媒体資料
経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ネットワークの進化に取り組み 物流の付加価値を高める--木川眞(ヤマトホールディングス社長)

木川眞氏

 創業100周年を見据え、アジアナンバーワンの流通・生活支援ソリューションプロバイダーを目指すヤマトホールディングス。単に物を運ぶという機能にとどまらない、価値を高める物流「バリュー・ネットワーキング」構想とはどのようなものか。木川眞社長に聞いた。

木川眞(ヤマトホールディングス社長)

木川眞(ヤマトホールディングス社長)

〝小口・多頻度・スピード輸送〟に対応

―― 10年後の御社の姿についてお聞きしたいと思います。

木川 当社は2019年の創業100周年に向け、11年に長期計画を作りました。「事業構造」「業務基盤」「社員の意識」の3つの改革を柱に、われわれのステークホルダーであるお客さま、社会、社員、株主の満足度の総和をダントツにする「満足創造経営」の実現を目指すものです。総合物流企業としてデリバリー事業の海外展開、国内における宅急便の進化、地域・生活密着サービスのそれぞれの領域で、アジアナンバーワンのサービスを提供する。そして、ネットワークの革新により物流を「価値を生み出す手段」に進化させる「物流改革」を通じて日本経済の成長戦略を支えるインフラになる。この全体構想が、7月に打ち出した「バリュー・ネットワーキング」構想です。

―― 構想の中身と狙いは。

木川 まずは、ボーダーレス化、グローバル化への対応です。日本のお客さまのために運ぶだけでなく、その国における新しい物流体制を整えるということです。宅急便のアジア展開は台湾からスタートし、約3年半前からアジアに広げていく取り組みを本格化させています。

 次に国内の物流を飛躍的に効率化し、お客さまの新しいニーズに応えられるようにする。Eコマースがこれだけ発達してくると、物がスピーディーに届くということが不可欠になり、これまでのサービスレベルをさらに超える当日配達ニーズが出てきました。企業の物流においては、分散在庫でリスク管理する要望が増えてきました。一方で、在庫を分散するほどコストアップするというジレンマがあります。そこで、在庫供給をスピードアップし、総在庫量を抑制することで、コストアップを防ぎます。

 今は〝小口・多頻度・スピード輸送〟が、絶対的なニーズになりつつあるため、それに合うネットワーク構造に変えていきます。翌日配達は、集めた荷物を夜まで保管しておき、配達先別に仕分けして全国のハブターミナルに向けて一斉に深夜トラックを走らせ、さらに営業所別に仕分けして翌朝から配達することで成り立っています。しかしこの仕組みは、当日配達を広域で展開する時には機能しません。当日配達は、集まった荷物をどんどん送らないといけませんが、その都度各物流拠点で仕分けをし、トラックを走らせていてはコストが合わない。そこで例えば関東圏の荷物は各物流拠点で仕分けをせず、新たに造った厚木ゲートウェイにどんどん集め、そこで仕分けを行い、それぞれの物流拠点に送る。こうしてコスト構造を飛躍的に下げながら、当日配達を実現します。

 また、陸海空の好立地を生かし、日本と海外の結節点となる、羽田クロノゲートを稼働させます。さらにアジアへの翌日配達を可能にするための沖縄国際物流ハブを昨年から活用しています。これらネットワークの進化に取り組んできた結果、いよいよ今年度にはすべての拠点が本格稼働に入る予定です。

物流企業の役割はますます拡大

―― 今後、事業に占めるB toB領域の比率は増えていくのでしょうか。

木川 企業物流の小口多頻度輸送のニーズがますます増えるのでそうなると思います。当面はEコマースの伸びが大きいためBtoCの比率が増えるでしょうが、長期にはBtoBが増えるでしょう。

―― 物流に付加価値を加えるという意味とは。

木川 日本の製造業について言えば、製造面でのコストコントロールは非常に優れていますが、こと物流に関してはグローバル基準で見て必ずしも優れているわけではありません。つまり、コスト競争力を生み出す原資が物流の領域に残っているということです。物流のトータルコストを下げるためには、配送部分のみを考えていてもダメです。物を運ぶという単機能だけで勝負していた時は、オペレーションさえ間違えなければ問題ありませんでしたが、これからはお客さまが手掛けている付加価値機能の一部をわれわれにアウトソーシングするケースが増えていきます。例えば、機器の修理や医療器械の洗浄など、これまでお客さまが担ってきた機能の一部を当社のターミナルの中に埋め込みます。大事なのはそうした機能と物流機能が同居していることです。通常、物流は企業の担当者からコストセンターとみられていますが、それをプロフィットセンターに変えていくという改革です。

―― その他、将来的に拡大したいサービスは。

木川 企業物流の効率化とともに、より地域に密着したサービスが物流に期待されるようになるでしょう。そこで考えているのが地方自治体との連携です。例えば高齢者のケアなどを行政が手掛けるのは財政的に今後ますます厳しくなっていくことが予想される上、高齢化で若者が減ればサービスの担い手も減ってきます。われわれは全国に約4千カ所の宅急便の集配拠点を持ち、それぞれの地域で働いているセールスドライバーがいる。そのネットワークを利用して、高齢者の安否確認を行ったり、過疎地における買い物代行を行うなど、さまざまなことができると思います。

 今後は地方自治体と連携して、地域住民向けサービスのプラットフォームをつくる「プロジェクトG」(「G」はgovernmentの頭文字)を進めていく予定です。これからは物流企業の役割が、そうした領域まで広がる時代に入っていくと思います。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る