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旧社意識を捨てて、 イノベーターたる取引所へ--斉藤惇(日本取引所グループ・グループCEO)

斉藤惇氏

 東京・大阪両証券取引所の統合で発足した日本取引所グループ(JPX)。東京証券取引所グループ社長からJPXのグループCEOに就任した斉藤惇氏は、国際競争力強化に向け、各種の施策を講じる。同時に社員のグローバル意識を高め、組織風土の変革を進める構えだ。

斉藤惇(日本取引所グループ・グループCEO)

斉藤惇(日本取引所グループ・グループCEO)

斉藤惇氏の思い 将来は現物株・派生商品のシステム一本化も

―― JPXが発足してから半年以上が経過しました。

斉藤 発足から現在まで、あっという間でした。アベノミクスによるフォローウインドを受けて、順調なスタートが切れたと思います。7月16日には、東証と大証の現物株市場を無事に統合することができました。関係者の皆さんに、まずは新体制を受け入れていただくことができたというのが第一印象ですね。

―― デリバティブ市場拡大などさまざまな課題があります。

斉藤 来年3月に予定している東証と大証のデリバティブ市場の統合は、最も大きなテーマの1つです。その後、有価証券以外に、コモディティ(市況商品)分野にも進出していくことになると思います。どういった商品を取り扱うかは決まっていませんが、国際競争を見据えて、まずは環境整備に注力します。デリバティブ市場の国際的な規模や領域の広さを考えると、JPXという会社の中で、デリバティブの占める比重が今まで以上に大きなものになるはずです。

―― 昨年におけるデリバティブ取引高の世界ランキングで、JPXは17位でした。

斉藤 日本の経済力からすると、17位という結果で満足していてはいけないと思っています。ただ、取引高などの数字だけを追求するのでなく、経済活性化への寄与など、JPXとしての役割を果たすことが重要です。

 正直に言ってJPXは、取引高1位である米国のシカゴ・マーカンタイル取引所と大きな差があります。ですから、ドン・キホーテのように非現実的な夢を一足飛びに実現させようとするのではなく、徐々に足場を固めていきたいと考えています。

―― 統合に当たり、取引システムの管理も重要な課題です。

斉藤 統合以降、現物株市場の売買システムは順調に稼働しています。ただ、機械というのはパーフェクトではありませんからね。仮にシステム障害が起きたとしても、できるだけ早くリカバリーできる体制を整備するのがわれわれの責務です。安全でも取引スピードが遅くては意味がないため、同時に革新的な技術も取り入れていきます。

 売買システムは、東証の現物市場では富士通と共同開発したarrowheadを、大証ではNASDAQ OMX社製のJ―GATEを活用しています。当面は現状のスタイルを続行しますが、10年もたてばシステムを一本化するかもしれません。やはり、現物取引とデリバティブ取引を行う上で、システムを統合したほうがお客さまの利便性は格段に向上しますから。

斉藤惇氏は語る 海外証券取引所の買収については「否定的」

―― 統合により現物株市場などで独占的シェアを占め、経営規律が損なわれるリスクがあります。

斉藤 世界的に見て、1カ国に1つの取引所というケースは珍しくありません。その上、私どもは現物取引では国内で90%程度のシェアを持っていますが、世界全体で見ればそれほど高いシェアではありません。われわれは日本国内だけで仕事をしているわけではないですから。多くの日本企業同様、われわれも厳しい国際競争にさらされているわけです。

―― 国際競争力を高めるため、海外の証券取引所の買収を促す意見があります。

斉藤 証券取引所同士のクロスボーダーのM&Aはなかなか難しいのではないかと思っています。私は野村証券時代に数多くのM&A案件に携わってきましたが、法体系や社会制度、文化、慣習の異なる国家間で取引所を統合するのは、大変難しいとみています。過去には、ニューヨーク証券取引所と、欧州の証券取引所のユーロネクストが統合した例がありますが、目ぼしい統合はそれくらいでしょう。

 経営統合にこだわらず、世界各国、特にアジアの取引所とアライアンスを結び、友好的な関係を構築することについては、積極的に行っていきたいですね。東証の前身である東京株式取引所が設立してから、135年がたちました。長い歴史に基づいた公平性や透明性に立脚した取引ルールは、新興国にはない魅力だと言えます。そういう面で、新興国に助言できる部分があるでしょうし、その結果として日本のプレゼンスが向上すれば素晴らしいと思います。

―― 透明性と言えば、上場企業のコーポレートガバナンス(企業統治)をどう見ますか。

斉藤 日本企業には、社外取締役を積極的に活用し、第三者の意見を取り入れ、自己満足することなく経営を行っていただきたいです。米国企業では、取締役会の大半を社外取締役が占めています。社外取締役には会社経営経験者が多く、その企業に関するレクチャーを十分受けた上で、朝から晩まで徹底的に議論したり、さまざまな助言を行ったりしています。こうした取り組みを行えば、日本企業の価値は一層上がるでしょう。

―― 貴社の10年後のビジョンは。

斉藤 変革を恐れないイノベーターたる取引所を目指したいと考えています。これは、野村証券や産業再生機構、東証などで経営に携わった私の経験に基づく信念のようなものです。「沈香も焚かず屁もひらず」ということわざのように、無難なことしか行わないなら、組織は黄昏を迎えざるを得ないでしょう。

 統合前の旧社意識を捨て、社員が自分自身を高め、組織全体のバリューをアップさせることだと思います。そのためにも、社員全員がリスクを取って挑戦できる環境をつくるのが私の仕事だと言えますね。島国根性で縮こまらずに、ワールドワイドな視点を持った社員を育てたいです。

 
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