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女性活用が進まない本当の理由

女性活用が進まない本当の理由

 政府は、「2020年までに指導的地位を占める女性の割合を30%にまで引き上げる」目標を掲げた。しかしながら、女性活用は既に何十年も前から叫ばれている課題だ。今もって問題が解決しないのはなぜか。デリケートな問題だけに、本音が語られないということで覆面を条件に現役で活躍する人事担当者に、表で語れない「現実」について話してもらった。

女性活用が進まない本当の理由いまだ日本は、女性活用が進まない男性社会のまま。

-- さっそくですが、今、女性管理職の割合はどれくらいですか。

Y氏 課長職で2割くらいです。トップの意向もあって随分昇格させましたね。

H氏 うちは全管理職の13%ですね。

K氏 うちは10〜15%だね。

-- 一時期に比べ女性管理職が増えた感はありますが、それでもまだ少ない理由は。

H氏 一般的な「ビジョンを語って、戦略を組み立てて、管理する仕組みを作って、成果を出す」というやり方は、女性マネジャーがあまり得意ではないと私は思っているんですよ。逆に、細かいところまで目を行き届かせるとか、みんなの想いを吸い上げるなど、仕組みよりもみんなの動機づけがうまいですね。それを利用して成果を出すタイプが女性に多いです。ただ、昇格時にリーダーシップやロジカルシンキングなどが問われるわけです。そこに当てはめると、あまり評価につながらないんですね。だから、やり方を問わずに成果だけを見るようにすれば、もっと女性が上に行けるようになると思っているんですが。

Y氏 ウチも登用しても結果的にプレッシャーに潰されるケースが多発していますね。その原因を考えた時に思ったのは、性の差による得意、不得意を理解しないまま、男性側の仕組みで会社が動いていることです。そこに強引に充てるので女性はプレッシャーの中で潰れていく。結局、残るのは、男勝りの女性だけっていうことになっているんじゃないかなと思いますがね。

K氏 大賛成ですね! 結局、男性なみにバリバリ仕事をする女性しか残れなくなっていて、ところが、そういう女性を今の若い層は否定的に見るんですよ。

K氏とY氏(同時に) 「あーはなりたくない」(笑)。

K氏 僕らが面談していて、女性管理職がワッと泣き出すのは、男性と差別された時ではなく、部下に「あんな女性になりたくない」とか、子どもがいなくてキャリアをアップさせてきた人が、「子育てもせずに……」みたいな、触れられたくない場所に手を突っ込まれたときですよ。要は、女性の中に上を目指さない生き方も根強いということです。

-- ほかにも、女性社員特有の「難しさ」ってありますか。

H氏 「差を付けてほしくない」とよく言われます。

K氏 「みんなの前で私のことほめないでください」って言いますからね。

Y氏 「全員平等」にこだわりが強いですよね。昇進を妬む的な出っ張ることが問題ではなく、自分と違うことが嫌なんですよ。女性中心の事務部門に行く男性社員に聞いても、ほぼ全員この事実に気付いていない。男性マネジャーの問題でもあるんですよね。

K氏 日本には管理職がいないんですよ。朝はみんなちゃんと来るし、仕事をやれと言わなくてもやる。

Y氏 女性も含めたダイバーシティの問題は、本当は男性のマネジメント層が変わらなければ解決しないんですよね。

-- 逆に、女性特有の良い面はどんなところですか。

K氏 ここは女性の強みだと思っているんですが、人の性格や特性の違いによって対応を使い分けるのが抜群にうまい管理職がいますね。また、女性管理職が母親の場合、子育てから部下の育成をイメージして、うまく人を育てているなと思わせるケースも少なくないですね。

Y氏 さっきの「平等」のウラ返しですね。女性特有がうまく使われるとこうなるんですね。

「人を切れない」が女性の活用を阻害

-- 国が言う女性管理職3割は難しいですか。

H氏 現実問題として、産休復職率を頑張って上げたら、今97%にまでなったんです。良いことではあるんですが、約2年間産休する人の代わりを手当てするのが大変なんですよね。

K氏 ホント大変だよね。カツカツでやっているところに、産休入りますって言われれば「おめでとう」なんだけど、代わりの人を見つけなければならない。産休の先生ではないから、復帰したら、「さようなら」というわけにはいかないですからね。

H氏 社員を純増していいのであればいいんですがね。

Y氏 そうなんですよ。今は業績がいいので、それをもって増員にしているんですが、業績が悪くなったらどうしようかと心配していますよ。結局、仕組みが追い付いていないんです。

K氏 どこの会社も日本の場合は、人事よりも経営者のほうが雇用責任を感じているわけ。案外人事はなんとかなると思っていたりするんだけどね(笑)。

 この国の法律では人を簡単に辞めさせることはできないから。そうすると、経営者はどうするかというと人を採りたがらなくなる。将来性のある女性の、「子どもできました」は、「おめでとう」と同時に、「これは2年来ないな、復帰しても3年くらいは時短だな」と。だから、トップの意向に反して人を増やさざるを得ない。でも、この国の経済を考えれば、いつ下がるか分からないわけだから。そこを考えずに、それ30%だ、なんだというのは、この国の首相は何を考えているんだと思うよね。

-- じゃあ、経営者は「男性を採用せよ」って言わないもんですか。

K氏 そこまで考えてないよ。サラリーマン経営者であれば任期が5年、長くても10年。オーナー企業は違うかもしれないけれど、どんな優れた経営者であっても重要なのは明日の利益なんだよ。株主はすごいプレッシャーかけてくるし、結果を出さないといけないわけ。

 経営者なら、女性活用に限らず、障碍者活用も重要なことだという認識はあるし、絶対に「社会の一員として行動しろ」みたいなことを言うけど、会社の利益とどっちを優先するんですか、という話になれば、「そんなこと聞くなよ!」っていう話ですよ。そりゃ、社長というポジションに就けば、オーナーじゃない限り、女性活用やダイバーシティの優先順位は下がらざるを得ないんじゃないかな。

Y氏 うちは、そこまで考えていないというのが問題ですね。要は女性活用のイメージが良いから飛びつくだけで、人員構成や計画まで考えていないというのが実情でしょうか。まぁ、細かくても困るんですけどね。

K氏 結局は米国と違って日本は人をリリースすることができない。それもまた、女性の積極的な活用が進まない原因の1つだと思いますよ。

-- 女性活用の今後は。

H氏 今、40代のDINKS、40代バツイチ、50代未婚と第1世代と呼ばれる女性の部長職がいるんですが、最近、その下の30代中盤くらいに、結婚、出産、産休明けの第2世代の女性マネジャーがチラホラ増えてきているんです。随分、社内の雰囲気が変わってきました。マネジャークラスは、女を捨てなくてもなれるけど、部長職はまだ……。という感じになってきています。でも、これは時間が解決するんじゃないかと思っていますね。

Y氏 一緒ですね。うちも第2世代が育ち始めています。だから、悲観はしていないんですよね。変わっていくんだろうなっていう感覚は現場で持っています。選択の余地はないという感じです。人も採れなくなり、働く人も少なくなってくるのは見えていますから。

K氏 時代が解決する一方で、そんなこと関係なく、われわれ人事は優秀な人がいればどんなことをしても欲しいんですよ。

Y氏 そう、本当に優秀ならば男女の差なんか問題なく、時短だろうがなんだろうが雇用しますよ。実際に、時短で働く女性マネジャーがいましたが、全く問題なかったですからね。

H氏 究極は個別論なのだと思いますが、ただ、せっかく特性も考え方のタイプも違う男と女がこの世にいるわけですから、ビジネスの現場にも家族のように1つのグループに男女2人のマネジャーがいる新たな形を模索したいですね。

(構成=本誌・古賀寛明)

 
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