の裁量で働ける範囲を広げるためには、人事評価システム、個人の仕事の責任の明確化など、既存の仕組みを大きく変えていく必要がある。これが多くの企業にとっての課題だと、内永氏は説明する。

 

女性登用を推進する内永氏とJ-Winの活動

 

ロールモデルやメンターを持つ重要性

 内永氏がもう1つ指摘するのは、同じ女性のロールモデルやメンターを作ることの重要性だ。J―Winに集まる女性管理職の中にも、キャリアアップへの意識が低い人はいる。それでも、2年間の活動の後は、ほとんどの参加者が意欲を高めているという。社外に多くのロールモデルを得られることが、女性の意識改革につながっている。

 内永氏自身、日本IBM時代は海外のIBMで働く女性たちの姿を心の支えにしてきたと語る。また、メンターと慕う上司からは、企業内のパワーゲームや男性社会の論理を把握した上で行動することの大切さを学んだという。キャリアを上げることがどれだけ人生にプラスになるのかを教えてくれる存在としても、メンターの存在は大きい。

ダイバーシティは女性登用のリトマス試験紙

 今後のJ―Winの活動について内永氏はこう語る。

 「ダイバーシティはイノベーションの原動力。その最初のリトマス試験紙が女性活用なんです。日本企業がモノカルチャーから脱し、グローバル化するお手伝いをこれからもしていきたいと思います」

 
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