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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

拡大するアジアの需要を 取り込んで成長を実現する--伊東信一郎(ANAホールディングス社長)

伊東信一郎氏

 787問題が一段落し、今年12月には新たなLCC会社が稼働開始するなど、明るい話題が増えてきたANAホールディングス。アジアの成長を取り込むための戦略投資も積極的に行う考えだ。その先には、グローバルエアラインとして一層強烈な存在感を放つ姿を描いている。

伊東信一郎(ANAホールディングス社長)

伊東信一郎(ANAホールディングス社長)

LCCでは安さプラスアルファを

―― まず、直近の業績について分析を。

伊東 今年度の第1四半期は、バッテリー不具合の件でボーイング787が5月いっぱいまで飛ばせなかったという特殊事情があり最終赤字でした。本来は需要に応じて異なる種類の航空機を飛ばしますが、GW以外は閑散期である4月、5月の時期にジャンボ機を多く稼働させる必要が出るなど、コスト的に厳しいものがありました。そこに燃料高にさらに円安を掛ける構図でした。6月以降は787が稼働を再開し、8月は需要が好調に推移しているので、挽回できると思います。

―― 787要因を除いた事業環境は。

伊東 ビジネス需要は非常に旺盛です。アジア路線の需要は相変わらず大きいですし、欧米路線も順調です。日本から海外への旅行需要に関しても、為替が円安に振れた影響はほとんどありません。一方で、アジアからの訪日需要は毎月過去最高を記録しています。中国が20%ぐらい減っていますが、それを補う形でタイ、マレーシア、インドネシアなどからの利用が伸びています。

―― LCCの新会社「バニラ・エア」が12月に就航します。

伊東 マレーシアのエアアジアと共同出資したエアアジア・ジャパンが失敗した理由は、東南アジアの成功モデルをそのまま日本に持ってきたところにあったと思います。当初はスピード感を持って会社を立ち上げたいという意向もあり、中身をあまり変えられませんでした。インターネットの予約画面が見にくかったり、旅行代理店の活用がうまくできなかったりといった部分があって難しかったと思います。われわれはピーチ・アビエーションにも出資していますが、彼らは成功している。成功モデルと失敗モデルの両方を経験したので、次は心機一転、日本人にマッチしたLCCを展開したいと考えています。主なターゲットは国際線のレジャー需要です。全便を国際線にはできませんが、成田の強みはやはり国際線なので、それを生かして展開できれば良いですね。

―― やはり料金が安いだけでは駄目ということでしょうか。

伊東 安さプラスお客さまに訴えるものをしっかり持たないといけません。ピーチはその点で成功していて、乗ることがひとつのトレンドして関西地区では定着してきています。魅力的な運賃に加え、大阪弁でのアナウンスを機内で行ったり、ソウル日帰り運賃のような斬新な仕掛けを行ったりしています。LCCで成功している会社はライアン航空とエアアジアが典型的ですが、どちらかと言えばピーチはライアンモデルのほうに近い。われわれは両社のいいとこ取りができればと考えています。

パイロット訓練、整備部門にも積極投資

―― パイロット訓練会社を傘下に持つパンナムホールディングスの買収を発表しましたが、それも含めて今後のM&Aについての考え方を。

伊東 昨年公募増資を行って1700億円強を調達しました。今後の成長に向けた戦略的投資資金を得るのが目的で、特に成長するアジアマーケットにおいてM&Aも含めたあらゆる可能性を探っていきます。

 パンナムのパイロット訓練会社は、全米で最も規模が大きい。飛行機の発注残数を見ると、アジアのパイロット需要は今後20年間で莫大に増え、18万人を超えるといわれています。ほとんどの航空会社は自社でパイロットを養成する能力は持っていないため、訓練を外部に委託しているのが実情です。これからアジアの航空需要がどんどん拡大し、航空会社の新規参入が増える中、一番ネックになるのはパイロットの不足です。パンナムは歴史も長いため、彼らのノウハウをうまく用いてアジアに展開していこうと考えています。

―― それ以外に投資の対象となりそうな領域は。

伊東 基本的には整備部門など、航空事業周辺の分野に投資していくと思います。アジアの航空需要拡大を見越して、沖縄県が進める那覇空港での航空関連整備クラスター構想に参画すべく、整備請負会社の設立について検討を進めています。

 ASEAN10カ国はこれからオープンスカイになっていきます。いずれはEUのように、航空自由化によって域内はあたかも国内線のように航空機を飛ばせるようにすることを標榜しています。われわれはまずミャンマーのアジアン・ウィングス・エアウェイズ(AWA)に出資をして、AWAの成長とともにANAとのシナジーを狙います。今後もそうしたシナジーを発揮できる出資先を探してまいります。

―― アジアにおけるANAブランドの浸透度をどう見ていますか。

伊東 例えばスカイトラックスのエアライン・スター・ランキングで5スターを取得するなど、かなり浸透してきているとは思います。定時発着とか機内の清掃が行き届いているといったさまざまな点が評価されたわけですが、そうしたことを少しずつ重ねてステップアップしてきました。外国人利用者の比率は増えていて、成田経由で太平洋を越える3国間輸送も増加しています。11年からユナイテッド航空と太平洋路線のジョイント・ベンチャーをスタートさせたこともあり、米国から成田経由でアジアに向かう利用者も増えています。こうした太平洋をまたぐ需要をどんどん開拓していきたいと考えています。

―― 10年後の御社の姿をどうイメージしますか。

伊東 今ここで述べてきたことを粛々と行い、将来的には国際線の比率が国内線を上回るくらいになっていないといけないと思います。そのための人材育成などにも、しっかり取り組んでいくつもりです。

 
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