銀行からの融資は受けられるときに受けておくのが鉄則です。多くの経営者は、赤字で資金繰りが厳しいときに融資を受けようとします。ですが、資金繰りを上手に回すには、業績が良いときこそ融資の受けどきなのです。
銀行融資を嫌うとどうなるか
日本人には、なぜか「借入=悪」という意識があります。
ですが、企業経営においては、この意識が経営を圧迫する元凶となりかねません。
ここで、実際に相談を受けたケースを紹介しましょう。相談を持ちかけてきた会社の年商と借入金は次のような状態でした。
・年商1億8千万円
・借入金500万円
ご覧のとおり、年商に比して借入金が少なく、一見、健全経営の会社であるかのように思えます。ところが現実には、税金1500万円/社会保険料2千万円を滞納していたのです。
上場企業は運転資金を銀行で調達し、税金や社会保険料の滞納は発生させていないはずです。しかし、この会社の社長に話を聞くと、「親の代から、銀行からの借入は極力するな、と厳命されているので、それを守っている」とのこと。
しかし、それで税金や社会保険を滞納しているなら、全く意味はありません。
このように、銀行から融資を受けずに頑張ることで、逆に厳しい状態に陥ってしまうケースはよくあります。
この会社は、設立から10年間、ずっと黒字を保ってきました。ですから、銀行から融資を受けるチャンスはいくらでもあったわけです。
この会社のように、銀行からの融資を避けてきたことで苦境に立たされる企業の決算書を見ると、黒字である場合が少なくありません。つまり、融資の機会を生かそうとせず、業績悪化で慌てて融資を受けようともがいているわけです。
しかし、赤字の会社や税金・社会保険料の滞納額が大きい会社が、銀行から融資を受けるのは至難です。
やはり大切なのは、企業の成長に合わせて、銀行から相応の融資を受けること。そのうえで、資金繰りを上手に回していけば、業績悪化で苦境に追い込まれるリスクを最小化することができるのです。
資金繰りの優先順位
会社の資金が不足した場合、銀行サイドが融資の姿勢を示したにもかかわらず、融資を拒み、経営者やその家族の個人資産を会社につぎ込むケースをよく見ます。
とりわけ、業歴が長い企業の場合、儲かっていた時代に経営者は多くの給与をとり、個人の蓄えを増やしていったことでしょう。ですから、資金繰りに窮したときに、個人資産を注入したくなる気持ちも理解できます。
しかし、このような場合、個人の資産を会社につぎ込むより先に銀行から融資を受けて資金繰りを回すべきです。
銀行が融資を渋り始めると、毎月の返済負担が重荷になってきます。ですから、返済の減額や猶予期間のリスケジューリングを行い、資金繰りを回していく必要があります。
このような状態になったとき、会社に現金預金が残っていないのであれば、経営者個人から会社にお金を貸し付け、会社の資金繰りを回すようにすればいいのです。
経営者の中には、ノンバンクのカードローンでお金を借りて、それを会社につぎ込む方がおられますが、それはあくまでも最後の手段。経営者個人の資産をすべて会社につぎ込んだ後の話です。
以上の観点をまとめると、次のような順番で資金繰りを考えることが重要となります。
1.銀行から融資を受けて資金繰りを回す。
↓
(銀行から融資を受けることができなくなったら)
2.銀行の融資をリスケジュールして資金繰りを回す
↓
(会社の現金預金がほとんどなくなったら)
3.経営者の個人資産を会社へ貸し付ける
↓
(会社へつぎ込む個人資産もほとんどなくなったら)
4.経営者が個人で借入を行って会社へ貸し付ける。
銀行融資のタイミングを間違えるとどうなるか
もちろん4番までの施策を講じても、資金繰りが回らない場合もあります。そんなときには、税金・社会保険の滞納、買掛金・経費の滞納、支払手形のジャンプ、給与の遅配といった選択肢を選ぶしかありませんが、これらはあくまでも最終手段。万策が尽きた段階で講じるべき施策なのです。
企業の円滑な資金繰りにおいて、銀行融資の果たす役割は大変大きいと言えるでしょう。しかし、融資のタイミングを間違えると、企業の資金繰りに多大な影響が出ます。
その意味でも、企業経営において銀行融資を毛嫌いしてはなりません。銀行融資について多くを学び、経営に生かしていくことが大事です。
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